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5-17

「スペルアーツ『武装研磨パリッシュ』」


 キャサリンはすかさずエミリアの青のハルバードにバフを付加した。


 エミリアはリザードマンへと明滅する光をまとったハルバードを振り下ろす。


 リザードマンは横に跳び退いた。

くうを切るエミリアの斧槍ふそう

エミリアの攻撃をすれすれでかわして。

リザードマンはその手にたずさえた無骨な槍を構える。


 エミリアは振り下ろした刃が床を打つより早く。

強引にその軌道を変えた。

体を大きくよじりながらハルバードを横にぐ。


 リザードマンへと再度迫る刃。


 リザードマンは鋭い瞳でそれを捉えて。

強靭きょうじんな尾を床に叩きつけ、その反動で上へ跳んだ。

エミリアの追撃をさらにかわして。


 だがその頭上から振り下ろされる重厚な刃。

とどろ咆哮ほうこう


 シャルの振り下ろした戦斧せんぷがリザードマンの背を捉えた。

その体を鎧ごと砕きながら床に叩き付ける。


  同時にエミリアは横にいだハルバードの勢いを殺すことなく旋回。

そのまま床に叩きつけられたリザードマンの首を斬り飛ばす。


 宙に舞う生首。

その見開かれた眼が映すのは、自身の身の丈の半分もない小さな少女の瞳。

そこに灯る冷たい赤の輝き。


「……次」


 エミリアは倒したリザードマンには目もくれず、鋭い視線を次の獲物へと向けた。

振り抜いたハルバードの勢いを強引に止めると跳躍。

姿勢を低くしたリザードマンの顔面目掛けて。

空中で斧槍ふそうをすくい上げるように振るう。


 その一撃はリザードマンの顎を砕き、額を割って。

リザードマンの身体が大きくった。

エミリアは腕に力を込めるとその巨体を吹き飛ばす。


 ハルバードを振り抜いたエミリア。

そして左右から彼女へと迫るリザードマンが2体。

獰猛どうもうな鳴き声と共に剣と槍、それぞれの得物を振りかぶる。


 だがエミリアはまだ空中にいた。

エミリアは左右のリザードマンに視線を切るが、空中では自由がかない。


「『その刃、(ソード・)嵐とならん(ストーム)』……!」


 アーシュは剣を操るとエミリアへと襲いかかるリザードマン目掛けて剣を放った。

剣が渦を描きながらリザードマンへと向かう。


 リザードマンはその刃を捉えると、一瞬の間に容易く弾いた。

すかさずエミリア目掛けて得物を振るう。


「『防御魔象バリア』!」


 アーシュの攻撃によって稼いだその一瞬の間にキャサリンはスペルアーツを発動。

魔力で編み上げられた半球状の光の盾がリザードマンの攻撃を防いだ。


「ナイス、アーくん。ありがとうキャシー」


 同時にエミリアの片足が床を捉えた。

爪先で床を掴み、重心を下へと引き下げて。

深く腰を落とし、上体を大きくひねりながらハルバードを振るう。


 後ろに跳んでエミリアの攻撃を回避するリザードマン。


 だが2体のリザードマンが着地するより早く。

床を這うように伸びた2本の剣身けんしん

その側面から刃がそそり立った。

鋭い切っ先がリザードマンの身体を串刺しにする。


 ディアスは2体のリザードマン目掛けて跳んだ。

展開していた刃からディアスの身体が離れると、刃が霧散する。


 ディアスは絶命にまでは至らなかったリザードマンにディフェンダーを振るって。


「『その刃、熾(ソード・)烈なる旋風の如く(ヴォルテクス)』」


 凄まじい加速を得た剣閃けんせん

その一撃はリザードマンのまとう鎧を砕いた。

ディアスは爪先を軸に体を回して。

さらにリザードマンの身体を包む硬質な鱗を。

そして3度目の斬擊でその肉と骨を断つ。


「ディアス兄ちゃん! エミリア!」


 アーシュが叫んだ。

その目は再びリザードマンが放った矢を捉えていて。

アーシュは剣を操作して飛来した矢を斬り払うが、処理が間に合わない。


「スペルアーツ『速度強化アクセラレイト』」


 キャサリンがディアスにバフを付加。


 ディアスはディフェンダーを構えて迫り来る矢を防いだ。

それと同時に、展開した剣を操作してアーシュやキャサリンの方へと向かう矢を斬り伏せる。


「シャル!」


 エミリアの呼び掛けに応えて。

シャルはひづめで床を蹴るとエミリアの前へ。

その巨体を盾にしてエミリアを矢から守った。

身体に矢が何本も突き刺さるがシャルはものともしない。

雄叫びと共に筋肉が隆起りゅうきすると、その矢を身体から弾き出す。


「ごめーん、ディアスちゃん。バフお待たせっ」


 キャサリンが言った。


「スペルアーツ『筋力強化ストレングス』、「武装研磨パリッシュ」」


 さらにディアスにバフを付与する。


 ディアスは自身のステータスの上昇を感じていた。

だがアムドゥスは額の瞳でその姿を捉えると。


慢心まんしんすんなよブラザー。バフをもらっても剣を10本装備してた時のがステータスは上だかんな」


「分かってる」


「ケケ、ならいいが。なんせデカイのが来たからなぁ」


 アムドゥスが薄闇の先を見て言った。


その先からは甲高い声と共に大きな足音が響いてくる。


「ドラゴンモドキか」


 リザードマンの群れの先へと目を凝らすディアス。


「うそーん。さっきは遭遇しなかったのに」


 キャサリンが言った。


「うるさいから気付かれたのかな」


 アーシュがそれとなく呟くとエミリアは首をかしげて。


「え。うるさいって、それあたしのシャルの事言ってるアーくん?!」


「ええ、違うよ!?」


「確かにシャルは割と叫ぶからうるさいのは認めるけど。えー、あたしのせいなのー」


「だから違うよ!」


 アーシュが慌てて否定する。


 そして大きな足音と鳴き声の主が明かりの前へと姿を現した。

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