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5-15

「はーい、いっちょあがり」


 キャサリンが言った。


「どうよ、私のスペルアーツは。アーシュガルドちゃんもお手伝いありがとぉ!」


 キャサリンはアーシュガルドを抱き寄せると頬擦りする。


「…………あら! アーシュガルドちゃんどうしたの? ほっぺた赤くしちゃって。んもう、キャサリンたら罪作りなオンナねぇ。こんな男の子にも私の魅力が通じちゃうなんて。んふふ」


 キャサリンは自身の頬を撫でた。

ヤスリのような青髭がジョリジョリと音を立てる。


 アーシュはひりひりと痛む頬を手を添えると顔をしかめた。

不満げな目でキャサリンを見上げる。


「なーに? アーシュガルドちゃん。頬擦りもっとしてほしかった?」


 キャサリンの問いにぶんぶんと首を左右に振るアーシュ。


「でも良かったのか?」


 ディアスがキャサリンにいた。


「何がかしら」


 キャサリンは首をかしげながら『防壁魔象ブルワーク』を解除。

リザードマンの残骸がせきを切って流れ出し、通路に広がった。

それが色を失ってちりとなり、ついには消えていく様を横目見る。


「かなり魔力を消耗したはずだ」


「ああ、それね」


 ディアスが言うとキャサリンは肩をすくめて。


「確かに大きく魔力を消耗してしまったし、5層での戦闘ならエミリーに頼んだ方がパーティー全体の消耗も少なかったかもしれないわ」


 キャサリンはエミリアへと視線を向けたが、すぐにディアスへと戻す。


「でも6層からは魔物の強さが上がって私のスペルアーツは今ほど役に立たない。6層から先を考えるなら私よりもディアスちゃんやエミリーの魔力を温存した方がいいと思ったのよ」


「魔力の残りは」


「残り4割ってとこかしら。1割を切ると魔力欠乏で体調に支障をきたすから実質残り3割ね」


「キャシー、無理しないでね」


 エミリアが言った。


「大丈夫よ。私、無理はしない主義なの。エミリーこそ無茶しちゃ嫌よん」


「アーシュは大丈夫か」


 ディアスがいた。


「うん。……おれ、ほとんど役に立てなかったけど」


「気にするな。たださっき『その刃、(ソード・)風とならん(ウィンド)』使ったろ? 魔物を倒したい気持ちは分かるが、まだ敵の数が多い状態で得物を手放すな。相手が強かったら拾ってる余裕はないからな」


「うん。気を付ける」


 アーシュがうなずく。


 そしてディアス達はさらに魔宮を突き進んだ。

リザードマンの群れと幾度か戦闘になったが、問題なく突破する。


「……あ、あれ宝箱じゃない?」


 先頭を進むエミリアが声をあげた。

細い脇道の先が小部屋になっており、その真ん中に赤い宝箱が鎮座ちんざしている。


「赤か。悪くないな」


 宝箱を見てディアスが言った。


「赤だといいものが入ってるの?」


 アーシュの問いにディアスはうなずいて。


「一般的に魔宮で生成される宝箱は中身に応じて木箱、緑、青、赤、銀、金と外観が変わる。そしてグレードに比例して仕掛けられているトラップの危険度が増すし、強い魔物が潜んでたりするんだ」


「そうなんだ」


 そう言うとアーシュは、宝箱へと向かわないディアス達を見る。


「罠があるかもしれないから行かないの?」


「ああ。難度の上がった魔宮のトラップはそれだけ危険度も高いからな」


「ごめんなさいねぇ。私は戦闘関連のサポートがメインだから斥候せっこうが覚えるようなスペルアーツは覚えてないのよ」


 キャサリンが申し訳なさそうに言った。


「アムドゥス」


「ケケケ、見える範囲だと罠はねぇなぁ。宝箱も普通の宝箱だ。ミミックかどうかまでは見破れねぇが」


 ディアスの呼び掛けに答えるアムドゥス。


「けけ、アムドゥスでもミミックは見破れないんだね」


 エミリアが言った。


「ああ。俺様の目は見えるものにまでしか効果が及ばねぇからなぁ。中身は開けてみるまでわからねぇ」


「まぁ、開けない手はない」


 ディアスは宝箱へと向かっていく。


 エミリア達が見守る中でディアスは宝箱の前にたどり着くと膝を折った。

剣を鞘に納めると宝箱に手をかけ、ゆっくりと開ける。


 宝箱の隙間から漏れ出す目映まばゆい光。

ディアスはそのまぶしさに目を細めて。


 そして光が収まるとディアスは宝箱の中を見た。

そこには1本の剣が納められている。


「アムドゥス」


「あいよ、ブラザー」


 ディアスの呼び掛けに応え、アムドゥスは額の瞳で宝箱の中の剣を観察。


「ケケ、『創始者の匣庭(ディザイン・ヴェルト)』による観測を完了。ランクBの魔剣だな」


 アムドゥスが言うとディアスはその魔剣を手に取った。

ひょいと剣を持ち上げると、明らかに宝箱に納まらない大きさの剣が現れる。


「え」


 思わずアーシュが呟いたが、エミリアとキャサリンは特段気にしてる風ではなかった。

アーシュは2人の様子を窺うと、あれが普通なんだなと納得する。


「ディフェンダーの類いか」


 ディアスが呟いた。


 ディアスが手に取ったのは幅広の刃の剣。

斬る事よりも防御に重きを置いたその剣は分厚い剣身けんしんを青白い鱗が覆っていてた。

剣の腹を向ければ上半身を覆い隠せるほどに刃が大きい。

そしてその剣の造りをディアスは観察して。


「これ、変形するな」

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