六歳の誕生パーティー2
新作の化粧品や香水で盛り上がりました。
王子や陛下は、ガン無視です。
少しお疲れとのことで、急遽椅子を用意して女子だけのティータイムが開始した。
一応招いているのは私ということになっているので、頑張って色々と売り込みました。
主に趣向品やドレス、身に付ける宝石などである。
「リリアン嬢は、様々な分野に手を出されていますのね」
「ええ、殿下がアレですので……。そうせざる得ないのですよ」
一年あったのに、相変わらずのボンクラぶりに落胆しかない。
思いっきり溜息を吐いてやりました。
王妃様もアルベルトの愚行の数々には、頭を悩ませているようだ。
「王妃様と陛下の仲がお宜しいようで、私はとても嬉しく思っていますの。そう言えば、最近あまり食事をなさらないと聞いて心配しておりましたの。もしかするとご懐妊されているかもしれませんわ。うちの腕利きの医者を派遣致しましょうか?」
「私が陛下の子を…? いえ、でも……」
「思い当たることがあるのなら、確認した方が宜しいかと進言致します。何かあっては困りますゆえ。私は、正当な王位継承者は王妃様のお子だと思っておりますの。是非とも、素晴らしい政務者に育てて頂きませんと。飴と鞭でお育て頂くのです」
「……貴女、アルベルトの婚約者でしょう。何を考えているのかしら」
「何も。ハッキリ申し上げます。アレは、王の器ではありません。この一年、お見合いで罵倒され贈られてくる品は適当に執事が見繕ったであろう物ばかり。手紙の一つもありませんの。いくら政略結婚とはいえ、本音と建て前は使い分けるのは常識ではありませんこと」
あれを次期王に据えるなら、私は逃亡する。
間違いなくな!
アンダーソン侯爵夫人から王妃との褥の回数が増えたという報告も聞いているし、盛り上がっている二人がエロいことをしようが関係ない。
正室とガンガンやりまくって、新しい王子を生んで欲しいものである。
「アンダーソン夫人から人となりを伺っておりましたが、本当に考えているなんて思いもしませんでしたわ」
「無能に嫁ぐ気はないのですよ。矯正出来るのであれば、全力で取り組む気はありますわ。しかしながら、当人があれですので無理でしょうねぇ」
無能で無知で傲慢な王子を遠くで眺めながらボソッとこぼした私の本音に、王妃は上品な笑みを浮かべて言った。
「貴女の思惑に乗るのも一興。明るい未来が待っていそうね」
「そのためには、色々と協力関係になって頂きたいと思います」
フフフ、ホホホと扇子で口元を隠しながら笑う姿は狸と狐の化かし合いをしているようだ。
「そうそう、化粧品ありがとう。あれを使い始めて、肌の調子が良くなったの」
「王妃様はお美しい方なので今も十分お美しいのですが、我が家の直伝のフェイスマッサージを受けてみられませんか? 化粧水などの消費量は多いですが、今よりも十歳は若返りますよ。後、王妃様は淡い色よりも濃い色が似あいます。濃いドレスを選ぶなら、口紅の色も落ち着いた色を使われる方が映えますわ」
伊達に独身のおばちゃんはやっていない。
これでもバリバリのキャリアウーマンだったのだ。
着る服には気を付けていたし、休日でもお洒落は欠かさなかった。
カラーコーディネーターの資格を取っていて良かった。
後で何が役立つか分からないものね!
「リリアンと話しているだけで、とても参考になるわ。そのドレスも宝石を意識して敢えてクラッシックドレスで纏めるとは上出来でしてよ」
「ありがとう御座います。先ほどお話をしていたドレスのラフ画とエメラルドの原石ですわ」
パンパンと手を叩くと、アリーシャとユリアがスッとアンネローゼの前に原画と原石を用意した。
「ユリア、見本もお持ちして頂戴」
「かしこまりました」
アンナは、私の言葉の先を読んでかスッと宝石加工の途中で出たクズ石を集めて作ったネックレスやブレスレットをベロア調のトレイに乗せてテーブルの上に置いた。
「まあ! これは、斬新なデザインだこと」
大体の貴族は宝石の大きさは最大限まで生かしているがカットについてはあまり考えられていない、こちらで用意した宝石は彼らが持つ宝石よりもカット技術が進んでいるため光に当てれば様々な輝きを放ってくれる。
綺麗なものを集めて着飾りたいのは、どこの世の女性でも共通していることかもしれない。
「気に入った物があれば、懐妊祝いに贈らせて頂きますわ」
「貴女の言葉を聞いていると、私が懐妊すると言っているようで不思議ね」
「フフフ、私の願望も入っておりますので。先日、母が弟を出産しましたの。良き友人として共に歩んでいける関係が望ましいですわ」
「その時は、是非とも宜しくね」
お互い警戒心は解いていないが、信頼に値する関係と認識し合えただけで誕生パーティーをした甲斐はあっただろう。
あのバカ王子とは何の進展も見せず、その父親である陛下に関しては取るに足らぬ愚王のレッテルが私の中で貼られた。




