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「よう」


 レオンハルトが軽い調子で挨拶した。

その手に携えた大剣の切っ先を向ける。


「軽々しく口をきくなよ、レオンハルト。そしてそれはなんの真似だ」


 レオンハルトを半眼で見下ろしながら言った。

きらびやかな鎧を身にまとい、重武装した兵士を伴って。

レオンハルトとその後ろに続く衛兵、そしてフェリシアへと視線を移す。


「不敬ではないか。この俺に対して剣を向けるなど」


「王子殿下への狼藉ろうぜき、許さぬぞ貴様ら……!」


 兵士の1人ががレオンハルトと、その後ろに並ぶ衛兵達に向かって言った。

槍の柄をまっすぐ床に叩きつける。


 大広間にある吹き抜けに面した階段の上下で睨み合って。

階下からはレオンハルトと衛兵達が武器を構えなら見上げていた。

階上からは王子と兵士達が見下ろしている。


「フェリシアから聞いた。兄貴、今回の騒動はお前が企てたんだろ」


 レオンハルトが言った。


「お兄様、もうやめてください!」


 フェリシアが言った。

ぎゅっとコートの首もとを握り、対峙する王子を悲痛な眼差しで見上げている。


「ハハッ。やめる? なにをやめる必要がある────」


 王子はにやりと笑みを浮かべて。


「お前ら2人が揃っているのだ。探す手間が省けて好都合。2人まとめて逆賊として処断してくれるわ!」


 王子の言葉を受けて兵士も武器を構えた。

盾でその体の半分以上を隠し、槍の切っ先を階下へと向ける。


「俺はお前らが気に入らなかったんだ。能無しの落ちこぼれが魔物の力に頼り、ついには勇者だなんだとはやし立てられる。剣もまともに振るえぬ小娘が魔力の量だけで俺よりも優れていると評価される。実に……実に不愉快だ」


 そう言って王子は腰に差した刺突剣をすらりと抜き放った。

その剣を構えて。


「…………いるんだろ? 俺に手を貸してくれ。俺には君の助けが必要なんだ」


「よろしいですわよ」


 王子に答える声。


 レオンハルトとフェリシア、衛兵は声のした後方へと視線を向けた。


────刹那せつな、銀の閃きが走って。

ザンと小気味良こきみよい音。

両断された衛兵の胴。

金色の髪をひるがえし、レディが現れた。

その顔には微笑を浮かべている。


 周囲の衛兵はすかさずレディへ剣を振るった。


 だがレディはハサミでその攻撃を弾き返して。

いで切っ先を閉じたハサミを衛兵の体に突き立てた。

柄を強く握り、その刃を縦に開く。


 内側からその身体を2つに引き裂かれた衛兵。


「防御を! スペルアーツ『防御魔象(シール)』!」


 フェリシアがレディと衛兵達の間に魔力の盾を生み出した。


 それと同時に大剣を振りかぶり、レオンハルトが跳ぶ。


「スペルアーツ『防壁魔象(ブルワーク)』!」


「スペルアーツ『防壁魔象(ブルワーク)』!」


 衛兵2人がスペルアーツを唱え、フェリシアのスペルアーツの盾に重ねるように魔力の壁を築いた。


「急げ!」


「今のうちに陣形を立て直せぇ!」


 衛兵達の声。


 堅牢な防御。

迫り来るレオンハルト。

それらを前にレディはハサミを掲げた。


 王子はそれを見て手で合図して。


「スペルアーツ────」


「スペルアーツ────」


「スペルアーツ────」


「スペルアーツ────」


 兵士が同時にスペルアーツを唱える。


「『武装研磨パリッシュ』」


「『武装研磨パリッシュ』」


「『武装研磨パリッシュ』」


「『武装研磨パリッシュ』」


 レディはバフによる光をまとったハサミを振りかぶった。

腰を落とし、大きく体をよじる。


「まずい……!」


 レディへと大剣を振り下ろしながら呟くレオンハルト。


 そしてレディは構えたハサミを振り抜いた。

一閃。

その一()ぎで魔力によって編み上げられた防御を容易く斬り裂いて。

衛兵達の半数がその身体を分かたれる。


 いでレディは振り抜いたハサミでレオンハルトの大剣を受け止めた。

その刃をいなして後ろへと下がる。


 追いすがるレオンハルト。

レオンハルトは剣を再びレディに振り下ろした。

レディはそれをまたハサミでいなすが、レオンハルトは異形化させて左腕を突き出して。

その鋭い銀の爪がレディの胸へと深々と突き刺さった。

4本のあしゆびがレディの胸の中の魔結晶アニマを握り込み、その手はレディの背へと貫通する。


 レオンハルトは青く光る瞳でレディの顔を見た。

その顔はわらっていた。

笑みを浮かべている彼女の顔を見てレオンハルトは咄嗟とっさに後ろに下がろうと。


 だがレディは自身の胸を貫いたレオンハルトの左腕を握り、その場に引き留める。


 その時、轟音が響き渡った。

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