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お前は、ヒロインではなくビッチです!  作者: もっけさん
幼少期
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精霊に人間の常識は通じない

 法王が動くのはもっと先かなと思っていたら、フリックが連れて帰ってきた。

 何をどう言いくるめて連れて来たのか分からないが、青ざめている法王と高位神官が数名お付きで来ている。

 応接室まで足を運び、扉が開いたと同時に法王と高位神官達が一斉に土下座した。

「この度は、本当に申し訳なく謝罪しても許されないとは分かっておりますが、どうかどうか平にお許し下さいませ」

と声を揃えて言った。

 ウルセェなと思いながら、土下座する彼らを放置してフリックに引かれた椅子に座る。

「大まかな話は、うちの者から聞いているかと思います。詳しい説明を致しますので、お掛け下さい」

 さっさと座れカスと遠回しに言って土下座を止めさせて席に座らせた。

 私が何を言うのかと、戦々恐々としている彼らに時間が勿体ないので単刀直入に切り出した。

「先日、私に対し聖女の地位剥奪と暴行をした神官がいます。暴行と言っても、私の肩を思いっきり掴んで痣を残しましたの。その時、身体についた痣ですわ」

 パンパンと手を叩くと、メアリーがスッと写真を差し出してくれたので一枚ずつテーブルの上に並べた。

「ご存じかと思いますが、アングロサクソン家が開発した撮影機で取ったものです。日付と私の顔がちゃんと写ってますでしょう。今は、消えておりますが痛かったですわ」

「本当に申し訳ありません!!!」

 ガバッと頭を下げる法王以下省略を見ながら、私はトントンと指で机を叩きながら言った。

「正直、貴方達の謝罪は何の価値もありません。ああ、誤解なさらないで下さいませ。ユーフェリア教会や貴方達を否定しているわけでもなく、貶しているわけでもありません。精霊達から見れば取るに足らないと申し上げたいのです」

「そ、それは…どういう意味で……」

「そのままの意味ですわ。確かに聖女ユーフェリアは、世界滅亡の危機を救ったという偉業をなしたのは事実。それを笠に着るのは、お門違いで御座いましょう。昔は精霊の言葉を聞くことが出来た人が、今は何故彼らの声が聞こえないのか。それは、人が傲慢になったからですわ。人が精霊を自ら遠ざけたのです。私は、精霊が見え彼らの声も聞こえます。他種族を虐げたことを立腹しているのです。そして、今回の一件で不満が爆発して精霊が回復魔法を使えないようにしたのです。王都だけではなく、この国全土です」

 ガタガタと震えながら、縋るような目で私を見る法王が重い口を開いた。

「どうすれば……どうすれば…精霊様の、怒りは静まるのでしょうか」

 絞り出すような掠れた声に、私はニッコリと笑みを浮かべて言った。

「私が今から申し上げることを全て飲めば精霊は許してくれるそうですよ」

 ホッと安堵した顔は、続けて言った言葉に固まった。

「一つ、種族問わず助けを求めた者に対し回復魔法を使う。一つ、一回の回復魔法を掛ける場合は庶民でも払える金額に設定すること。下級回復魔法は銀貨三枚・中級回復魔法は銀貨五枚・上級回復魔法は金貨1枚とします。一つ、救いを求める者たちに不適切な金銭を要求しない。一つ、寄付金を強要しない。一つ、鑑定は無料で行う。この五つのどれか一つでも違反した場合、その者は一生魔法を使うことは出来なくなります。今回の騒動の一件は、全て嘘偽りなく公表致します」

「そんな!! それは、あんまりです!」

「至極真っ当だと思いますが。これでも精霊達は、譲歩してくれたのですよ」

「事が公になれば、ユーフェリア教会の威信が地に落ちてしまいます! 教団が維持できなくなります」

「精霊達には関係のないことです」

 バッサリと切り捨てると、彼らはぐうの音も出ないのか黙りこくってしまった。

 私は、紅茶を飲みながら彼らの返答を待った。

 精霊たちが、殺っちゃう? と物騒なことを言い合っているのは精神衛生的にも聞こえなかったフリをしておこう。

「遅かれ早かれ、この度の件は王家の方々の耳にも届きますわ。下々の者ですら知っていることを王家の方がご存じないとお思いで? あの時、私以外に説法を聞き一部始終見ていた方が沢山いらっしゃったのですよ。揉み消せば印象は更に悪くなります。英断を」

 ニッコリと笑みを浮かべて言えば、長い沈黙の後で是という言葉を引き出した。

「では、嘘偽りなく声明を出して下さいね。私の伝でかわら版の編集者がおりますの。勿論、取材受けて下さいますよね? 教団も風通しが良くなりますよ。フリック、法王様達を送って差し上げて」

「畏まりました」

 フリックに促され、部屋を後にした彼らを見送って私はハァと大きなため息を吐いた。

「あー、肩凝った。メアリー、ユリアにいつもの編集者に連絡取ってかわら版の記者を教会へ行かせるように手配して。書状を書くから持たせなさい」

「畏まりました」

 サッとどこから出したのか、紙とペンをテーブルの上に置きメアリーは下がった。

 今後の事を考えると憂鬱だなぁと思いながら、紹介状とは別に父へ報告書を書き上げた。

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