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4-39

 レオンハルトは反射した光をその身に浴びた。

凶刃をたずさえたレディを目前に、光を受けたその頭から左半身にかけてが硬直する。


 レディはハサミの刃を大きく開いた。

レオンハルトの胴目掛けてハサミの刃を閉じる。


 迫る凶刃。

身動きのできないレオンハルト。


 その光景をフェリシアと王子、衛兵と兵士が見ていた。

フェリシアはスペルアーツを発動しようと。

だが間に合わない。


 その刹那せつな

自身ではどうする事もできなくなったレオンハルトは、右腕の制御を一時放棄した。

自分の意に従うようコントロールしていた右腕が──抑え込んでいた竜の首が、自由となる。


 右腕がレオンハルトの意思とは無関係に動いた。

その姿を瞬く間に竜のものへと変容させて。

赤く赤熱する鱗に覆われた大顎がレディへと襲いかかる。


 レディは後ろに跳んで回避。

彼女に追いすがる不気味な竜の首。


 白い鱗に覆われたビカビカと発光する竜の眼孔がんこう目掛け、レディはハサミを突き出した。

その切っ先は鱗を突き破り、その下にある発光器官を貫く。


 竜の首は咆哮ほうこうをあげて。

貫かれた目元から青い血が噴き出した。

レディは返り血を浴びながら、より深くハサミを竜へと突き刺す。


 竜はレディに向けて大口を開けた。

ずらりと並ぶ赤黒い牙。

その内部から漏れる光が強くなって。

毒腺からおびただしい量の猛毒が供給されると、牙の切っ先から真っ黒な毒が放たれる。


 レディは得物を手放して咄嗟とっさに避けようとするが、放たれた毒液が彼女の背中と金色の髪を焼いた。

赤紫色の煙を上げながら、その背中はみるみる焼けただれて。

金色の髪は溶けて、その先がはらりと落ちる。


 レディは落ちた自身の髪を掴んだ。

金色の髪が色を失って白髪となり、いでよじれると螺旋状の巨大な針となった。

レディは振り返ると竜のもう一方の眼孔がんこう目掛けて刺突する。


 竜は両目を貫かれてもだえ苦しんだ。

首を左右に振り乱し、ボタボタと毒液を撒き散らす。


 レディはさらに毛髪で形作った槍を操作。

竜の内部から硬質な髪が放射状に伸びた。

内部から貫かれ、竜は低い唸りをたなびかせながら動きを止めて。

不気味にまたたいていた眼が光を失って灰色になる。


 レディは得物である巨大なハサミを手に取ると引き抜いた。

その視線がレオンハルトへと向けられる。


 レオンハルトはその視線を返して。

身体の自由を取り戻したレオンハルトは異形の左手をレディへと繰り出した。

同時にレディもレオンハルトへとハサミを繰り出す。


 レディとレオンハルトは攻防を重ねて。

だがすぐに決着がついた。


 レディはハサミをたずさえた右腕をレオンハルトの左腕によって引きちぎられた。

いでレオンハルトの背から伸びる黒い尾がレディの左腕に絡み付くと腕の骨を粉々に砕く。


 レディはそのままレオンハルトの尾によって吊り上げられた。


「お前の負けだ」


 レオンハルトが言った。

いで右腕に意識を集中させる。


「ええ。そうですわね」


 宙に吊り下げられたままレディが答える。


「最後に言い残す事はあるか?」


 レオンハルトは右腕を持ち上げた。

その先の竜の顎がゆっくりと開く。


「…………」


 レディはレオンハルトを見つめるだけで答えない。


 レオンハルトはレディのとどめを刺そうと。


 だがそこでレディが口を開いて。


「────」


 消え入るような小さな声で名乗った。


「────。それが、わたくしの名ですわ」


 再び、悔しげに名前を言った。

いで頭からレオンハルトの右腕に喰われる。







 ディアスは物陰から様子をうかがっていた。

視線の先には大きな白い魔宮封じの檻。

その中にエミリア、アーシュ、ドクターが横たわっている。


 ディアスは周囲を見回すが、辺りには檻の中の3人以外人影は見当たらない。


「アムドゥス、2人を回収したらそのままこの国を出る」


「あいよ、ブラザー。移動なら俺様に任せな、ケケケ」


 アムドゥスはディアスの肩の上でバサバサと羽を振る。


 ディアスは忍び足で檻の扉の前へと移動した。

鍵を壊すと檻の中へと入る。


 檻の出入り口の一番近くにドクターが倒れ、その先にエミリアとアーシュが並んでいた。

ディアスが2人に向かっていってドクターの脇を横切る。


 するとドクターはうめき声を漏らして。

ゆっくりと体を起こすと周囲に視線を向けた。

パチパチと目をしばたたかせる。

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