ウンディーネはストーカーでした
「ギャーァァァアア!!!」
「五月蠅い!」
ノームの悲鳴に思わず手が出てしまった。
バシッとノームの頭を叩きベッドに沈めて、時計を見るとまだ6時ではないか。
再度寝るには微妙な時間に叩き起こされた。
「ノーム、逆さづりにされたいの?」
「ななななな、なんでここにウンディーネがいるんじゃ!!」
「昨日、あんたを訪ねて来たよ。暫く、滞在するってさ」
ウンディーネがノームに恋心を抱いているのは隠して、居座るとだけ伝えたらヒーッとか細い悲鳴を上げている。
「今すぐ追い返せ!!」
「いや、大精霊相手に人間ごときが命令出来んでしょう。何でそんなに怯えてるの? そっちの方が気になるわ」
ノームの必死の形相に首を傾げると、
「ワシを追い回すこと数千年!! 見る度に豚の様に肥える姿は見るに堪えん」
「ノームも人の事言えないじゃん」
おっさんだし、下っ腹が出てるし。
そう指摘したら、プンスコ怒っている。
「ワシは、種族的にそういう体形なんじゃ! ワシの好みは、ボンキュボンのナイスバディな美女であってブタじゃない」
ウンディーネを指さしながら断言するノームの脳天に、思わずチョップを落とした。
「痛ってええ」
「女性に対して失礼なことを言った罰です」
能面のような顔でノームを見下ろすと、
「本当のことじゃろうが!」
と喚く喚く。
「本音と建て前っつー言葉があるだろうが!! 女性を貶めるような言葉を吐くんじゃありません! 教育的指導です」
もう一発食らいたいかと手を上げようとしたら、黙った。
「ウンディーネは、私がノームを誑かしたんだと思っているみたいで誤解が解けるまで滞在する予定らしいよ」
「そこは断れ!」
「大精霊相手に断るとか命知らずなこと出来ないわ。無理無理」
「お前がワシの立場だったらどう思う。何千年も付きまとわれるんじゃぞ」
ノームの口ぶりからするとウンディーネは、多分ストーカーなんだろう。
「ワタシ、オンナノコナノデワカラナイワ」
片思いしている相手からの拒絶は辛いものがある。
精霊の恋愛事情に首を突っ込みたくないし、ノームが困っていようが私には関係ない。
「主じゃろう。何とかしろ!!」
「無理よ。だって契約してないもん」
契約してても、ウンディーネをノームに嗾けるのもありだな。
一種の意趣返しになるし。
「薄情者!!」
ギャーギャー騒ぐノームの声に、ウンディーネが目を覚ました。
「ノーム! 会いたかった」
「ワシは、会いたくなかったわ!! 寄るな! あっちへ行け!!」
トカゲとおばちゃん精霊の追いかけっこを傍目で見ながら、今日も平和だなーと現実逃避をしたのだった。




