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6-3

「ケケケ、何か困る事でもあんのかぁ? キャサリン」


 アムドゥスが言った。


「キャサリンさん?」


 頬に手を添えて考え込むキャサリンを見て、アーシュが声をかける。


「…………そりゃそうよ。それを前提とした作戦があり、それのためにできない作戦があるもの。その辺の情報の共有はしてもらいたかったわね」


「ケケ、んで俺様が2人についていくでいいんだなぁ? ブラザー」


「ああ。強制転移は発動する距離まで離れないとならないからな。何かあったときにすぐに対処できない」


 ディアスはアムドゥスに答えると、エミリアに視線を向けて。


「魔力の補給は十分だな」


「うん。ほぼ全快だよ」


 エミリアがうなずく。


「俺様に乗って飛んでこうとしたのをキャサリンが止めたからなぁ。俺様としては面倒が省けたが」


 アムドゥスが言った。


「この間の戦いでアムドゥスが十分戦力になるのは分かったからね。罠に飛び込むんだもの。備えは十全にすべきよ」


 キャサリンが言うと、エミリアはそっと支柱に縛られた村人達に視線を向けて。


「…………」


 いで視線を切ると、アーシュに振り向く。


「行こう、アーくん」


「うん、エミリア」


 姿勢を低くしながら小川おがわへと向かうエミリアとアーシュ。


 アムドゥスはその2人のあとをついていく。


「キールを見つけてもすぐには動くなよ」


 ディアスはそう言うと空を見上げた。

そこに昇る太陽を見て。


「日が暮れたら俺達も向かう。おそらくキールがいるはずだから、可能なら場所の特定を。ただし、無理はするなよ。見つけたら待機。必ず制圧できる状況にしてから事を運びたい」


「彼らはエミリーをおびき寄せるための罠。生かしとくつもりは、おそらくないわ。目的を達したと分かれば、残りの人達を皆殺しにすることだって考えられる。慎重にね」


 キャサリンが言った。


「もし交戦になったら俺達もすぐに駆けつけるが、他の冒険者達に阻まれるかもしれない。気を付けてな」


「うん。ディアス兄ちゃん達も気を付けて」


「分かった。何かあればアムドゥスに伝言を頼むね」


 アーシュとエミリーが答えた。

いで先へと向かう。


 エミリア達は草原のうねに沿って屈みながら進んだ。

遠目に見張りの視線が自分達のいる方に向けられると、じっと動きを止めてやりすごす。


 そろりそろりて歩を進めて。

はやる気持を抑え、慎重に先へと進むエミリアとアーシュ。

その後ろを追従するアムドゥス。


 そして2人と1羽は小川おがわにたどり着いた。


 エミリアはゆっくり、水面へと足をおろして。


「アムドゥス」


 いで小声で呼ぶと、アムドゥスを腕に抱える。


 エミリアに続いてアーシュも小川おがわの中に入った。


 エミリアとアーシュは遠くに見張りが見える度に動きを止める。


 何度も進んで、止まってを繰り返して。


 村に近付くと、村の周囲に立てられた支柱の1つと、そこに縛られた村人の姿が目についた。


 その姿を見上げるエミリアとアーシュ、アムドゥス。


 その時。

支柱に縛られ、うつむいていた村人がもだえた。


「────」


 驚いて叫びそうになるアーシュ。


エミリアは素早く手を伸ばし、アーシュの口許くちもとを覆う。


「アーくん。しー…………!」


 エミリアが、ひそひそ声ながらも語気を強めて言った。

アーシュが小刻みに素早くうなずくと手を放す。


「ごめん、エミリア」


 アーシュは謝罪すると再び支柱を見上げて。


「ねぇこの人、まだ生きてるの?」


 エミリアは抱えているアムドゥスに視線をおろす。


「アムドゥス、視てもらえる?」


「ケケケ。いいぜぇ、嬢ちゃん」


 アムドゥスは額にある第3の眼に意識を集中させた。

その虹彩こうさいに7色の光が走って。


「『創始者の匣庭(ディザイン・ヴェルト)』による観測を完了。ケケケ。ああ、こいつ生きてるぜぇ」


 いで他の支柱にも目を向ける。


「……2人ほど死んじまってるが、残りの奴等もまだ生きてるな」


「生きてるなら助けないと……!」


 声を殺しながらも語尾が強まるアーシュ。


「待ちな、クソガキ」


 アムドゥスがアーシュを制止した。


「これも罠だ。こいつらの身体にスペルアーツが仕込まれてる。ヘタに手ぇ出したら罠が作動するぜぇ?」


「そんな。でも」


「その罠が作動したらこいつは今度こそ死ぬ。俺様達も危険な上に、敵まで集まってくる。そういう代物しろもんだ」


 エミリアは支柱に縛られた村人の顔を見上げて。


「────のパパ。ごめんなさい。今は助けられないの」


「……う……ぅう、あ」


 村人はエミリアとアーシュを見ると、小さくうめき声を漏らした。


「ぁああ! ああ! ああああっ!!」


 いで絞り出すように声をあげる。


 その声を捉えて。

周囲を巡回していたフードの人間が慌てて駆け寄ってきた。

通り過ぎた見張りもきびすを返し、向かってくる。


「まずい」


 エミリアは周囲に視線を走らせた。

隠れられる場所を探す。


「アーくん、アムドゥス、どこかに」


 アーシュとアムドゥスも急いで周囲を見回すが、隠れられそうな場所はない。


「────こっちだ」


 その時、声が聞こえた。


 声の方へと振り返ると、小さな少年が木の根の間から顔を覗かせていて。

小さな少年は急げと身振りで示す。


 エミリアとアーシュは顔を見合わせると、無言で駆け出した。

少年のもとにたどり着くと、木の根の間に穴が空いているのを見つける。


「いそいで」


 少年にうながされるまま、穴へと入るエミリアとアーシュ。


 少年は内側から土くれで穴を塞いだ。


 そして叫び声をあげる村人のもとに集まる見張り達。


 エミリア達と少年は息を殺して彼らが去るのを待つ。

 いつも閲覧ありがとうございます。


 更新大変遅くなりまして申し訳ないです。

0時には間に合わなくとも、なんとか夜のうちにと思って書き進めていたのですが途中寝落ちしてしまうという痛恨のミス…………。


 今日分の更新はまた夜になると思いますが上げます。

毎日更新の謳い文句で読んでくださってる方には本当に申し訳ありません。

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