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5-13

 アーシュの操る剣が渦を描き、リザードマンへと襲いかかる。


「スペルアーツ『防壁魔象ブルワーク』────」


 それと同時にキャサリンはスペルアーツのくさびを打ち込んだ。


 だが、アーシュの剣はリザードマンの堅牢けんろうな鱗に弾かれて。


 ディアスは弾かれた剣の死角からリザードマンへと再び肉薄した。

その赤く燃える瞳がリザードマンの体表を覆う鱗の継ぎ目を捉えて。

その継ぎ目に向かって剣の切っ先を突き出す。


 ディアスの剣がリザードマンの胸に深々と突き刺さった。

その切っ先がその背へと貫通する。


 ディアスはそのままリザードマンの懐に入り、肩を当てて。

その体を押し飛ばすのと同時に剣を引き抜いた。

すかさず左へと体をよじりながら。

剣を下から、弧を描いて振り上げる。


 その剣の先には、別のリザードマンが振り下ろす無骨な刃。


「アーシュ!」


 叫びながらディアスはリザードマンの剣を受け止めて。

だがリザードマンの力に押し負け、体勢を崩すディアス。


 一呼吸遅れてアーシュの操る剣が飛来し、交差した。

鉱石から削り出された無骨な剣を受け止める。


「スペルアーツ『防壁魔象ブルワーク』────」


 その間にもキャサリンはくさびを打った場所とは反対側に起点を設置。


 ディアスは体を回しながら剣を加速させて。


「『その刃、熾(ソード・)烈なる旋風の如く(ヴォルテクス)』!」


 爪先を軸に旋回し、リザードマンの胴へと剣を2閃。

剣を渾身の力で振り抜き、リザードマンを後方に押し返す。


 いでディアスは躊躇ためらうことなく背を向けた。


「『魔象点火イグナイト』」


 ディアスが背を向けてすぐ。

魔力で編み上げられた壁が通路を塞いだ。


「アーシュ!」


 ディアスが駆けながら呼び掛けて。

だが、アーシュが間に合わないと判断してその剣を投げ放った。


「『その刃、疾(ソード・)風の如く(ガスト)』!」


 光をまとって加速する剣。

その剣が三叉路さんさろの後ろから迫っていたリザードマンの眼前へと迫る。


リザードマンは盾でディアスの剣を弾いた。

チロチロと舌を出し入れして。

だがその眼前にさらに2本の剣が飛来しているのを、その縦長の鋭い瞳が捉える。


 「『その刃、疾(ソード・)風の如く(ガスト)』……!」


 抜剣ばっけんと同時。

 続けざまに放たれたディアスの剣。

その切っ先がリザードマンの肩と胸に突き刺さった。

その傷は硬質な鱗に阻まれて浅い。


 リザードマンは一瞬動きを止めるがすぐさま襲いかかる。


 クルクルと。

さらにその視界に舞うのは放り投げられた杖。


 いで激しい衝撃。


「『美麗な私の(エレガントォォ)────」


 リザードマンの巨体が宙に浮き上がって。


衝天拳(アッパー)』……!!」


 キャサリンの放った拳がその脳漿のうしょうを揺さぶる。


 宙へと打ち上げられたリザードマン。


 そして床を蹴る音。

瞳が赤い光の尾を引きながら。

エミリアは打ち上げられたリザードマン目掛けて跳んだ。

空中で体をひねりながらハルバードを振りかぶって。

いでハルバードを横薙よこなぎにおもいっきり叩きつける。


 ベキベキと鱗と骨が軋み、リザードマンはその身体をくの字にひしゃげながら壁に叩きつけられた。

その身体はハルバードごと、天井付近の壁に半ば埋まって。

湿った音と共に、鋭い歯牙の並ぶ口から臓物がこぼれ落ちる。


 エミリアは斧槍ふそうを振り抜いた勢いのまま体を回し、いで腕に力を込めるとその得物を引き抜いた。

着地と同時に他のリザードマンへと青のハルバードを振り下ろす。


 その後ろからディアスは駆けて。

床を蹴り、壁を数歩走ると跳んだ。

壁に叩きつけられたリザードマンの肩に刺さった剣を抜くと、ぐるんと剣を回しながら素早く納剣のうけん

すかさず胸に突き刺さるもう一方の剣にぶら下がると体重をかけて引き抜く。


 ディアスは着地と同時に再び駆け出し、リザードマンの群れを次々と蹂躙じゅうりんするエミリアに加勢する。


 瞬く間に次々とリザードマンを倒すディアスとエミリアの姿を見て。

いで先ほど弾かれた剣に視線を向けるアーシュ。

その足が止まった。

その顔は今にも泣きそうになる。


「────」


 キャサリンはアーシュの様子に気付くと声をかけようと。


 だがアーシュはすぐにまた一歩踏み出した。

手の甲で目元をぬぐって。

弾かれたディアスの長剣もその操作に加えるとリザードマンの群れへと剣を次々と飛ばす。


 キャサリンは先ほど放り投げた杖を拾い上げて。


「スペルアーツ『魔象強化オーバーラップ』、『武装研磨パリッシュ』」


 アーシュの操る剣に明滅する光がまとう。


 アーシュは剣の操り方を必死に試した。

重心の位置。

刃を振る支点。

その軌道。

だが思うように斬れない。

キャサリンのバフを受けて斬れ味は向上してるが、それでも致命傷を与えるには至らない。

ついにはその剣身けんしんには刃こぼれが目立ち始める。

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