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4-27

「なぜですの」


「替えの利く有象無象うぞうむぞうが」


「誰でもないのと変わらないその他大勢」


「その一部が集まっただけでこの『わたくし』が押される?」


 レディ達は首を左右に振って。


「あり得ない」


「あり得ませんわ」


「あり得ていいはずがないですもの」


 レディ達は口々に呟いた。

その顔が悲痛に歪む。


 いでレディ達は一斉にレオンハルト達に向かって躍りかかった。


 応戦するレオンハルトと衛兵達。

フェリシアがスペルアーツでその補助を行う。


 いくつもの剣戟を交え、お互いに消耗して。


「ほら、また1人死にましたわ」


「貴方達は意味なく死んでいく」


「『わたくし』と同じ」


「代わりの利く存在」


「誰でもないのと、変わらない……!」


 1人の兵士を両断し、レディ達が言った。

さらにまた1人、兵士の命を奪う。


 レオンハルトは剣を振るった。

レディの1人の胸を穿うがち、魔結晶アニマを砕く。


 レオンハルトの前で灰へと変わるレディ。


 レオンハルトは周囲へと視線を走らせながら言う。


「それは違う」


「何が違くて?!」


 レディはレオンハルト目掛けてハサミの切っ先を突き出した。

レオンハルトは大剣でその切っ先をずらして。

大剣の刃と巨大なハサミの刃が擦れて火花を散らす。


「衛兵の代わりはいる。だが彼らは1人1人が個別の人間だ。誰でもないなんて事はない!」


 レオンハルトは大剣の刃をレディの握るハサミの刃に滑らせながら前へと出た。

同時にレディのハサミを下へと押し退けて。

右腕の竜の首がレディへと迫る。


 レディは後ろへと跳んだ。

後ろへと後退したレディを飛び込え、別なレディがハサミを振り下ろしながら迫って。


「代えの利く人間に意味など無くてよ!」


 レオンハルトは右腕を振り上げた。

その先にある赤熱する鱗に覆われた竜の首が口を開き、ハサミの刃をくわえて。

次いでそれを噛み砕く。


 レオンハルトは爪先を軸に旋回。

得物を失ったレディ目掛けて尾を振り抜いた。

その一撃がレディを後ろへと吹き飛ばして。


「個に執着しないと言ってたお前達が意外だな。なぜそこまで個人を否定する」


 レオンハルトはステップで数歩後ろへと戻ると衛兵達の陣形に並んだ。

レオンハルトがレディの攻撃を受け止め、その隙をついて衛兵が剣を振るう。


「スペルアーツ『治癒活性キュアー』!」


 フェリシアが衛兵達の傷を癒した。

いでその指先をレディの1人へと向けて。


「スペルアーツ『光弾魔象バレッド』!」


 フェリシアの指先から放たれた閃光の弾丸。

それは音も無く空を切り、レディの顔面へと直撃した。

その顔が煙を上げなら後ろに仰け反る。


「今だ!」


 衛兵の1人が声をあげ、彼に続いてその左右の衛兵も剣を振るった。


 犠牲を出しながらもレディ達の数を減らすレオンハルト達。


 ついにはレディは最後の1人となった。

それでもレディは単身レオンハルトへと襲いかかる。


その首をレオンハルトは斬り落とした。

転げ落ちる首を右腕で丸飲みにし、いで残された身体も喰らう。


 訪れた静寂。


 レオンハルトは構えを崩さないまま周囲に視線を走らせて警戒していた。

衛兵達も無言で陣形を維持。

フェリシアがその様子を静かに見守る。


「…………警戒は維持」


 レオンハルトはそう言うと隣に立つ衛兵を横目見て。


「状況は」


「八ッ! 状況確認、報告!」


 レオンハルトにかれた衛兵が言った。

陣形の端の衛兵から順に短い返答が順番に返ってきて。


「現存兵21。負傷者は15。17名が戦闘続行可能。死者は11名になります」


「……了解」


 レオンハルトが答えた。


「また……11人も」


 フェリシアは陣形の中に横たわる亡骸と、廊下の途中に点在する遺体に視線を移して。

そして自身を逃がすために残った兵士達を思い出す。


「フェリシア」


 うつむくフェリシアにレオンハルトが声をかけて。


「あの魔人達について分かっている事は」


「わたしもそこまで分からないけど、1人が魔宮を展開してそこから増えた。ここにはその魔宮を展開した魔人は来てなったから、どこかにいると思う」


 レオンハルトの問いにフェリシアが答えた。


「では、その大元の魔人を討伐すれば我らの勝利に」


「果たしてそうかな」


 レオンハルトが言った。


「あいつらは自分達の事を種と呼び、繁栄をうたっていた。それなのに大元の魔人1人だけが個体を増やせるとは考えにくい。城の警備は厳重だった。門を開け放ったとしても気付かれる事なくそう易々と侵入を許すとは思えない」


「つまり、おに──黒の勇者様は街でのあの魔人を放っていた大元の魔人と、城でわたしが見た大元の魔人は別にいるって考えてるのね」


 フェリシアが言うとレオンハルトはうなずいて。


「ひとまず今は兄貴のもとへ向かう」


「お兄様が魔人と共謀きょうぼうし、此度こたびの混乱を招きました。すでに国王は魔人によって……殺されました」


 フェリシアが説明すると衛兵達にどよめきが広がる。


「そんな、国王陛下が…………」


「王子殿下がそれを……!?」


「……だがそれは────」


 衛兵の1人が疑問を口にして。

それにフェリシアが答えた。

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