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お前は、ヒロインではなくビッチです!  作者: もっけさん
幼少期
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視察と称した雑誌の写真撮影

 フリックに契約書を持ち帰らせ、私達はアングロサクソン家の新型馬車(お忍び用)で移動して城下街までやってきました!

 活気があるのは良いことだ。

「アングロサクソン領よりも人が少ない気がする」

「それは、仕方がありませんわ。流行の発信地で一番栄えている街ですもの」

 特許権を作ってから飛躍的に栄えたので、つい数年前なら王都の方が断然栄えていただろう。

「一応、ご存じだと思いますが身分によって棲み分けされております。今、わたくしたちがいるのが貴族街です。云わば一等地で爵位が高い貴族の屋敷が多いです。ここから十分ほど歩いた場所が中層街です。富裕層の商家や下級貴族の屋敷がありますわ。そして、更に先に平民の住む街があります。平民の街でも、一歩路地裏に入れば人攫いやスリ、殺人などの犯罪に巻き込まれる可能性がありますのでご注意下さいませ」

「今日は、どこを回るんだ?」

「そうですわね。全部と言いたいところではありますが、貴族街と中層街の境界まで行きましょう。流石に貴族街でお買い物は出来ませんので、中層街なら先程払ったお金で小さな買い物が出来ますわ」

 『今年の社交シーズン 王都お出かけの装い』という見出しでカタログを作りたいので、お忍びで出かけられるスポットを巡って撮影する予定だ。

 大人用の撮影は、別の日にする予定である。

 そこに立ち会えないのは残念だが、キッズモデルに再現して貰おう。

「さっきフリックという奴と魔法具を使って話してただろう。あれは、買えるのか?」

「無理ですわ。あれは、試作機です。王妃様がプライベート用のデモ機を持っていらっしゃるので、わたくしに用事があるのであれば、それを借りて連絡して下さい」

 そう答えると、アルベルトは目に見えて分かるくらいションボリしている。

 そう思ったのも束の間、何か閃いたのか明るい顔で聞いてきた。

「リーの魔法具は、色んな機能が付いているんだろう?」

「ええ、十二個のボタンがあります。各ボタンに通話したい相手の血を着けると認識され、もう片方の通信具に繋がります。魔石を使っているので、魔石の魔力が切れても交換すれば壊さない限りずっと使えますよ」

「ボタン一個だけなら作れるんじゃないのか?」

「まあ、それなら出来ますけど……」

 何か嫌な予感がする。

 聞きたくないけど、お金の匂いがするので話だけ聞きこうという悪魔の囁きが聞こえてくる。

 私が身構えていると、アルベルトはドヤ顔で言った。

「スピネル達も通いで王城に来ている。もし、何等かのトラブルで帰宅時間が遅くなったりしたら早馬を飛ばすよりも直ぐに連絡が取れる魔法具があれば便利だろう。親が子供に持たせる。金になるぞ」

 確かに、アルベルトの言っていることは一理ある。

 複数ボタンをつけて、登録した相手毎に切り替える術式を刻むのは面倒な作業になる。

 逆に、ボタン一つだけで特定の相手と通話するだけなら価格もかなり抑えることが出来て安価で販売可能だ。

「アル様、そのアイディアを頂いても宜しくて?」

「良いぞ。その代わり、一番最初に出来た奴は、俺にくれ」

「アイディア料は、通信具をお渡しすると言うことで宜しいでしょうか?」

「ああ、それで構わない」

 アイディア料だけでも中金貨三枚は下らない。

 長期的に見れば、アルベルトにアイディア料を支払ってもお釣りがくるくらい金になる。

「デザインは、どんな感じにするか決めたいので一度喫茶店に移動しましょう。丁度、美味しいお茶とお菓子を出すお店がありますの」

 アルベルトの学友が、物凄く残念な眼差しで私を見ていることなど知らずに。

 私は、ルンルン気分で行きつけの喫茶店にアルベルト達を誘導した。



「ここですわ」

 モダンでノスタルジックな雰囲気の喫茶店に入ると、カウンターにいた店長が出迎えてくれた。

「リリー様、いらっしゃいませ。麗しいお嬢様方も、どうぞごゆっくりなさって下さいませ」

「マスター、例の部屋は空いているかしら?」

「はい。あそこは、リリー様専用にしておりますのでいつでもご利用可能で御座います」

「ここで撮影をするから、あの場所を使いたいという人も出てくると思うわ。その時は、私に気兼ねせずに使わせてあげて下さいな」

 やんわりと他の人にも使わせてあげてねと言うと、予想通りの答えが返ってきた。

「いえ、あの場所はリリー様専用です。幾ら積まれても他の方にご利用頂くことはありません」

「では、わたくしの紹介なら宜しくて?」

 そう問いかけると店主は、二つ返事で是と答えた。

 これで私の名前も売れるし、恩も売れる。

 その他大勢の人間は『希少』という言葉が大好きだ。

 王族以外であれば、客の要求を突っぱねることが出来るのはアングロサクソン家が全面的にバックアップしているからに過ぎない。

 結婚相談所のカップリングが上手く行ったときは、良くこの店がデートコースの一つに組み込まれているくらいだ。

「さあさあ、奥へ参りましょう。マスター。いつものをお願いね」

「畏まりました」

 注文を済ませ、私を先頭にリリアン専用VIP席へと皆を移動させた。


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