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4-42

「スペルアーツ『魔象点火イグナイト』!」


 ディアス達のいる広間の上の階。

そこに設置・・していた無数のスペルアーツ『爆発魔象イクスプロード』。

それをフェリシアは遠隔で1度に起動した。

爆発が連なり、床が抜け落ちて。

轟音と共に抜けた階層が落下する。


「防御!」


 レオンハルトは頭上から迫る天井を見て叫んだ。

すかさず衛兵達が『防壁魔象ブルワーク』を発動。

魔力で編み上げられた壁が格子状にいくつも展開して天井を受け止める。


「スペルアーツ『光弾魔象バレット』、『魔象再演リピート』、『魔象再演リピート』!」


 フェリシアは落下した床に飛び降りると光の弾丸を続けざまに放った。

床に穴を空けると白い檻越しにディアス達を見つけて。


「ディアスさん、アムドゥスさん、わたしの役目はここまでです」


 フェリシアの声を聞いて顔を上げるディアス達。


 フェリシアは手を振って。


「では、わたしはこれで。バレたら怒られちゃいますので」


「────バレたら?」


 デュマエラ=イーヴァの声を聞いて、フェリシアの背筋に悪寒が走った。

聞こえなかったふりをして全力でダッシュする。


「…………じゃじゃ馬の仕置きは後だ。『その刃、我が(ソード・)魔力を糧に(オーラ)』」


 両剣の刃に魔力がまとって。

デュマエラ=イーヴァは両剣を構えると舞うように剣を振るった。

天井を瞬く間に幾重にも斬り裂いて大穴を空ける。


「アーくん! ディアスを!」


 エミリアが叫んだ。

いでディアスをアーシュに任せ、自身はハルバードを大きく振りかぶりながら上に跳んだ。

体をよじり、渾身の力で魔宮封じの白い檻へと刃を叩きつける。


 エミリアは着地すると再び跳躍。

斧槍ふそうを再度振るった。

エミリアの連擊を受けて檻が大きくひしゃげる。


 エミリアはさらに得物を振りかぶって。


 だがエミリアが睨むひしゃげた檻の先にデュマエラ=イーヴァの姿。

デュマエラ=イーヴァは両剣の切っ先をエミリアへと向けた。

剣に纏う魔力が刃そのものとなって伸びて。

エミリアへとその切っ先が迫る。


 エミリアはハルバードの刃の腹で攻撃をいなした。

だがデュマエラ=イーヴァは次々と刃の伸縮を利用した突きを放ち続ける。


 アーシュはディアスの背中に突き刺さった魔封じの短剣を抜こうとしていた。

だが片手しか満足に使えない上に剣身けんしんだけとなった刃はとっかかりもなくて。

挙げ句ディアスの血でぬるぬると滑ってしまい、とても抜ける気配がない。


「アーシュ」


 ディアスは四苦八苦しているアーシュに呼び掛けて。


 それと同時にアムドゥスが飛び上がった。

その身体がゆらゆらと揺らめき、檻の隙間を抜けるとデュマエラ=イーヴァの視界を塞ぐ。


 デュマエラ=イーヴァはアムドゥスへと両剣を振るおうとして。


 だがそれより早く下方から別な攻撃が放たれた。

それは旋回する9つの刀剣。


「回れ」


 それは絶え間ない斬擊。


「廻れ」


 それは刃の、嵐。


「舞われ────『その刃、(ソード・)嵐となりて(ストーム)』……!」


 アーシュの声と共に旋回する剣はその速度を速めて。

檻のひしゃげていた箇所を破り、デュマエラ=イーヴァへと躍りかかった。

アムドゥスはすかさず巻き込まれないよう離れる。


 デュマエラ=イーヴァは両剣を自在に振るいながらアーシュの操る『その刃、(ソード・)嵐となりて(ストーム)』の連擊を弾いた。

両剣の刃とぶつかる度にディアスの剣は刃が欠け、剣身に亀裂が入っていく。


「アーシュ、柄を握って振り回すな」


 ディアスが言った。

アーシュの操る剣を見据えながら続ける。


「意識するのは柄じゃない。刃の輪郭を意識でなぞれ。お前が操るのは刃。自分を中心に遠心力で振り回すんじゃなく、自在に宙を舞う刃をイメージしろ」


「…………うん。やって、みる」


 アーシュは剣へと意識のほとんどを向けながらディアスに答えた。

いで旋回する剣の刃へと意識を集中させて。

その輪郭を意識で縁取る。


 途端にアーシュの操る剣は目に見えて受ける損傷が減った。

そして規則正しかった剣の軌道が少しずつ複雑さを増していく。


「アムドゥス!」


 エミリアが叫んだ。

同時に上へと跳ぶ。


 アムドゥスはエミリアに呼ばれるとその姿を変えた。

その身体が大きくなると、エミリアと入れ違いで檻の穴を押し広げなら檻の中へ。

いで大きな足でディアスとアーシュを掴む。

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