魔力不足を補うには
カードゲームやリバーシを流行らせたり、レース作家にドレスを依頼して王妃に送ったりと着々と小銭と自分の足場を固めているリリアンです。
前世の知識を生かしてパンティーやブラジャーを作り、出来が良かったものを王妃に贈ったよ!
王妃は、寵姫とは別の意味で美人なのでエロスを最大限に生かせるものを誂えましたとも!!
スパイダーシルクの養殖に成功したのが、ここ最近での功績かもしれない。
私の資産だけで、国家予算の1%はある。
個人的にはナリス国の魔鉄道に、凄く興味がある。
是非とも、その知識を持って帰って我が国の公共事業にしたいものだがどうするべきか。
「道路を整地して道を造るのも良いけど、やっぱり魔鉄道自体が気になる。実物を見てみたいわ」
「人間は、鉄の塊に興味があるの?」
「鉄の固まりじゃなく、魔鉄道だよ。ウンディーネ」
私の机の上に寝そべりながら尻尾をパタンパタンと叩く姿は猫そのものである。
目つきが悪いのは変わらずだが、ツンデレを確立させたようで一部の使用人には人気がある。
「私達からすればどちらも一緒よ。それで、鉄の塊を見てどうするのよ」
「魔鉄道ね。そのアイディアを丸っと頂いて、国家事業にすれば大きなお金が動くでしょう? 国が民を雇いお金を落とす、雇われた民は国家事業だから安心して働け安定した収入が得られる。衣食住が揃えば購買意欲が増すから、経済が回るのよ」
ざっくりと説明したら、ウンディーネはふーんと気のない返事を返した。
「人間ってつくづく変なものを考えるわね」
「楽するための道具を考える天才なのよ。ウンディーネだって、人の手が加わったもの好きでしょう? お菓子とか特に」
くるっとペンを回して指すと、ウンディーネはバツが悪そうな顔をしてそっぽを向いた。
「確かに好きだけど……」
「人は貪欲だからねぇ。欲望に忠実なの。没頭し過ぎて一つのことに生涯をささげる人もいるくらいだし」
「人って分からない生き物だわ」
「まあ、私だって精霊のことは分からないからお互い様じゃない? 話は変わるけど、魔力補充の件はどうなっているの? この世界で魔力に頼らない方法に移行するのは、ほぼ無理があるわよ」
元日本人の私から言わせて貰えば、発達し過ぎた科学はもはや魔術と言っても良いと思う。
それくらい前世の科学は凄かった。
しかし、それ故に代償も大きなものだと言える。
環境の汚染・人口増加・自ら作り出した人工知能の脅威。
上げるときりは無いが、全て自分たちが楽することを追求した結果の末路が滅びである。
まあ、地球が亡ぶ前に私は死んだのでどうなったかは知らないが。
多分、あのまま時が経てば数年で人類の総人口は1/3まで減っただろう。
「精霊定例会議では、次に召喚される者の魔力を奪うことまでが決定されたわ」
「この世界を救えるほどの魔力ではないでしょう?」
「そりゃそうよ。創造神も頭を抱えているわ」
「他の世界の神様に融通して貰うとか出来ないわけ?」
「それが出来ていれば苦労しないわよ……はぁ…」
神様同士が険悪なのか、それとも付き合い自体ないのか分からないが、ウンディーネを見る限り難しいのだろう。
「神格に差があるなら頼み事は難しいかもしれないけど、私の転生前にいた日本の神様なら何とかしてくれるかもしれないよ。色んな神様がいるけど、気の良い神様が多いし」
荒ぶる神様も比例して多いけどとは言わないでおこう。
「その神様とコンタクトを取る事って出来るの!?」
「私自身はないけど。神職に就いている人でも、神託を受けるのは稀だよ。私が生まれ変わった後、日本自体が存続しているか分からないし」
世界情勢がきな臭い状況なのに、GHQの戦略で骨抜きになった日本人は危機感皆無の馬鹿だったからなぁ。
AI後進国とも言われていたし、落ち目の日本が生き残れているかが不安である。
「その神様を紹介してもらうってことは出来ないの?」
「ド庶民が、神様を紹介して貰おうとか烏滸がましいわ! あ、でも…人口増加と長寿になったからあの世とこの世のバランスが保てなくなっているかもしれない。そう考えれば……うん、いけるかも!!」
私は、ウンディーネにニンマリと笑みを浮かべた。
のちに、奴曰く極悪人の笑みだったと言わしめた。




