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5-28

「────『千剣魔宮インフェルノ・スパーダ』!」


 ディアスは連ねた刀剣の中から1つの柄を掴んで。

それを橫薙よこなぎに振るった。

ディアスの振るう剣に他の刀剣が幾重にも連なり、長大な斬撃となる。


 魔人の男はディアスの方を横目見て。


「かまって欲しいんだね。でも待って」


 骸骨の魔物が次々とディアスの振るう剣にとりつき、その剣を止めた。


「まずは……父さんを、助けるのが先……だよ」


 魔人の男が言うと、ディアスは止められた剣の側面から無数の刃を展開。

とりついた魔物の身体を貫き、吹き飛ばして。


「それを止めるために剣を振ってるのが分からないか」


「止めて……どうするの? 父さんを、見殺し……にするの?」


「いいや、お前を倒してアーシュを助ける」


「倒し、て? それは無理……だよ」


 魔人の男は周囲に漂う黒いもやに視線を向けた。


「倒せない、よ」


 ディアスの吹き飛ばした魔物がもやの中に吸い込まれた。

いで再び姿を現すと、受けた傷が消えていて。

魔物は宙を滑るように移動し、ディアスを取り囲む。


「助けられも、しない。助けたいなら……任せてよ」


「できない」


 ディアスの瞳に宿る赤い光が強く輝き、ディアスを中心に剣が現れた。

無数の刀剣が床を這うように伸び、その側面からはさらに剣。

それは切っ先を下にして、柄の方からゆっくりと突き出す。


「きかん坊……だね」


「…………」


 ディアスは答えない。

静かに剣の数を増やしていく。


 その剣は瞬く間に数を増やし、ディアスの周囲を覆った。

おびただしい量の刀剣の山。


 そしてその刃が波打つと形を変えて。

切っ先に向かって剣身けんしんが大きく肥大化し、側面にはあばらのような装飾が現れた。

剣に無数の切れ込みが走り、柄の先端には小さな赤い装飾が8つ覗く。


「アムドゥス」


 ディアスは剣の用意を終えるとアムドゥスに呼び掛けた。


「ケケ、調整は終わったみてぇだなぁ」


 アムドゥスは額にある瞳に7色の幾何学きかがく模様を走らせて。

その眼でディアスの周囲を埋め尽くす刀剣を確認する。


「ああ」


 ディアスは短く答えて。


「剣の数は足りるか」


「むしろだいぶ多いぜぇ? 確認してから用意しろよ、ケケケケケ」


 ディアスの問いにアムドゥスが答える。


「そうか」


 ディアスは周囲を漂う魔物に視線を走らせた。

その剣がふわりと宙へ浮かび上がり、旋回を始める。


「斬り裂け────」


 ディアスは剣へと命じた。


「ソード・テンペスト…………!」


 ディアスの声と共に剣はその速度を上げて加速。

視界を覆い尽くす刀剣の群れが渦を描きながら次々と魔物へと襲いかかる。


 魔物はその身体を斬られるが、その傷口は陽炎かげろうのように揺らめくばかりで致命打にはならない。


 だが幾度となくその身体を斬り裂き続ける剣。


「無駄……なんだよ? どうして、分からない、かな」


 骸骨の魔物は実体化するとその赤い鎌でディアスの生み出した剣を弾いた。


 叩き落とされた剣の1つは床へとぶつかろうと。

だが剣が床を蹴った(・・・・・・・)

刃の側面に並ぶ6本の銀色の脚で床を蹴って方向を変え、薄い翼を広げて飛び上がる。


「剣の、魔物……?」


 エミリアは周囲を飛び交う無数の剣に目を向けた。


「ケケケ、魔宮の展開をしないブラザーはボスを召喚できない。自己強化なんかの恩恵もない。だが魔物の召喚は魔宮の展開がなくても可能だ」


 アムドゥスが言った。


「ギミック扱いの刀剣はブラザーに触れてなければ存在を維持できねぇ。だが魔物は違う。その身体に触れなければならないなんて制約はねぇ」


「でもそれって剣じゃなくても良かったんじゃない」


「ケケ、そこよ。魔物を召喚するんならもっとできる事もあったろうに。なのにブラザーは過去の戦闘スタイルにこだわるんだよなぁ」


 ディアスは宙を舞う剣の魔物の1つを手に取った。

その剣を魔人の男目掛けて投げ放って。


「『その刃、疾(ソード・)風とならん(ガスト)』!」


 光を纏って加速する剣の魔物。

その攻撃は骸骨の魔物に阻まれるが、剣はすぐさままた飛び上がった。

縦横無尽にかけながら魔物の身体を斬り裂き、散らしていく。


「魔物なのに遠隔斬擊(ストーム系)の剣技も使えるんだ」


 エミリアが言った。


「ケケケ、あれは剣の魔物『刀剣蟲(ラーミナ)』。剣を模した魔物じゃねぇ。剣にして魔物、魔物にして剣。両方の性質を持ったもんだ」


 魔人の男の操る魔物へと襲いかかる『刀剣蟲(ラーミナ)』。

その刃は寸分(たが)わず魔物の同じ箇所を斬り裂く。


 さらに剣の何本かは柄の先に並ぶ8つの目で周囲をぎょろぎょろと見回した。

いで視線を下へと向けると、その切っ先を床へと突き立てる。


 その刃の先には、床の中に潜んでいた魔物がいた。

『補完』の維持と急な攻撃などを防がせるために魔人の男が仕込んでいた骸骨の魔物。

その身体をディアスの魔物である『刀剣蟲(ラーミナ)』が貫く。

 いつも閲覧ありがとうございます。


 今日は更新が遅くなり申し訳ありません。

ついに昨年末から毎日刻んでいた更新日が1日飛んでしまいました。

くやしい。


この更新は昨日の25時台の更新という扱いで、今日の分は今日の夜また更新します!

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