ステータスが分かりました
ステータスの確認をして貰った結果、土と火の大精霊の加護と創造神の加護がついていた。
職業も聖女になっていたが、腹黒幼女や守銭奴商人などという不名誉な称号もついていた。
魔法の適性は闇と土と火の三属性で、魔具師・拳闘士の素養もあるという。
「……これは、また凄いですね」
何とも形容しがたい顔で感想を述べる神官に、私は乾いた笑みを浮かべた。
「回復魔法どころか、聖魔法も使えない聖女ですからね。例の残党達が、騒ぎそうなネタですね」
聖女と呼ばれる女性は、聖魔法や回復魔法の素養がある者たちばかりだった。
それらの素養が無い者が、聖女として正式に神に認められるとは誰も想像しなかっただろう。
歴代の聖女と比較されるのは容易に考えられる。
大きいハンデを背負った上で、皆に『聖女』と認められる必要がある。
そう考えると面倒臭くなってきた。
「創造神テトラグラマトン様の加護を持った方は、歴史上はじめての事です。教会の定めた聖女の基準は、神々と大きく認識が異なっていたのでしょう。リリアン様、どうか我らをお導き下さいませ」
傅く神官に対し、
「最善を尽くしますわ」
としか言えなかった。
それ以外にどう返せば良かったのか分からなかったんだもの。
ステータスで『聖女』と出てしまった以上は、聖女の仕事から逃れられないのは確定した。
「次は、従者のお二人のステータスを確認致します。順番に魔法具に触れて下さい」
「「はい」」
ガリオンが、目を輝かせ魔法具に触れた。
アリーシャは、やれやれと言った様子でそれを見ている。
「これは、素晴らしい! 剣聖様に出会えるとは、何という幸運!! 聖女様に続き、剣聖様を見つけ出せるとは思いもよりませんでした。適性は火と聖魔法ですな。魔力もリリアン様には劣りますが、そこらの魔術師よりもありますぞ」
詳細なステータスが掛かれたプレートを覗き込むと、執事と剣聖の二つの職業が表示されていた。
称号には、ヘッポコ執事やお調子者とあったが見なかったことにしておこう。
「次は、アリーシャの番ね」
「は、はい」
緊張気味に魔法具に触れた。
ステータスプレートには、光精霊の加護がついていた。
職業はメイド見習いだったけど、聖魔導士の素養があった。
「この国で二人目の精霊の加護を受けた者が現れるとは!! わたくしめの生きている間にお目に掛かれるとは何たる光栄」
ブワッと泣き出した神官にドン引きしたが、内容がダメだった。
その辺りを飛んでいた精霊達に問いかけた。
「アリーシャは、あんた達を見ることも感じることも出来ないのよ。何で加護を与えたの?」
「アリーシャの魔力すきー」
「リリアンを守る人間が必要だからー」
「アリーシャなら良いっていったー」
「いったー」
下級妖精達の意見は所々が端折られているので、大まかに訳すると『誰かが、私の守護者としてアリーシャを選び加護を与えた』といったところだろうか。
アリーシャ自身も精霊から見て好ましいと思った部分もあるのだろう。
精霊魔法の素養はないが、聖魔導士の素養はあるので光の加護もそれに合わせたものを与えたのだろう。
「アリーシャ、強く生きろ」
ポンと肩を叩き激励するが、アリーシャの顔色は優れない。
二人目の精霊加護持ちが誕生したことを国に報告することになる。
父が中継ぎで王の座を温めているので、報告しても悪いようにはされないだろうが多少なりと環境は変わるかもしれない。
それは、ガリオンも同じで職業が剣聖なので引く手あまたになるだろう。
今はアングロサクソン家で従事しているが、我が家よりも良い条件で雇い入れて囲おうとする輩が現れないとも限らない。
「神官様、私達のステータスに関しては内密にお願いします」
「このような素晴らしい祝事を隠すのですか? 魔王復活で不安を抱えている民達を安心させられるのですよ」
公表すべきではないかと主張する神官の言葉を手で制し、ゆっくりと低い声で告げる。
「必ずしも、その道に進むとは限りませんでしょう。それに公表したことで、悪戯に隣国との関係をこじらせるのは得策ではありません。彼らの才能を欲しがる者や妬む者が、どんな暴挙に出るか容易に想像出来るでしょう。アリーシャのことは、上層部の一部がその存在を認知していれば良いのです。公表は、時期を見て行えば良い。無力な子供が勇者や聖女になって、民の不安が和らぐとでもお思いですか? 実績を作った上での公表なら、より効果的だと思いますよ」
最後は笑みを浮かべながら言い終えると、神官も思うところがあったのか深く頷いた。
「確かに、リリアン様の言う事は一理あります。分かりました。上層部だけでの共有とさせて頂きます」
「はい、宜しくお願いします」
「アリーシャ殿には、リリアン様の補佐をして頂く必要があるため聖女教育を一緒に受けて貰いますよ」
ここで絡め手に出て来たか。
アリーシャにとって聖魔法や回復魔法の勉強にはなるため、一概に悪い話ではない。
聖女にすると言い出したら、精霊が黙っていないだろう。
教会を完全に私の支配下に置くためにも、断る理由はないだろう。
「分かりました。アリーシャ、一緒に頑張りましょうね」
アリーシャに話を振ると顔面蒼白になりながら、か細い声で「はい」と返事を返してくれた。




