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お前は、ヒロインではなくビッチです!  作者: もっけさん
幼少期
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聖女降板?

 人と魔族が、隣同士で生きた古の時代。

 アースフェクトには、五つの種族が存在した。

 膨大な魔力を宿し悪の限りを尽くす魔族。

 自然と共に生きるエルフ族。

 野生と共に生活している獣人族。

 神との伝令役であり、世界のバランスを預かりし精霊族。

 非力故に知恵を使い生き抜いてきた人族。

 六代目の魔王により、世界は滅びの危機を迎える。

 魔族と守護する魔物以外の種族を根絶やしにすると宣言し、宣言通りに蹂躙した。

 世界は滅亡の危機に瀕し、時の神クロノスが人族であるユーフェリアに加護を与え聖女とした。

 ユーフェリアの元にエルフ族・獣人族・精霊族も集まり、彼女は魔王を打倒し瘴気で満ちた世界を浄化して消えた。

 後にユーフェリアの意思を継いだ弟子が、教会を設立し彼女は神となった。



 聖書の一節を読み上げる神官に、欠伸を噛み殺しながら説法を聞く。

 時計を見ても、ちっとも進んでいない。

 退屈だと思うと時間が遅く感じる。

「女神ユーフェリア様の名のもとに人々は平等なのです」

 そう締めくくる神官に、アホくさっと悪態を吐く。

 この手の話は、勝った方が都合よく書いているから信用ならない。

 魔王が何を考えて他の種族を根絶やしにしようと思ったのかが気になる。

「神官様、ユーフェリア様の前では人々は平等だと仰られましたが他の種族は平等ではありませんの?」

「リリアン様、それはどういう意味でしょうか?」

「そのままの意味ですわ。人間は平等でも、獣人族やドワーフ族、エルフ族などの多種族も平等なのでしょうか? と伺っておりますの」

 私が上げたのは一例ではあるが、人の他に多種多様な種族が居る。

 種族の壁を越えて混血した者もいるだろう。

 彼らの扱いは、平等ではないのかと問えば愚者を見るような目で神官は言った。

「お戯れを。種族の頂点に立つのは人です。神に近い精霊は別としても、それ以外は野蛮で知能もない。ユーフェリア様のおこぼれに預かっただけの些末な存在です」

 この目は、前世でよく見て来た目だ。

 親や学校の威光を自分のものと勘違いしている馬鹿の目だ。

「聖女教育とは名ばかりの、種族差別のカルト教団でしたのね。私は、そういう差別は好みませんの。貴方のお話に青銅貨一枚の価値もありませんわ。ユリア、今後は教会関連のものは一切取り次がないで頂戴」

「はい」

 私が席を立つと、神官が肩を掴んできた。

「待ちなさい! 貴女は、聖女見習いとして勉強をする為に態々この私が時間を割いているのです。その態度は、神に冒涜するものです。悔い改めなさい」

 指が肩に食い込んで痛い。

 この男、本気で頭と胴を真っ二つにしてやろうかしら。

「何を悔い改める必要があるのですか? 聖女ユーフェリア様が偉大な方だということは分かりました。ですが、それを利用してやりたい放題している教会の説法は聞くに堪えないと判断したのですわ。他種族を見下し差別している時点で、私の中での優先順位は最下位でしてよ」

「ユーフェリア教会を馬鹿にするのであれば、抗議させて頂く!! 聖女の称号も取り上げますぞ」

「では、私も貴方が掴んだ肩に痣が出来たことを全力で抗議致しますわ。後、聖女の称号なんて要りません。何の魅力も感じません。取り上げると言えば、私が大人しく言う事を聞くとでもお思いで?」

 スッと目を細めて睨むと、神官は私の肩から手を離した。

 私は、ハンカチで肩を払いわざとらしくユリアにハンカチを投げ渡した。

「では、私は聖女の称号を返上した一貴族ということになりますので失礼します。後、正式に肩の痣については抗議致しますね」

 淑女の礼をし、ニッコリと笑みを浮かべてユーフェリア教会を去った。

 この後、治癒魔法の練習だったのだが聖女でなくなった私には関係ない話である。

「この空いた時間を絵本の打ち合わせに当ててくれない? 時間が勿体ないわ」

「リリアン様、流石にあれは拙いですよぅ。本当に抗議があったらどうするんですか?」

 子犬の様にぷるぷる震えているユリアに、私はハァと大きな溜息を一つ吐いた。

「こっちも抗議するんだからお相子でしょう。ガタガタ言うならお布施を全カットするだけよ。選民意識の高い教会に用はないのよ。使い道もないし。嫌がらせに治癒院でも開いてやろうかしら」

「……お嬢様、どこの悪役ですか」

「悪役上等! 私、全力でユーフェリア教会を潰したい気分よ。これで晴れて聖女から解放されたのよ! もう、二度と教会に行く必要は無いわよね」

 上機嫌でスキップする私に、

「いえ、七歳になった子供は教会でギフトを調べる決まりがあるので無理ですよ」

とユリアから無情な一言が告げられた。

「Noooo!!」

 ムンクの叫びよろしく、私は悲鳴を上げていた。

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