七歳になりました
父ジョーズは、次期王太子が決まるまで暫定で国王代理となった。
陛下丸焦げ事件もあり、今のアルベルトと接触するのは拙いと悟ったようで、アルベルトとは別々に勉強をすることになった。
アルベルトの矯正をしないと、イグナーツの二の舞になるだろう。
是非とも教育に力を入れて最低限のマナーと教養を身に付けられるようになって欲しいものである。
最近、精霊の物騒な物言いに戦慄しながら必死で止めるパターンが多かったのでありがたい。
王妃教育・聖女教育・自分の店や執筆活動と日々忙しく過ごしているが、やっと七歳の誕生日を迎えた。
昨年みたいに内輪のパーティーは、しなかった。
王家の不幸(一応身内)があったので、パーティーはせずに食事をしてお祝いの言葉を貰う程度だ。
昨年以上のプレゼントの山には吃驚したが、このプレゼントの山には父とお近づきになりたい者達の思惑も入っているのだろう。
私と縁のある物以外は、父に見て貰って返送するか決めることになった。
「全部送り返したら良いのに」
という私の言葉に対し、メアリーが首を横に振って言った。
「どこで何がどう転ぶか分かりません。使える手駒かどうかを見極めるのにも、贈り物は丁度良い物差しなのですよ。ただ単に送り返せば、相手の気分を害することになります。送り返すにしても、色々と気を使ったり手順があったりするのです」
「……面倒臭いわね」
「いずれお嬢様も旦那様と同じ立場になりますよ」
嬉しくない未来予測を語るメアリーに、私はウヘェと苦虫を噛み潰したような顔をした。
妙齢になったらサクッと婚約破棄して、諸国漫遊の旅に出るつもりでいる。
弟妹達には悪いが、貴族としての責務は押し付ける気満々である。
「お嬢様、本日は教会へ行き洗礼を受ける日という事を忘れてませんか?」
「ああ、そう言えばそんな事を言ってたわね」
ステータスを確認できる唯一の場所である教会は、件の事件以降は無償でステータス確認をさせているので民も気軽に通うようになったようだ。
お布施や回復魔法に対する対価を決めた為、教会では大きな風穴がぶち抜かれ風通しが良くなったとか。
元法王や役職持ちの神官と暴行した神官は、責任を取らされて破門されたとかわら版屋の編集長から聞いた。
今では、本当に誰かの役に立ちたいと思う者しか神官になりたがらないらしい。
神官を辞めても回復魔法は使えるので、阿漕な商売を仕出かさなければ良いのだが、ある程度は取り締まる必要が出てくるかもしれない。
「自分の誕生日が休日っていうのは皮肉よね。ステータス確認するだけで一日が潰れそう」
折角の自由な時間を潰された気分になるのは何故だろう。
「私としては、良かったです。スケジュールがギチギチに詰まっているので!」
「ポンコツメイドは、だまらっしゃい」
手帳を開きながらぼやくユリアを軽く睨むと、彼女はサッと顔をそむけた。
「鑑定がタダになったので、教会も賑わっているそうですよ。事前に予約しないと鑑定出来ない状態と聞いてます」
「私、予約した覚えないんだけど」
「大丈夫です。私が、ちゃんと予約してきました」
エッヘンとドヤ顔で言ってのけるユリアに、一抹の不安を覚えたがステータス確認できるのであれば文句はない。
朝食を食べ終えて、私は外出用のドレスに着替えるため部屋へ戻った。
一年前のパーティーで着ていた緑のグラーデーションのドレスをアリスの雑貨店に依頼してレースの付いたドレスに直して貰った。
大公令嬢がドレスを直して着るのかと驚かれたが、私の好みが詰まったドレスなので出来るだけ長く着たい。
両脇から裾にかけて濃い緑の布を当て上からレースで装飾している。
ドレス自体に蔦の刺繍が新しくされ、ゴージャスになった。
ドレスが豪華になったので、ブルートパーズの一粒ネックレスを身に付けた。
「お嬢様、素敵です!!」
頬を赤く染めて興奮気味に褒めるアリーシャにありがとうと返した。
「いや、馬子にも衣裳だろう」
と、ガリオンから突っ込みが入る。
「うっさいわね! ガリオン、こういう時はお世辞でも綺麗とか可愛いとか褒めなさいよ」
「お嬢様、それ自分で言うのはどうかと思います」
シレッとした顔で外面で対応するガリオンの足を無言で踏みつけてやった。
呻いているが気にしない。
「さあ、教会へ行くわよ!!」
拳を高々と突き上げて、私達は馬車へと乗り込んだ。




