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お前は、ヒロインではなくビッチです!  作者: もっけさん
幼少期
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馬鹿王子の使い道を発見しました

 ユリア経由でレイモンドからアルベルトの支度が整ったと聞いたので、チェキもどきを持参してスキップしながら客室の扉を開けたら、超絶美少女がいた!

「は? え? ええ!? あ、アルベルト様?」

「貴様が、俺にじょ……こんな格好をさせるようにコイツに言いつけたんだろう」

 女装とは言いたくなかったのか、アルベルトが言葉を変えて抗議してきたが、全く頭に入らない。

 群青色の髪に、白のレースがふんだんに使われたドレスは私よりも似合っていた。

 髪もショートヘアなのに、綺麗の編み込まれ白薔薇の髪飾りをしている。

「これは予想外ですわ。殿下、とてもお似合いでしてよ。わたくしが、着るよりも似合うって腹が立ちますわね」

 自分の容姿については世間一般から見て『美人』ではある。

 ただし、頭にキツイが付くが。

 一方、今のアルベルトはニッコリと笑みを浮かべていれば正統派美少女に見える。

 やだ……私の婚約者にこんな利用価値があったなんて素敵。

 今まで能無し馬鹿王子と思っていたけど、これは一種の才能だ。

「…気持ち悪いぞ、お前」

 アルベルトの声に、頭が女装アルベルトの使い道を高速回転で考えていたのを一旦止めた。

「殿下、これなら誰にもバレることなく気兼ねなく街で買い物出来ますわ!」

 街というワードに、アルベルトがピクッと眉を動かした。

「この恰好で街に行けと言うのか!?」

「はい。よく考えて下さいませ。護衛が付いているとはいえ、殿下が街に繰り出すことは前例がありません。勿論、高位の貴族は家に商人を呼んで買い物をします。殿下も、その経験はあるのではありませんか?」

 私の問いに、アルベルトは確かにと頷いている。

「品を見るだけでも結構待たされていた。特に母の買い物に付き合わされるのが、一番苦痛だった」

「女性の買い物は長いと言いますからね。殿下は、この国の王子として顔が国民に知れ渡っています。しかし、女性の姿であれば誰も気づきません。このわたくしですら、一目見て殿下とは思わなかったのです。これは、素晴らしい特技ですわ」

 世の女性は、あれこれ悩んで買う人が多い。

 私は、サッと入ってパッと買うので余程値段が高いものでない限り即決してしまう。

「こんな特技があっても何の役にも立たない。屈辱だ」

「常に色んな角度から見れるようにと申したでしょう。では、視点を変えましょう。殿下が城下へ行きたいと主張しても、許可は下りないでしょう。仮令たとえ、私と同伴だとしても。何故なら王子の姿絵が出回っており、国民に顔がバレてます。しかし、女装すれば別人になれます。殿下が望むなら、私同伴の女装付きという制限はありますが王都に戻っても定期的に城下へお忍びで出歩ける許可を取りつけますわ」

「それは、そうだが……」

 女装することで得られるメリットを熱くプレゼンすると、アルベルトも段々その気になって行ったのか気持ちが傾いてきている。

 デメリットは、敢えて伝えないでおく。

 言ったら絶対うんと頷かないしね。

 ここに居る間に街での楽しさを覚え込ませれば、王都に戻ってからも街へ行きたくなるに違いない。

 アルベルトの女装は強請るネタにも出来るし、何より創作意欲が湧いてくる。

「殿下の女装はビジネスになりますわ。お金、稼げましてよ。写真1枚で銀貨3枚。街で買い物するにしても、お金がなくては買い物できません。買い物したいと言えば、城に商人を呼んで長い時間待たされ、下手すれば満足いく品が手に入らないかもしれない。そんな無駄な時間を過ごすか、女装して写真撮らせてお金を得て街で好きな物を買うかどちらが良いと思いますか?」

 私の揺さぶりにアルベルトは暫く唸っていたが、最後は陥落した。

「本当に女装して写真1枚撮らせれば銀貨3枚払うんだな?」

「勿論ですわ。誓約魔法を使いましょうか?」

「それなら文句はない」

 神言しんごんで書かれた誓約書は、私に有利な情報しか書かれていない。

 『銀貨3枚支払う』の部分だけは、敢えてアングロサクソン語にしておいた。

 そうしないと、アルベルトもサインしようとはしないだろう。

「ここにサインと血判をお願いします」

「分かった」

 アルベルトは、理解せずに私が用意した誓約書にサインと血判を押した。

 これでお前の人生は、マルッと私が頂いた。

 使い道のない馬鹿だと思っていたが、金になると分かれば話は別だ。

 こんなところで、使い道を見出せるとは人生何があるか分からない。

「殿下、約束通り『まずは』この場に居る皆に今まで横柄な態度や理不尽なことをして困らせたことを土下座して下さいませ。今日、撮った写真も後日街に降りる際にお支払い致しますわ」

 顔を真っ赤にしているが、その姿で睨んでも怖くない。

 寧ろ、アレな人から見ると一種のご褒美になってしまっている。

 アルベルトに土下座の仕方を教えて、口上を復唱させた。

「わたしの癇癪を皆様に当たり散らして申し訳ございませんでした。はい復唱」

「……わたしの癇癪を皆様に当たり散らして申し訳ございませんでした」

 怒りに震えながら謝罪するアルベルトの土下座姿をチェキもどきに収める。

 横・正面・背後の角度で撮ったものをユリアに渡し、金庫に保管するように指示を出す。

「さあさあ殿下、次に行きますわよ」

 アルベルトの手を掴み、延々と土下座行脚をさせた。

 パンプスで靴ずれを起こして痛いと訴えて来ても、

「わたくしの時も同じことをなさったじゃありませんか。わたくし、泣き言一つ言いませんでしたわ。それなのに殿下は、仰るんですの?」

と煽れば黙った。

 夕飯前に土下座行脚は終わったが、寝るまで女装を止めさせる気はなく、夕食は女装のままで席について貰った。

 母は顔に手を当てていたが、祖父は物凄く良い笑顔でサムズアップしていた。

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