DVの証拠固めにいそしみました
私が顔を腫らして帰宅したら、屋敷の者たちに酷く驚かれた。
まあ、頬を腫らし唇の端が切れているのだから驚くのは仕方がない。
「リリアン様、その頬はどうなさったのですか!?」
「……言えないわ」
「言えないとは……。誰かに乱暴をされたのではありませんか!?」
「性的暴行は無いから安心して頂戴。これを見て」
無残に壊れたチェキもどきを見せると、周囲にいたメイドや執事が息を呑むのが分かった。
「殿下に送った品ではありませんか」
「こういう事よ。私が下手なことを言えば、家に迷惑が掛かるの。ここまで言えば分かるわよね?」
「それは、殿下の指示ですか」
「言えないわ」
私の歪な笑みに、彼らは悟ったのだろう。
「分かりました。まずは、腫れた頬を治しましょう」
「医者を呼んで頂戴。診断書も書いて貰うから」
私の言葉に、察してくれたフリックが悪どい笑みを浮かべて頷いた。
「抗議はされますか?」
「しなくて良いわ。脅されているんだもの。それより、これを直さないとね」
折角作ったチェキもどきが、無残な姿になっているのは忍びない。
「直せるのもなのですか?」
「出来るわよ。ノームくんもいるし」
一旦、残骸をインゴットに戻して貰いパーツ毎に作り替えてもらう必要がある。
「お医者様が来たら、部屋に通して。それまで籠ってるから」
「お嬢様、せめて氷で顔を冷やしましょう」
「嫌よ。バカが仕出かした事の重大さを誇張してやるつもりなんだから冷やして怪我が軽くなったらダメージを与えられないじゃない」
女の子に手を挙げた馬鹿には、キッチリそのツケを払って貰うつもりだ。
この顔で同情心を集めるんだから、絶対冷やさない。
その結果、数日顔が腫れていても我慢できる。
最低でも三日後に登城するまで派手に腫れていて欲しいものである。
その後、フリックが手配した医者が到着し診察を受けた時、同じように絶句された。
高位のご令嬢が顔を腫らすなんてことは、早々にないからね。
治癒魔法をかけるかと言われたが断り、適当な理由を付けて塗り薬を処方してもらった。
勿論、この事は父に報告済みである。
しかし、脅されて口止めされているので父としても腸が煮えくり返っている頃だろう。
三日もすれば腫れは若干引いたが、口の端は切れているので痛々しい姿である。
出会う人に「私から話すことが出来なくて~」を繰り返しておいた。
私に口止め出来る人間は限られている。
祖父・父・母は領にいるので、王都に居る家人が暴力を振るったとは考えにくい。
家庭教師である者に疑いが向いたが、私を口止め出来るほどの傑物はいないので消去法で王族関連となった。
やはり、そこで上がってきたのはアルベルトの存在である。
口を開かなくても、勝手に憶測してくれるので有難い。
もし王妃と友好な関係を築いていなかったら、この一件を王妃の仕業と押し付けようとするものが出てきただろう。
若干腫れがが引いた顔を晒して登城したら、蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
もともと、アルベルトに殴られた後に近衛兵と鉢合わせしているので話題にはなっていたと思う。
しかし、実際の暴行の酷さを目の当たりにすると真実味を帯びてくるものだ。
案の定、王妃に捕まり洗いざらいゲロさせられました。
その時の、王妃の顔は般若である。
アルベルトがその後どうなったのか想像は容易い。




