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6-16

「────ククッ」


 真白ノ刃匣(マシロノハゴウ)の切っ先がディアスの体に突き立てられるその瞬間。

甲冑の戦士は確かにディアスの笑う声を聞いた。


 赤々と輝くディアスの瞳。

そして展開され、渦を描くいくつもの刀剣。

ディアスの肩から腰にかけて突き出した剣が真白ノ刃匣(マシロノハゴウ)に取り付いた。

その純白の刃を切っ先から飲み込み、収納する。


 甲冑の戦士は真白ノ刃匣(マシロノハゴウ)を引き抜こうと。

だがその純白の大剣はズブズブと刀剣の渦の中に沈んでいく。


「返してもらうぞ」


 ディアスが言った。

同時に『刀剣蟲ラーミナ』を手に取り、甲冑の戦士に向かって振り下ろす。


 甲冑の戦士は真っ黒な柄を手放した。

いでディアスの攻撃を最小限の動きで回避。

四方から飛翔してくる『刀剣蟲ラーミナ』を捉えると距離を取る。


 礼服の男は甲冑の戦士を見て。


「おやおや、愚直なお方だ。そちらの目的である剣を手に入れたのなら、そのままお帰りいただいても構わなかったのに」


 そう言うとキャサリンを一瞥いちべつ


「スペルアーツ『魔象解除アンクリア』」


 いで自身にかけられたキャサリンのデバフを解除した。


「…………」


短い沈黙のあと、再び甲冑の戦士に視線を向けて。


「ですが、こちらはこちらの目的を優先させていただきますよ……?」


 男は甲冑の戦士に言うと、サモンアーツによって召喚した魔物達を操り、一斉にディアスに向かわせる。


「…………」


 キャサリンは礼服の男を見ていたが、すぐさま視線をディアスに向けて。


「スペルアーツ『筋力強化ストレングス』、『速度強化アクセラレイト』」


 キャサリンはディアスにバフを付加する。


 ディアスは向かってくる魔物を見据えて。

そして視界の隅で甲冑の戦士が腰の剣を抜くのを捉えていた。


 ディアスは腰と背中に差していた短剣とディフェンダーをアーシュに投げて。


「アーシュ、そっちの剣はお前に預けた」


 さらに『刀剣蟲ラーミナ』が数本、アーシュの周りを旋回する。


「そいつらも使え。俺は俺の『千剣魔宮インフェルノ・スパーダ』で戦う」


 ディアスは瞳の輝きを強めて。

同時に自食の刃がその身体を蝕むのを感じるが、構わず無数の刀剣を生み出した。

大小様々な剣が連なり、マントのようにたなびく。


 アーシュはディアスの剣を受け取ると構えた。

いで意識で『刀剣蟲ラーミナ』の剣身から柄をなぞり、自信の意思で操作する。


「スペルアーツ『武装研磨パリッシュ』」


 キャサリンはアーシュの持つ剣と周囲のラーミナにスペルアーツを付与した。

その刃に黄色い光がまとう。


「ディアス兄ちゃん、でもこれ…………」


 アーシュは不安げな眼差しをディアスに向けた。


────その時、周囲を照らす目映まばゆい閃光。

キールは地面に突き立てた剣から結晶のドームへと魔力を伝達し、ドームを操作した。

半球状だった結晶のおりに等間隔に亀裂が走り、花弁のように開く。


 キールはその中へと視線を向けて。

そこにはクレトを抱き抱えるエミリアの姿。

クレトの背中の傷が塞がっているのが、裂けた服の隙間から見えた。

それなのにキールの用意した魔結晶アニマかたわらに転がっている。


「なんだそれは」


 キールは額に青筋を浮かべて。


「なぜその小僧が生きている。魔結晶アニマも使っていない。そして小娘、その姿はなんだ」


 キールはエミリアの琥珀色の瞳と、身体に走る亀裂、そして端から徐々にその身体が崩れていくのを見た。

いで砕けた魔結晶アニマの欠片を見る。


「小娘が。それで助けられたとでも? ならばそのまま朽ち果てるがいい。そこの小僧も村の人間も皆殺しだ。結果は何も変わらん」


 エミリアは強くクレトを抱いた。


 アムドゥスはエミリアの胸から覗く瞳で周囲を観察して。


「嬢ちゃん────」


 エミリアに声をかける。


 その間にも魔物の群れがディアスに迫っていた。


 ディアスは魔物の群れを睨むときびすを返した。

そのまま魔物の群れを引き付けながらキールに向かって駆け出す。


 その背後から、ミノタウロスが処刑用の大斧を振りかぶりながらディアスにおどりかかった。

血で錆び付いた無骨で直線的な分厚い刃がディアスの背中目掛けて振り下ろされる。


 ディアスは横に跳ぶと、その刃を回避した。

振り下ろされた刃が地面を穿うがち、土くれが舞い上がる。


 ミノタウロスは猛々(たけだけ)しいいななきとともに、横長い瞳でディアスを睨んだ。

体をよじり、振り下ろした斧を横にぐ。


 ディアスはそれを上に跳んで回避。

ディアスのすぐ下を、風を巻き起こしながら無骨な刃が通り過ぎる。


 その時、ディアスが着地するよりも先に。

巨大なスライムが体の一部を触手状に変え、ディアス目掛けて伸ばした。

銀色の触手がディアスの足に絡み付くと、毒液を表面ににじませて肌を焼く。


 ディアスは連ねた刀剣を操り、絡み付く触手を切り裂いて。

だが本体との繋がりを絶った触手はディアスの足に絡み付いたまま。

むしろより強くその足に組み付き、肌を焼いていった。

肉の焼ける音とともに異臭と青い煙が上がる。


 ディアスは着地と同時に駆け出そうとするが、スライムの触手に絡み付かれた足が痺れて思うように動かない。

そしてその背後からはトロールとゴーレム。

頭上からはドラゴンが口から黒煙を上げながら迫ってきた。


 トロールは大きな金棒を下からすくい上げるように振るい。

ゴーレムは両手を組んで振り下ろして。

ドラゴンは鋭い鈎爪かぎづめをディアスに向けて急降下する。

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