汚部屋大改造計画
ユーフェリア教会の財務室でひたすら書類整理を行っています。
下級精霊は大雑把なことしか意思疎通が出来ないので、単純作業しかやらせていない。
財務室の資料置き場は、鍵のかかる棚や箱をノームに作って貰った。
軽くて丈夫なものでと注文を付けたら、意外と乗り気で取り掛かってくれたのは有難い。
全ての棚から契約書だけ抜き取るのは大変だった。
あっちこっちに散乱しているってマジでふざけている。
「集めた契約書は、年代別に分けてくれる」
「は~い」
「十年前の資料は、この箱の中に入れて。それ以外は、年代別に分けて頂戴」
「分かった」
棚は、ノームにお願いして鍵付きで時間経過しない物に作り替えて貰った。
私は、集まった契約書に目を通して日付順に並べていく。
不審な契約書には、付箋を貼ってダブルクリップで留めて仕舞う。
中身は整理が終わったらじっくりと拝むことにしよう。
契約書関連は、手の届く場所に仕舞い特定の人間しか開けられない様に制限をかけた。
精霊魔法って、本当にチート様様である。
財務室に籠城して一週間。
着たきり雀で風呂に入ることなく、護衛が部屋の外から食事を持ってきたと声を掛けるのを合図に時間を計っていた。
この部屋の良いところは、仮眠室とトイレが付いているところである。
シャワールームがあれば最高な環境になるのに、これは相談して私のポケットマネーでも良いから改修作業して増設させて貰えないかなぁ。
全ての書類を年代別の日付順に纏めて箱に整理されてある。
十年前の物に関しては、一通り目を通して思ったのは水増し請求が多すぎるということ。
処分する予定だったが、不正の証拠がザクザク出て来たので頑張って纏めた。
不正の部分は、赤ペンでチェックを入れて年代+月別に分けて『不正箱』に収納した。
綺麗に整理整頓された部屋を見て、努力が報われたような気になる。
しかし、清書がまだなので何とも言えない気持ちになった。
不正の書類は隠蔽されても困るので、こちらも私以外開けられない鍵付きの棚に収納しておいた。
一週間ぶりに部屋を出ると、護衛がビックリして固まっている。
「聖女様、顔色が芳しくないようですが大丈夫ですか?」
「流石に、仮眠三時間の二十一時間労働はキツイわね。貴方もご苦労様。一度、お風呂に入ってベッドで眠りたいわ。私の側仕えのユリアを呼んで貰えるかしら?」
「畏まりました。お部屋の中でお待ち下さい」
二人いた内の片方が競歩でユリアを呼びに行ってしまった。
私は、ソファーにゴロンと横になり惰眠を貪った。
実に七日ぶりの睡眠である。
目が覚めると、身体は綺麗に洗われてベッドに放り込まれていたよ。
チェストに置かれた愛用の懐中時計で時間を確認すると四時を示している。
窓を見ると日が出ているが、沈むのか昇るのか判断出来ない。
「う~ん、ここはもうひと眠りしようかな」
まだ寝たりないし、寝直そうとしたら掛け布団を引っぺがされた。
何事と辺りを見渡すと、ユリアが珍しく怒っている。
「お嬢様、夕方の十六時ですよ。二度寝したら、夜寝れなくなります。それに、この一週間満足に寝てない上に食事も適当に済ませてたでしょう」
「やりがいのある部屋だったから、つい夢中になったわ」
「腐海の部屋が、綺麗に整頓された清潔な部屋に変わってましたから分かります。しかし、それとこれとは別物ですよ! 一週間もお風呂に入らないなんて、不衛生にもほどがあります」
「臭かった?」
「いえ、特に気になるほどではありませんでしたが、髪のべたつきが酷かったです。四回目で泡立ったくらい汚かったです。全身垢すりしたら、想像以上にボロボロと取れましたよ。アルベルト様には、見せられないお姿でした」
そこにアルベルト関係なくない? と思ったが、ツッコミを入れたら面倒臭いことになりそうなので無視を決め込んだ。
「四則演算とそろばん、帳簿の付け方は覚えたのかしら?」
「はい、覚えました。元が、優秀なので一通りは出来るようになりました。ただ、シェリー殿の進捗は芳しくないようです。足し算と引き算は出来るのですが、掛け算と割り算がどうしても出来なくて難航しています」
これは、エサをちらつかせないとやる気が出ないタイプかもしれない。
「食堂に財務に携わっていた者達を集めて頂戴」
「今からですか? これから夕食の時間になりますよ」
「構わないわ。やる気を出させて馬車馬のように働かせるのが目的なんだから。ノーム、シンプルなデザインで良いから懐中時計を作ってくれない? 教会の花押であるスズランは小さく刻印しておいて」
「今度は、懐中時計か。精霊使いが荒いぞ」
「そろそろ、新作のエールが出来るそうよ。一樽融通するからお願い」
不満そうにしていたノームに酒をちらつかせると、
「……何個だ?」
「取り合えず二十個お願い」
「一樽では割に合わんぞ」
「お酒に合うおつまみも用意するわよ」
駄目押しに言うと、ノームは納得したのか頷いて懐中時計二十個を作ってくれた。
「お嬢様、それはどうするおつもりですか?」
「これ? 夕食時に分かるわよ」
懐中時計を三つ手に取り、残りの十七個は箱に仕舞ってクローゼットの中に収める。
盗難防止の魔法をかけて置いたので、盗まれることはないだろう。
私は、ユリアを伴って食堂へと足を運んだ。




