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2-1

「────ソードアーツ」


 剣の魔力を解き放つ。


 深い森の中。

うっそうとしげった木々が立ち並び、つたや苔が太い幹や根を覆っていて。

薄暗い森の中はひんやりとした空気に包まれていた。


 その薄闇を照らす炎の光。

炎をまとった刃が魔物目掛けて振り下ろされる。


「『炎よ、斬り裂け(ライト・スラッシュ)』!」


 炎が扇状に尾を引く斬擊。

その刃が魔物を捉えると、明々(あかあか)と燃え盛る炎が剣を振るったところから魔物の全身に拡がった。


「やった!」


 勝利を確信して声をあげる。


 だが炎が晴れると、魔物はギロリと視線を返した。

鋭い眼光を見せるイノシシに似た獣型の魔物。

地面を蹴り、獣型の魔物は突進する。


 魔物の体躯たいくは1メートルにも満たないが、その突進を受けて軽々と吹き飛ばされた。


「いってぇ……」


 少年は痛みにうめきながら上体を起こした。


 少年は色白の肌と肩まである黒髪、細身な体つきから遠目には少女のようにも見えた。

だがその勝ち気な瞳と眉が年相応の少年らしさを残していて。

だが痛みで彼の紫色の瞳が涙でにじむ。


 そして少年の視線の先には迫り来る魔物の姿。

その背には大きな傷を負い、全身の至るところが焼けただれていた。

だがひるんでいる様子は微塵みじんもない。


 少年は慌てて立ち上がろうとするが、右足に痛みを覚えた。

魔物に吹き飛ばされた時に捻ったのか、足首がズキズキと痛みを訴えている。


 少年は右足をかばいながらも立ち上がると、両手で剣を握りしめた。

だが痛む足では踏ん張りがきかない。

そして華奢きゃしゃな少年の力で振るった剣では、魔物に致命傷を与える事もそもそも難しかった。


 魔物は雄叫びをあげると少年目掛けて再び突進。


 少年は剣を振りかぶると、肉薄する魔物目掛けて渾身の力を込めて刃を振るった。

だが魔物の勢いは殺しきれず、そのままくうに投げ出される少年の体。

少年は背中から地面に叩きつけられる。


 衝撃に一瞬息が止まって。

いで少年は痛みに悶えながら咳き込んだ。


 少年は痛みをこらえながら体を起こすと、彼目掛けて疾駆しっくする魔物を捉えた。

すかさず握っていた剣を魔物目掛けて投げ放つ。


「『その刃、風とならん(ソード・ウィンド)』……!」


 放たれた剣が加速。

その鋭い切っ先が魔物の眉間みけん目掛けて飛んでいく。


 だが魔物は横に跳んでかわした。

その反動をバネにして 少年目掛けて跳躍ちょうやくする。


 迫り来る魔物を前に少年は思わず目を固くつむって。


「────『その刃、疾風とならん(ソード・ガスト)』」


 その刹那せつな、鋭い風切りの音。

少年の背後から飛来した剣が魔物の胴を穿うがった。

続けざまにさらに剣が空を切って。

肩を。

足を。

そして魔物の頭を瞬く間に貫く。


 少年が目を開けると、その目の前には串刺しにされた魔物の姿があった。


「君、大丈夫?!」


 背後から少女の声がして。


 少年が振り返った先には二人の人影。

1人は白い頭巾を目深まぶかに被った少女で、もう1人は白いフードをこれまた目深まぶかに被った白いマントの青年。


 少年は白いマントの青年の姿に釘付けになっていた。


 少年が見つめる中、白いマントの青年は魔物に突き刺さった剣を抜き取ると、鞘に納めた。

10本の剣をたずさえたその姿に少年は目を輝かせる。


「無事か」


「君、ぼろぼろだね」


 青年と少女の2人が少年に声をかけた。


「助けてくれてありがとうございます」


 少年は頭を下げる。


「見たところ駆け出しのようだが、1人か? 仲間は?」


 青年がたずねた。


「おれ1人です。おれ、一人前の冒険者に早くなりたくって集落の周辺で魔物狩りをしてたんだけど、つい深追いしすぎちゃって……。あまり大きくない個体だからおれでも倒せると思ったけどダメでした」


「そうか、1人ならいい。集落までの道を教えてくれ。そこまで一緒に行こう」


 少年の言葉に青年が返すと、それを聞いた少女は首をかしげて。


「ディアス、もっと怒んなくていいの? あたし達が通りかからなかった死んでたかもしれないんだよ。ちゃんと注意しないと」


「エミリアの言いたい事も分かるが、俺も子供の頃は無茶をしたしな。今回の経験を活かして次からは気をつければいい」


 ディアスの言葉に納得してないのかエミリアはうーんと小さくうなる。

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