嘘発見器と風の大精霊シルフ現る
携帯を使って、パパンにリズベットのことをチクッておいたら「こっちで対処する」と頼もしい返事が返ってきた。
なので、「出来るだけ長く金を引っ張って衰退させようぜ」的なことを遠回しに言っておいた。
言うだけならタダだものね!
教会の不正に関して、徹底的に取り調べ&憲兵への引き渡しで大忙しとなった。
寝る間も無いとは、このことを言うのかもしれない。
現時点で教会の全てを掌握するのは困難だ。
いずれ掌握するつもりだったが、時期が早まったと割り切るしかない。
次期王妃・アルベルトの婚約者・大公令嬢・聖女・作家・商人……これだけでも六役をこなしている。
特に、美貌を損なうようなことはしたくない。
顔を売るには、目を引く様な美しさも武器になるからだ。
休み返上する代わりに、睡眠時間九時間をキープしている。
実質寝れるのは、約八時間と思っても良いだろう。
不正に加担した者が多すぎて、処罰を下すのに時間が掛り過ぎるのも忙しすぎる理由の一つだ。
嘘を見抜く魔眼とかあれば良いのに!
なんて思っていたら閃いた。
「それよ! 嘘発見器!!! 何で思いつかなかったのかしら。末端なのかどうか分かれば、罰自体も変わってくる。仕分けがし易くなる」
ポリグラフ検査を作るには技術や知識がないが、トランジスタの回路を使った物なら作れる。
ポリグラフ検査に比べて精度は低くなるが、それでも一定の効果はある。
紙に図面をを起こして、工房に依頼した。
勿論、特急料金を払うと前金を渡したので快く受けてくれたのは有難い。
初めて作るものだから、まずは試作品が出来たら一台寄こして貰うように頼んだ。
「嘘発見器だけで全て解決出来たら良いけど、そんなに都合良く行かないのが世の中ってもんよね。私の手足となって情報収集してくれる人いないかしら。この際、人じゃなくても良いのに!!」
ウガーッと頭を抱えて唸っていると、フワッと髪の毛が浮いた。
窓開けてたっけ? と思って窓を見るが閉まっている。
何もないところから風が吹くのは、自然現象ではない。
精霊の悪戯が相場と決まっている。
姿を見せない辺り、私を警戒しているのだろうか?
「そこにいるんでしょう。仕事の邪魔するなら出て行って頂戴。私は、忙しいのよ」
シッシッと犬を追い払うような仕草をしたら、ゴーッと突風が吹き荒れた。
お陰で書類が部屋中に散乱してしまった。
それには、温厚な私もプチッと切れてしまった。
魔力感知は得意ではないが、やれないこともない。
手加減なしで魔力を放出すると壁に何かが派手にぶつかった音がした。
そちらを見ると、股間を葉っぱで隠した変態……ではなく精霊がいた。
汚いものを摘まみ上げるように、布の切れ端で摘み揺さぶってみる。
「さっさと起きろ。よくも私の仕事を増やしてくれたな、クソ野郎。握り潰すぞ」
精霊から悲鳴のような声が聞こえてくるが、私の気が済むまで上下左右に振った。
精霊がグッタリとしたので、取り合えず振るのは止めておいたがガッチリ掴んで離すことはしなかった。
離した途端、何されるか分からないからね。
「取り合えず、あんた誰よ?」
「風の大精霊シルフ様だ!」
「あぁん? 何て?」
吠えるシルフにガン飛ばすと、言い直した。
「……シルフです」
「ふーん。で、何しにここへ来たわけ? 私の仕事の邪魔してタダで帰れると思うなよ。大精霊って死んだら別の上位精霊が大精霊になるのかしら?」
グッとシルフを掴んでいる手に力を込めると、泣きながら謝られた。
「ごめんなさい。許して下さい。もうしません! 悪気は無かったんです。あの偏屈な火が、契約したって聞いてどんな奴か見…ギャッ!!」
「どんな奴?」
「どんな方か見に来ました」
「それで、何で部屋中に突風を起こしたの?」
思った以上に低い声が出てしまった。
恐れ慄いたシルフは、泣きべそをかきながら言った。
「人間の分際で僕に命令するからムカついてやりました」
「その人間様に捕まって、今お前の命は風前の灯火なんだけど。このまま握り潰されて圧死したい? あまり人間様を舐めんな」
精霊からすれば人間風情と軽んじるのは無理はない。
しかし、私は最高神からの要請で世界を救うために色々と協力を要請されている立場でもある。
私が動くのは、ひとえに可愛い天使たちの為であって世界に住む生物のためではない。
最高神にクレーム入れてやろうかしら。
こいつを見ていると、本気でそう考えてしまった。
「ずびばぜんでじたぁ」
「謝って済むなら仕事は減らない! 誠心誠意謝罪するなら、私の抱えている仕事を手伝いなさいよ」
そう言うと、シルフはコクコクと頭を縦に高速で振っている。
「風の大精霊なら機動力は随一でしょう。あんたが散らかした書類に書かれている人間の身辺調査を頼みたいの。不正に加担した人間の量が多すぎて困っていたところなのよ。自発的にやったのか、それとも脅されたり、知らずに加担していたのか。そこが知りたいの。大精霊って名乗るくらいなんだから出来るわよね?」
「はい! やらせて頂きます」
「そう。なら早速取り掛かって頂戴。三日以内に終わらせてね」
「……善処します」
「じゃあ、まずは散らかした書類を拾って書類整理からよ」
私はシルフを顎で使いながらテキパキと書類を揃えて仕事に取り掛かった。
もし、シルフが私との約束を反故にするのであれば契約した三大精霊を嗾けるつもりだ。
三対一なら余裕で勝てるだろう。
思わぬところで風の大精霊と繋がりが出来てしまい、嘘発見器は不要かなと思っていたが、後に違う場面で役立つこととなる。
それも不倫発見器として一躍有名になるとは、この時は知る由もなかった。




