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お前は、ヒロインではなくビッチです!  作者: もっけさん
幼少期
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アルベルト主催のパーティー1

 カルタを使った参加者情報を覚える作戦は大成功を収めた。

 罰ゲームもあったが、やはり金一封の効果は大きかった。

 参加するメイドや護衛達から裏話的な話が、出てくるのも良かったと思う。

 アルベルトの性質上、遊んで学ぶを実践した方が効率が良い。

 そして今日は、アルベルト主催のパーティーだ。

 王妃とユスティーツィアは参加はしないが、蔑ろにしていないというアピールをするために花の手配をお願いした。

 テーブルの上に飾られた薔薇の花は、全て王妃が手配したものである。

 警備体制も整え、コネをフル活用してベルガー将軍まで引っ張り出して王妃とユスティーツィアの警護をして貰っている。

 ただ、近衛兵と一般兵混合の護衛任務は互いの意見を纏めすり合わせるのが大変だったとだけ付け加えておこう。

 アルベルトを磨き上げる為に化粧品から衣装、果てはメイドまで持参してパーティー前日から王城の客室に泊まらせて貰った。

 アルベルトを早朝に叩き起こし、アングロサクソン家直伝の全身マッサージを受けて貰い爪先から頭の天辺まで綺麗に磨き上げる。

 爪も艶が出る様に磨き清潔感を演出するのも忘れない。

 私が懇意にしている洋服店でオーダーメイドで作って貰ったスーツは、ありきたりの燕尾服ではなく前世のビジネススーツだ。

 茶色を基調としたチェック柄のスーツに、アルベルトの髪と同じ群青色のネクタイ。

 私の瞳と同じ色をしたエメラルドがはめ込まれたネクタイピンを用意した。

 石自体は小さいが、カット技術が進んでどの角度から見ても煌めいている。

 同様にカフスボタンと茶色の革靴も用意した。

 全身を隈なく確認して、私は準備したメイド達にグッジョブと親指を立てた。

 メイド達もやり切った感が半端ないが、私の準備が残っている。

「パーティーが始まる前に、こちらに目を通しておいて下さいませ」

 一冊の冊子を手渡すと、嫌そうな顔をされた。

「一応聞くが、中身は何だ?」

「招待客の個人情報を面白おかしくまとめた物ですわ」

 そう伝えると、ホッと安堵したのか本を手に取った。

「招待客の基本情報は覚えていらっしゃいますが、会話を盛り上げるにはは相手のことを深く知るのが一番の近道です。わたくしは、支度をしてきますので一旦失礼します」

「……ああ」

 冊子に夢中で上の空の返事だけが返ってきた。

 絵が多めなのでアルベルトにとって読み易いものにはなっているだろう。

 最近、絵本にも嵌っているようなので将来は活字中毒になれば勉強もより捗るだろう。

 本の奥深さと楽しさにどっぷりと嵌って貰いたいものである。

 私は、借りた客室に戻りメイド達にパーティーの準備をして貰う。

 全身エステは勿論、爪は綺麗に整えられピンクベースのネイルも施して貰う。

 私の誕生花であるヘリオトロープを左手の中指に描いて貰った。

 誕生日に着た緑のグラデーションドレスにレースを足しリメイクして貰った。

 アルベルトの髪色に合わせて、大粒のソーダライトを使ったイヤリングとペンタントを身に付け薄化粧を施し準備は整った。

 そうこうしている内にパーティー開始二時間前になり、アルベルトと合流して最後の打ち合わせ兼軽食を取る。

 二人して冊子片手に一口大に切られたサンドイッチを食べる姿は、バーバリー伯爵夫人に見られたら扇子が飛んできそうだ。

 しかし、切羽詰まった状態では形振り構っていられない。

「殿下、冊子の内容は覚えられましたか?」

「大体は頭に入っている」

「今回お招きする方々は、派閥関係なくお招きしております。誰かに肩入れすることはないようお願いします」

「分かっている」

「わたくしはゲスト側ではありますが、殿下のサポート役として常に傍におります。わたくしの誕生日の二の舞だけは止めて下さいませ。わたくしと不仲と思われれば、面倒事を背負い込むことになりましてよ」

 今日のパーティーで私という盾をどう使うかが問われる日でもある。

 今までの評判を払拭できなければ、有力者の子供は近寄ってこないだろう。

 アルベルトには、将来ユスティーツィアに仕える臣下を囲う撒き餌になって貰わねば困る。

「肝に銘じておく。保守派筆頭のオブシディアン家と中立派筆頭のジャスパー家は、どう接するべきだ?」

「保守派は、格式や慣習を重んじ自尊心が高く選民意識が強い方が多いのが特徴ですわ。オブシディアン家は、それが如実に現れてますわね。政治的なことは一切言わずに、過去の功績について褒めて相手から話させるように仕向け聞いてあげるのが宜しいでしょう。中立派は、良くも悪くも事なかれ主義な方が多いので領地の特産物に興味を示してあげれば宜しいですわ」

「アングロサクソン家は、どっちなんだ?」

「わたくしの家は、改革派の筆頭ですわ。改革派の貴族は、新興貴族が多く野心家で向上心が強い方が多いですわ。わたくしが傍におりますので、そちらは私の話に相槌を打って頂ければ大丈夫です。後、こちらをどうぞ」

 箔押ししたサンキューカードをアルベルトに手渡すと、疑問符を浮かべている。

「これは、何だ?」

「ご来場された方にお配りする感謝のカードですわ。こうすると切り離すことが出来ますの」

 カードには切り込み線が入っており、切り込み線の上にはアイビーの花を象った箔押しがされている。

「これを渡してどうするんだ?」

「厳選してパーティーに呼ばれたという一種のステータスにするための小道具ですわ。そして、相手と何を話したのかメモが出来るようにという老婆心ですわ。パーティーが終わった後は、お礼のお手紙を送らねばなりません。その時、会話した内容を手紙に書けば相手は喜びます。殿下は、カードを切って渡して下さい。切り離されたカードは、わたくしに預けて頂ければ結構です。談笑の合間にメモをしておきますので」

 最近、開発に成功した万年筆のお陰でメモが取り易くなったとアングロサクソン家の従事者から有難がられている。

 それでも改良するべき点はまだまだあるため、製品化には程遠いが自分で使う分には問題ないだろう。

「書く物など持ち込むことは出来ないぞ」

「お任せ下さい。わたくしの商会でドレスに合わせて作らせたパーティー用のバッグですわ。小物ならこの中に収めることが出来ますわ」

 エメラルドのクズ石を研磨して縫い付けたパーティーバッグは、世界に一つしかない見栄え最強の低コストで仕上げた逸品だ。

「相当値が張りそうな代物だな。金貨70枚くらいか?」

「そんなにしません。素材と製作費と人件費で金貨6枚くらいですわ」

「安すぎないか?」

「豪華に見せてますが、使っている石は宝石の価値が殆どないクズ石です。素材よりも製作費と人件費が高い為、量産ではなく受注生産で売るつもりですわ。今日は、このバッグのお披露目も兼ねているんですの」

「まさか、俺に着せた服などもか?」

「勿論ですわ。わたくしが、ただで何かを差し上げるとお思いで?」

 そう聞き返せば、アルベルトは首を横に振った。

「殿下は見目が大変麗しいので、良い広告塔になりますわ。張り切ってパーティーに挑みましょう」

 笑みを浮かべる私を見たアルベルトは、か細い声で「はい」と返事し意気消沈している。

 どこに落ち込む要素があっただろうかと首を捻ったが、答えは出ないままパーティーの時間が押し迫っていた。

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