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4-18

「ケケケ、嘘つけ」


 アムドゥスはレディを見据えながら言った。

その額の瞳には7色の光が走っている。


「お前さんと会うのは初めてだろうが」


 アムドゥスの言葉を受け、レディはその表情を曇らせて。


「貴方、魔物を連れているのね。……でもなんのことかしら。そちらの白いマントの方とは1度お会いしていますわ」


「お前さんが一方的に知ってるだけだろ。ケケケケケ」


 アムドゥスはディアスに視線を移して。


「からくりが読めたぜ、ブラザー。だが厄介だ。あいつを殺してもあいつは死なねぇ」


「どういう意味だ?」


 ディアスがアムドゥスにいた。


 だがアムドゥスが答えるよりも早く。

レディはハサミを構えながら、ディアス目掛けて駆け出す。


 ディアスは両手の剣を構えた。

それと同時に巨大なハサミで襲いかかるレディ。

ディアスはレディの振るう刃を受け止めて。

左右からその身体を挟み込むように迫るハサミの刃を、ディアスは剣で押しとどめる。


 レディは腕に力を込めて。

ディアスの剣を徐々に押していき、その手に握る凶刃がディアスの腕に触れた。

触れるだけでその腕には一筋の傷が走り、血が流れる。


 流れ出た血がレディの握る巨大なハサミの刃へと伝った。


 ディアスは突然、剣を引いた。

なんとか押しとどめていた刃がディアスへと迫る。


 その刹那せつな

ディアスは手首を返し、剣の切っ先を下に向けた。

すかさず交差させた刃を振り上げて。


「『その刃、(ソード・)熾烈なる旋風の如く(ヴォルテクス)』」


 剣の操作による加速を付与した斬擊がレディのハサミを弾き返す。


 レディは咄嗟とつさに後ろへと跳んで距離をとって。


 だがディアスは振り上げた刃をレディ目掛けて投げ放った。


「『その刃、(ソード)突風とならん(・ガスト)』」


 光をまとって加速する剣。

その刃はレディの眼前へと迫る。


 視界いっぱいに迫るディアスの剣。

レディはその剣をハサミをいで弾いた。

だが剣を払いのけた先に。

さらに自身へと振り下ろされる刃を捉えて。


 『その刃、(ソード)突風とならん(・ガスト)』を放つと共にレディへと肉薄していたディアス。

ディアスはレディ目掛けて渾身こんしんの力で剣を振り下ろす。


 レディは後ろに下がりながら身をよじるが、ディアスの剣はその身体を捉えた。

レディは右腕を根本から斬り落とされて。

レディはその痛みに、くぐもったあえぎ声を漏らす。


 レディはハサミを振るってディアスの追撃を牽制けんせいすると、後ろに跳んだ。


 レディの切れ長の目がキッとディアスを睨んで。

その手に握るハサミの柄の片側には、斬り落とされた腕がハサミを握ったままぶら下がっている。


遠隔斬擊(ストーム系)と呼ばれる剣技でしたかしら。お目にかかったのは初めてですわ」


 レディはハサミの切っ先を上に向けると、刃に滴る血を舐め取った。


「マイナー、マイナーと揶揄やゆされるのはもう慣れている。……それよりいいのか?」


 ディアスは刃に滴る血を見ながら言った。


 ディアスの問いに、レディは意味が分からないと肩をすくめて。

だが次の瞬間、その顔が苦痛に歪んだ。

いでレディはもだえながら吐血する。


「魔人が口にしても猛毒だって話だからな」


 ディアスの声がすぐそこに迫っていて。

レディが顔を上げると、フードの下のディアスの赤い瞳と目が合った。

赤く燃える瞳が、その輝きとは対照的に冷たくレディを見下ろしている。


「貴方も魔人でしたのね……!」


 レディは力を振り絞り、ハサミをディアス目掛けて突き出した。

だが目の前に無数の刃がそそり立つと、ハサミを握る手が切断される。


 レディは刃の出所を追って下へと視線を向けた。

そこにはディアスから、地を這うように伸びた刃。

そしてその刃がレディの真下にまで潜り込んでいて。


「────」


 レディが言葉を発するよりも速く。

刃の側面から無数の剣の切っ先が現れて。

貫かれるレディの身体。

その肢体がいくつもの肉片となって転がる。


 その身体は灰となり、灰の中から魔結晶アニマが顔を覗かせた。

ディアスはその魔結晶アニマを手に取ると呟く。


「……小さいな」


 小指の爪くらいしかない小さな魔結晶アニマ

今までディアスが目にしてきた魔結晶アニマは小さくても握り拳大、大きいもので手のひらサイズにもなる。

それと比較してレディの核となっていた魔結晶アニマはあまりに小さく、そして形もいびつだった。


「ケケケ、核としての最低限の機能しかまだない未熟な魔結晶アニマみてぇだな」


 アムドゥスがレディの魔結晶アニマを見て言った。


「だが気をつけろよ、ブラザー。お前さんの使う剣技もお前さんが魔人だってのもバレちまった。次は今みたいに簡単にはいかないかもしれないぜぇ?」


「いくら殺しても死なないってやつか」


「ケケケ。噂をすれば、だ」


 アムドゥスが目で示した先へとディアスは視線を向けて。

その先から銀色の閃きがディアス目掛けておどった。

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