チャイルド嬢からお茶会に誘われました
目に分かるような共通点や接点がない者を厳選したので。ウワサと贈り物の効果は増大だった。
リズベットやエリーナには届いていないのに、子爵のように下級貴族から侯爵や辺境伯のような高位貴族まで幅広く贈られている。
贈り物の共通点はあるものの、若干の違いや差はある。
贈り主から完全に優遇されていると思っても仕方のないことだ。
ヘリオト商会へ苦情が殺到したこともあり、全て『とある方から贈り物を届けるようにと仰られた為、業務を全うしたまでで御座います。そのお方は、購入代金だけでなく運搬に掛かる費用や人件費もお支払い頂いておりますので、不運にもお客様のお手元に届かなかったのは致し方ないことで御座います。贈り主様のご要望なので、わたくし共に仰られても何も出来ることは御座いません。贈り主様の素性は、個人情報のためお答え出来かねます』とクソ長い丁寧な物言いで追い返すように一貫した対応を取って貰った。
ここでブレてしまうと、全てが水の泡となって消えてしまうからだ。
クソ長い台詞も要約すれば『リリアン様のお眼鏡に叶わなかった無能に価値はないから、さっさと帰れ』である・
この断り文句を考えたのはメアリー・スーで、本当は腹黒なんじゃないかと思う時がある。
フリックは基本的に従順に服従しているが、時々慇懃無礼な態度を取る時がある。
それは、大抵がアングロサクソン家に不利益が出そうな時に発動される。
その対象は専ら私の祖父なのだが、あの自由人にはあれくらいの人物が側近でなければやっていけないだろう。
さて、贈り物で賑わう中でお目当ての人物が私に接触を図ってきた。
「アングロサクソン様、ご機嫌よう。本日、リズベット様が入学生達を集めたお茶会をするんですの。一緒に如何かしら?」
「御機嫌よう、チャイルド嬢。とても素敵なお誘いね。ありがとう」
ニッコリと笑みを浮かべて謝意を述べてから、スケジュール帳を開き参加出来るか確認した。
スケジュール帳は、読めないことを見越してほぼ漢字で書かれている。
なので、堂々と見せている。
「ごめんなさい。授業が終わったら、本日は、聖女として教会に行かなくてはならないの。誘ってくれたのに参加出来ないのは残念だわ。翌週の水曜日なら午後は時間が空いているので、わたくしも親睦会を開こうと思っているの。ああ、でも大人数ですると気疲れちゃうわね。少人数で行いたいわ。チャイルド嬢もお友達と一緒にお越し下さらない? 実は、ヘリオト商会から来月発売されるカタログが近々届きますの。良ければ一緒に見ませんか?」
やんわりとお断りと次のお誘いを同時に行い反応を見る。
先程の張りつけた笑みではなく、本当に楽しそうに笑っている。
「勿論、参加させて頂きますわ。友人は、何人ほど呼んで宜しいのでしょうか?」
「そうね。二人か三人程度でお願い出来るかしら。大人数でするのも賑やかで楽しいでしょうけれど、私は静かな時間と流行を共有できるだけの人数が集まれば良いと思ってますので」
リズベットのような無作為に人を集めて、金に物を言わせて品のないお茶会を開くなんて時間と金の無駄である。
バーバリー伯爵夫人曰く、お茶会を開くのであれば一番落としたい相手を最初に選び魅力的な話題をちらつかせながら誘う事だと言っていた。
彼女もヘリオト商会について色々と情報を聞きたいだろうし、私についても探りを入れたいのだろう。
リズベットの命令だけでなく、私個人の人物像も見極めたい。
有能か、無能なのか。
彼女にとって、どちらにつくのが一番得となる選択なのか。
「アングロサクソン様は、ご多忙でいらっしゃる。急なお誘い申し訳ありませんでした」
「良いのよ。誘って頂けて嬉しかったわ。でも、次からは時間に余裕をもって誘って頂けると嬉しい。後、わたくしのお茶会も良ければ参加して欲しいわ。返事は、月曜日の放課後までにお願い出来るかしら」
そう返すと、良い返事が返ってきた。
「はい。是非、参加させて頂きます。後程、使いを出しますので詳細な内容を使いに伝えて頂ければ幸いです」
「分かったわ。そろそろ授業が始まるから、これで失礼するわね」
話は纏まったので離れるタイミングを示すと、キャロルは一礼して教室に戻って行った。
これでキャロルのルート解放は確定した。
「不細工な顔が、更に不細工になっているぞ。気持ち悪い顔をするのは止めろ」
席に座ると、隣に座っていたアルベルトから暴言を吐かれた。
上機嫌の顔が、不細工だと?
ここに人が居なかったら鳩尾にグーパンしていたところだ。
「……殿下は、時々女性に対する言葉遣いが雑ですわね。そんな発言を繰り返すなら、二度と課題を手伝いませんよ?」
「ちゃんと見返りは用意しているだろう。何でそんなことを言うんだよ!」
「見返りを求めるのは当たり前です。等価交換だからに決まってるでしょう。大体、わたくしに殿下の課題を手伝うことにあまりメリットを感じません」
「例の件にも、無報酬で応じただろう」
「それは、殿下が課題が出来ないと泣きついたから助けた報酬ですわ。人の容姿や体型を馬鹿にするような方と一緒にいるのも嫌な気分になりますのよ。殿下も、騎士科の上級生受けの顔立ちをなさってますねって言われたらどう思いますか?」
直訳すると『野郎に穴を狙われてるぞ』となるわけだが、アルベルトも流石にその隠語は知っていたのか顔を青ざめさせている。
「……俺が悪かった」
「分かれば宜しくてよ。殿下は、もっと語録を増やしましょう。絵本作家のリリス嬢が書いた英雄譚ですわ」
ユーフェリア教会の経典を分かりやすく解説した物語調の小説だ。
英雄譚とでも言っておけば、少なくとも目は通すだろう。
「これは、読んだことがない本だな」
「発売されたばかりの新刊なので、持っている方も読んでいる方も少ないと思いますよ。因みに、わたくしは読みました」
正確には、私が書いているので校正時に読んでいるので強ち間違ってはいない。
「この間、撮影した写真は使うのか?」
「あれですね。使いますわ。あれだけのポーズがあれば、他のモデルに口頭で説明するよりも見せるだけで理解出来ますので重宝してます」
「見せるなよ」
「大丈夫ですわ。顔は全部分からないようにしてありますのでご安心下さい」
そう言うと、アルベルトはホッと溜息を吐いている。
時すでに遅し、エロ本にがっつり起用されている。
この事実が、黒歴史となり強請るネタにするつもりでいる。
「また、課題で困ったら頼って下さいませ。勿論、対価は頂戴しますけど」
フフフと笑みを浮かべながら言うと、アルベルトは嫌そうな顔をしたが、金銭などの物品を要求されることはないと分かっているのか安心した顔をしている。
残念だが、次回もお前を使ったエロ本第二弾を作る予定だ。
早く何かしらのヘルプが来ないか、今から楽しみである。




