婚約破棄のネタがザクザク溜まってます
本当にアルベルトの嫌われっぷりは凄いね。
第一継承者ということもあり、横暴っぷりが酷い。
一方、私は脈々と人脈を広げている。
週に2回城に行かねばならないのは苦痛なのだが、商機が様々な所に埋没しているので発掘するのが楽しくて、アルベルトが私を蔑ろにするのを良いことに王妃にチクっては城の中を色々と見て回っている。
今日の私の護衛は、見合い写真の件を持ちかけた団長殿である。
「済みません。エヴァン少佐もお忙しい身なのに……」
少し困ったようにエヴァン・ニコーに謝罪した。
このエヴァン・ニコーは、三十二歳と若いのに少佐というエリート街道を突っ走っている話題の人物だ。
野郎共からは『兄貴』と慕われているが、強面で厳ついので女性には不人気で婚活も捗らず今まで恋人すらいなかったらしい。
男性の適齢期が、十八歳から二十五歳の間と言われている。
それを越すと、訳あり物件とみなされるという。
何とも世知辛い世の中である。
「リリアン様の護衛は競争率が激しいんです。雲の上のような方なのに、私のような者にも分け隔てなく付き合って頂けて我々兵士達にとても人気があるんです。リリアン様は、面白いことを見つける天才でもあるので、護衛出来てとても光栄です」
「そう言って頂けるとありがたいです。少佐も結婚相談所を使って頂きありがとう御座います。良い方と巡り合えましたか?」
「はい、お陰様で。こんな私でも可愛いと言う奇特な女性がいましてね。彼女は商家の娘さんなんですが、正式にお付き合いを始めたんです」
婚約者の事を思い出したのだろう、エヴァンの顔がにやけている。
恋愛してるなー。
リア充爆発しろ!
心の中で毒づきながら、話をすり替える事にした。
「まあ、おめでとうございます。ニコー様は、結婚秒読みなんですね。奥様が妊娠された時には、是非絵本を送らせて下さいませ」
「絵本って、巷で噂になっている本のことですか?」
「はい。まだ大量生産するほどにないのが残念ですが、子供達に文字を教える教材としては良い物ですよ」
「そんな高価な物を頂くなんて恐れ多い」
大きな巨体が恐縮する様は、見ていて面白い。
私は、カラカラと笑いながら言った。
「今は高値で取引されていますが、時間が経てば一般家庭にも普及するくらいにはなると思います」
私のターゲットは、あくまで庶民中心だからね!
貴族相手に金を巻き上げるより、貴族の何千倍もいる平民を相手にした方が実入りは良い。
「最近、遊具を作ったんですよ。一勝負お相手して貰えませんか?」
「遊具ですか?」
「アルベルト様と一緒に遊んで少しでも息抜きにと思ったのですが、あの調子で……」
言わずもがなアルベルトからは絶賛罵倒&放置中なのです。
アレと一時間過ごしてこいと言われたら、家に戻ってスー夫妻の鬼教育護身術講座を受けた方がマシである。
一人でいると何かと同情心を買えるので、私的には美味しいシチュエーションである。
着々と婚約破棄のネタを提供して貰っているので本当にありがたや~。
アレと婚約破棄したら、別の候補者が出てくるのでギリギリまで利用させて貰おう。
私は上機嫌で王城を探索しつつ、需要がありそうな物をリサーチしていた。




