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4-30

 ディアスの身体から現れる無数の刀剣。

それは幾重にも連なるとマントのようになった。


 ディアスは刃の衣をひるがえすと駆け出して。

両腕を交差させて左右の剣を振りかぶり、魔物へと飛びかかる。


 魔物はその身体を覆う髪を操って。

束ねられたいくつもの髪が蛇のように鎌首をもたげた。

いでディアス目掛けて襲いかかる。


 ディアスは左右の剣を振るった。

ディアスの剣と魔物の束ねられた髪がぶつかって。

舞い散る火花。

甲高い音が響く。


 その刹那せつな、ディアスは自身の振るう剣に視線を移して。

剣が、重い。

束ねられた髪の1本1本が鋼鉄でできているかのように硬く、剣速が落ちていく。


 ディアスは剣を振るう腕に力を込めながら周囲に視線を向けた。

左から。

上から。

右から。

さらにディアスの背後へと回り込むように伸びるそれを横目見て。


「『その刃、熾烈な(ソード・ヴ)る旋風の如く(ォルテクス)』……!」


 ディアスは剣を操作し、その力を自身の膂力りょりょくに上乗せした。

勢いを取り戻すディアスの剣。


 だがその刃が髪を断ち切るよりも早く。

束ねられた魔物の髪がよじれた。

硬質な毛がディアスの剣を絡め取って。


 そして微動だにしないディアスの剣。


 迫り来る魔物の攻撃。


 ディアスは自身の剣を。

いで迫り来る魔物の攻撃へと視線を向けた。


 ディアスは腕に力を込めると体を引き寄せて。

魔物の髪を蹴ると共に剣を手放す。


 その直後。

ディアスのいた場所を、魔物の操る髪が凄まじい勢いで過ぎ去った。


 その光景を視界の隅に捉えながら。

着地と同時に床を蹴るディアス。


 魔物はディアスを追って目線を下げた。

しわがれた声でうめき声を漏らしながら自身の髪を操作。

束ねられた髪が毛先からほどけると拡散して。

それは放射状に広がり、広間へと張り巡らされる。


 張り巡らされたその髪は、さながら空間にとどめられた鋭い斬擊。


 その髪に触れるとディアスの身体に音もなく赤い線が走った。

いで鮮血が吹き出す。


 ディアスは身にまとう刃の衣を肥大化させた。

いで爪先を軸に旋回。

巨大な刀剣で周囲に張り巡らされた糸を斬り裂く。


 ディアスは魔物に向かって駆け出した。

行く手を阻む、張り巡らされた糸を斬り裂きながら魔物に向かっていく。


 魔物は再び束ねた髪でディアスに襲いかかった。

髪を鞭のようにしならせ、ディアス目掛けて振り下ろす。


 ディアスは横に飛んでかわして。

空を切った髪が肉の床を陥没かんぼつさせる。


 ディアスは周囲のレディへと視線を向けた。

未だ動きを見せないレディ達。

だがその口許くちもとには妖しげな笑みを浮かべている。


「ケケ、奴らが動いたら知らせる。ブラザーはあのボスに集中しな」


「ああ、任せた」


 ディアスがアムドゥスに答えた。

千剣魔宮インフェルノ・スパーダ』の刃を駆使して魔物へと肉薄する。


 ディアスは魔物を見上げて。

束ねられた硬質な髪を身にまとう魔物。

その本体である老婆の身体が剥き出しになっている肩から首筋に狙いを定めた。

腰の剣を抜き放つ。


「『その刃、(ソード)疾風となりて(・ガスト)』!」


 ディアスは抜き放った剣を勢いのままに投擲とうてき

その剣を光が包んで加速した。

魔物の首筋に向けて剣がはしる。


 だがディアスの放った剣は魔物の操る髪にはたき落とされた。


 ディアスはさらに剣を抜くとその魔力を解放して。


「ソードアーツ『穿て、流れ落ちる楔(メテオ・スパイク)』!」


 魔力の解放と共に飛び上がるディアス。

いで刺突と共に降下し、着地と同時に剣を振り上げた。

光の軌跡が尾を引いて。

魔物の身体を支える太い髪の束を斬り裂く。


 支えを傷つけられて体勢を崩す魔物。


 ディアスは跳び上がると束ねられた髪の上を駆け上がる。


 だが魔物はその髪を操って。

束ねていた髪がほどけるとディアスの体が髪に沈み込んだ。

すかさずディアスは全身から刃を展開し、髪を斬り裂いて脱出する。


「なぁ、ブラザー」


 アムドゥスが周囲を警戒しつつディアスに声をかけた。


「さっき言ってた新しい戦い方ってなんだぁ? 今んとこ、いつもと変わらなくねぇかぁ? ケケケ」


 ディアスはうごめく魔物の髪を睨むと、一度距離をとった。

アムドゥスを横目見て。


「アムドゥス、目を閉じろ」


「はぁ?! この状況でか、ケケケケケ!」


 アムドゥスが驚きの声をあげる。


「見られてたら試しにくいだろ」


 ディアスが言った。


「ケケ、またそれかよ」


 アムドゥスは呆れたように首を左右に振って。


「魔宮の方向性を決めるときも形になるまで見られたくねぇって言って、それで結局調整のし直しになったじゃねぇかよ。いいから、やるならさっさとやりな!」


 ディアスはため息を漏らして。

だが展開した剣の1つ手に取るとそれを振りかぶった。

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