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1-8

 空中から刺突しとつとともに降下、振り上げ。

一連の剣閃けんせんが青白い光の尾を引いた。

魔人の少年はディアスの剣をかわすが、魔人の男はその肩を深々と斬り裂かれる。


 苦悶くもんの声を漏らす魔人の男。

魔人の男は身をひるがえし、ディアスから逃れるために駆け出した。


 ディアスは魔人の男に追いすがりながらもう一方の剣を構えて。


「ソードアーツ『刹那の閃き(ライジング)天を衝かんと(・ブレイド)』……!」


 床を蹴り、魔人の男に肉薄しながらその剣を振り上げる。


「させないよ」


 その時、魔人の少年の声が聞こえた。


 魔人の少年は剣を振るうディアスの腕を掴んだ。

攻撃を止められ、ディアスの剣は魔人の男に届かない。

すかさずディアスは握られていない方の腕で剣を投げ放って。


「『その刃(ソード)疾風とならん(・ガスト)』!!」


 放たれた剣が光を放ちながら加速。


 だがそれは異形のスケルトンの手によって弾かれた。

弾かれた剣は光を失い、壁にぶつかると乾いた音を響かせる。


「させないって僕言ったよ」


魔人の少年が言った。


 ディアスは魔人の少年を横目見た。

そして視界の隅にこちらに向かうキールとエミリアの姿を捉えて。

ディアスはあえて少年の方に大きく振り向くと、フードの下の目をさらす。

交わる二人の視線。

と同時に魔人の少年の顔に困惑の色が浮かんだ。


一瞬の硬直。


「ソードアーツ────」


 その隙を狙って、キールが剣の魔力を解放する。


「『地を駆ける陽光(グロウ・ソード)』」


 キールの振り下ろした剣からまばゆい輝きが放たれた。

一瞬の閃光と共に駆け抜けたのは膨大な熱量を蓄えた光の刃。

灼熱の斬撃が走った跡には一拍いっぱくの間を置いて炎があがって。


 そしてそこから飛び出す2つの人影。

その片方からはさらに小さな影が飛び出した。


「あちちちちちっ! あっちあち!」


 叫びながら飛び出したアムドゥスの尾羽はくすぶって煙をあげていた。

そしてその頭は明々と火を灯している。


 あわてふためくアムドゥスの前からは異形のスケルトンの手が迫っていた。

ディアスはそれに気づくと跳躍ちょうやく

アムドゥスを片手で抱き抱えると、眼前に迫っていた巨大な骸骨の手に剣を振るう。

その衝撃で自身の軌道をずらすと、体をひねりながらスケルトンの攻撃を回避した。

炎に包まれたマントがすれ違い様にぎ取られる。


「おい、あいつの目!」


 冒険者達がディアスの赤い目に気付いて声をあげた。

だがディアスは気にもとめない。


 ディアスは着地と同時にアムドゥスを投げ捨てて。


「へい、ブラザー。扱いがぞんざいだぞ」


 不満げに言うアムドゥス。


 ディアスはアムドゥスに答える事なく駆け出した。

目指す先には魔人の男の姿。


「お前も魔人かよ」


 魔人の男はディアスに斬られた肩口の傷を押さえながら言った。

助けを求めるように魔人の少年に視線を向ける。


 その先にはキールのソードアーツによって大きな傷を負った少年が、異形のスケルトンの手の上に立っていた。

隻眼、隻腕となっていた彼の顔の半分は、自身が従えるスケルトンのそれと同じような骸骨に。

闇をたたえるその眼孔がんこうの中には赤い光だけが灯っている。


 異形のスケルトンは腕を伸ばすとディアスの行く手をふさいだ。

さらにディアスの左右から挟み込むように巨大な手が迫る。


 その裏で壁際を走り抜け、エミリアも魔人の男に迫っていた。

スケルトンにやられた冒険者の武器を拾い上げ、魔人の男に飛びかかる。

武器を力一杯振り下ろして。

その一撃は魔人の男に大きな傷を与えた。

だが倒しきれない。


「はは、魔人じゃなければ仕留められてたのにな」


 魔人の男は痛みに顔を歪めながらも、そう言って皮肉った笑みを浮かべた。


 エミリアはさらに武器を振りかぶるが、異形のスケルトンが彼女の追撃を阻んだ。


 異形のスケルトンはすかさず別な手で魔人の男をすくい上げると、魔人の男と魔人の少年の2人を胸の中へとおさめる。

すると胸骨から肋骨にかけてその形が変形して。

鋭い突起がいくつも突き出ると、それが折り重なって魔人2人を完全に包んでしまった。

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