表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

191/397

6-15

 キャサリンはドラゴンの吐く紅蓮の炎とゴーレムの拳を睨んで。


「『防御魔象バリア』!」


 キャサリンは、すかさず燃え盛る炎を一時的に防いだ。

魔力で編み上げられた半球状の盾が炎を遮る。


 だが魔力の盾に走る亀裂。


 そしてキャサリンへと振り下ろされる、巨大な拳。


 キャサリンは杖を宙に放り投げた。

空いた両手でゴーレムの殴打を受け止める。


 激しい衝撃にキャサリンの足元が陥没し、長い三つ編みがひるがえって。


「『筋力強化ストレングス』────」


 キャサリンは受け止めると同時に自身にバフを付加。

だがその顔が苦悶くもんに歪んだ。

ゴーレムの圧倒的な力に、その全身がきしむ。


「『魔象強化オーバーラップ』!」


 キャサリンは付加したバフを強化。

その全身の筋肉に熱と力がみなぎり、ゴーレムの攻撃をかろうじて抑えた。


 いでキャサリンは全身の筋肉の緊張を保ったまま、目線だけを動かして。

その視線の先には炎を阻む魔力の盾。

その盾は砕け散り、キャサリンに向かって炎が押し寄せる。


「うぉぉおおおおっ……!」


 キャサリンは僅かにゴーレムの拳を押し返して。

いで即座に身を引いた。

地面を蹴り、横に転がる。


 その隣に打ち付けられる大きな拳。

地面が大きく穿うがたれて。


 そしてそこに紅蓮の炎が迫る。


 キャサリンはゴーレムの腕を盾にしてドラゴンの炎からその身を守った。


「やーね。野太い声出ちゃったん」


 キャサリンは下肢かしに力を込めると、跳び退いて。


「『治癒活性キュアー』」


 魔物から距離を取りつつ、回復のスペルアーツを自身にかける。


 キャサリンはそのまま駆けながらディアスの方へと視線を向けた。


「俺の剣、返してもらおうか」


 ディアスは、真白ノ刃匣(マシロノハゴウ)たずさえて向かってくる甲冑の戦士を赤く光る瞳で睨んで。

燃え上がる瞳。

その背後から無数の剣が逆巻さかまいた。

その剣は歪に形を変えると宙に舞う。


 甲冑の戦士目掛けてはしるいくつもの剣。

刀剣蟲(ラーミナ)』は縦横無尽に軌道を変えて戦士を取り囲んだ。


 その刃が正面から。

左から。

右から。

背後から。

そして頭上から。

突いて、いで、振り下ろして、斬り上げて────


 甲冑の戦士は兜の隙間から視線を素早く切って。

挙動が加速。

そしてその姿が、消えた。

いで白い剣閃けんせんの残像と共にその姿を再び現す。


 地を踏み締める音と共に。

甲冑の戦士は純白の大剣を振り抜いた姿で。


 そして幾重にも重なった甲高い音と共に『刀剣蟲ラーミナ』が四方へと吹き飛んだ。


「ソードアーツ────」


 弾いた剣の先から。

甲冑の戦士へとおどりかかるディアスの姿。

その手には歪な姿をした剣。

その剣の持つ魔力を斬撃へと変換して。


「『数多ある斬擊の1(ラスト・ミ)つでしかなくとも(ディオーカー)』」


 放たれたソードアーツ。


「────スペルアーツ『速度強化アクセラレイト』!」


 そこにキャサリンのバフを受けて。


「『その刃、(ソード・)熾烈なる旋風の如く(ヴォルテクス)』!」


 さらにディアスは剣の操作による加速を上乗せする。


 甲冑の戦士は迫る刃を凝視した。

意識を集中させ、研ぎ澄まして。

ディアスの揺れる髪の1本1本を数えられるほどの。

コマ送りのようなその視界の中にあってなお、その斬撃は速度がある。

そして、威力がある。


 さらにディアスの背後からは再び無数の剣が生み出されつつあって。


 甲冑の戦士は、真白ノ刃匣(マシロノハゴウ)でディアスのソードアーツをいなそうと。

それには精密な挙動を求められた。

完璧にいなして次の動きへと繋げられなければ、刹那せつなの間に1つ、2つと数を増やすディアスの刀剣をさばき切れない。


 だが甲冑の戦士の身体はキャサリンのスペルアーツによる減速のデバフが健在であり、アーシュの剣の操作も生きていて妨害を受けていた。

なのに、それでもなお────


 ディアスは放ったソードアーツをいなされて。

すかさず無数の刀剣を連ね、甲冑の戦士へと放った。

さらに朽ちていく剣を捨て、次の『刀剣蟲ラーミナ』をその手に呼び寄せる。


 甲冑の戦士は続けざまに剣を振るった。

無数の火花。

その閃光と共に残像が浮かぶ。


「『数多ある斬擊の1(ラスト・ミ)つでしかなくとも(ディオーカー)』……!」


 おびただしい量の刃を操りながら、再び放たれるソードアーツ。

ディアスは剣の操作による加速を上乗せして。


 だが甲冑の戦士は再び放たれたその斬撃もいなした。

ディアスが最初のソードアーツを放ってから一呼吸の間の攻防。

そして甲冑の戦士がその大剣を振り抜く。


 その刃がディアスを捉えて。

肉を断たれ、自食の刃を砕かれたディアス。

その身体が後ろに吹き飛ばされる。


 甲冑の戦士は息をつくと、真白ノ刃匣(マシロノハゴウ)の切っ先をディアスに向けて構えた。

ピタリ、とその身体が静止して。

いでその姿が消えたかと思うとディアスに肉薄。

ディアス目掛けてその刃を突き出す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ