六歳の誕生パーティー1
内輪だけのパーティーなのに、百人弱の参加者に圧倒されそうです。
今すぐ、部屋に帰りたいと思った。
室内のパーティーよりも、天候が良いなら屋外のガーデンパーティーにしたらと言ったかいがありました。
百名弱の招待客をサロンに押し込むのは無理!
即席で作られた檀上にエスコートをされて上り、ガリオンは檀上にいる父に私を渡して降りて行った。
「この度は、リリアンの六歳の誕生日パーティーにお越しいただきありがとう御座います。リリアン、皆さまに挨拶をしなさい」
「高所からの挨拶で相済みません。私、リリアン・フォン・アングロサクソンと申します。本日、私は無事に六歳の誕生日を迎えることが出来ました。若輩者ですが、皆さま方ご指導ご鞭撻のほど宜しくお願いいたします。ささやかでは御座いますが、パーティーを楽しんで下さいませ」
ドレスの裾を持ち上げカエルスクワットをして、壇上を降りる。
拍手と年齢にそぐわぬ挨拶に称賛の声が上がっているが、壇上から国王一家を見ると婚約者殿は凄く不機嫌そうな顔をしている。
嫌々連れて来られたようだ。
「堅苦しい挨拶は、ここまでとし我が家のコックが腕によりをかけて作った食事を堪能して下さい」
立食パーティーなので、一口で食べれるように工夫を凝らしてる。
手掴みは流石にお行儀が悪いとのことで、爪楊枝に刺して食べれるようにした。
爪楊枝は竹を使っている。
成長が早いからね!
給仕する人に欲しいものを言えば取り分けてくれるように指示を出している。
箸の汎用性を説いて、給仕の際に箸で取り分けて貰うようにしたら異文化に興味を示す人で話題は賑やかになった。
私は、王族に挨拶をするべくキラキラしい一行のところへと向かった。
陛下と王妃と第一王子が来ているが、愛妾はお断りした。
来たら絶対に王妃だけにしか卸していない品を要求しそうだからだ。
「国王陛下、王妃殿下、アルベルト殿下、この度は私の誕生パーティーにお越し下さりありがとう御座います」
カエルスクワット再び+笑顔なので、被った猫がずれ落ちないか心配だ。
「六歳になるのか。早いものだな」
「はい、日々健やかに過ごさせて頂いております。食事やお酒も珍しいものをご用意させて頂きました。是非、楽しんで頂ければ幸いに御座います」
「木が刺さった食べ物を食べるなんて野蛮だな!」
「アルベルト殿下、それは木ではなく爪楊枝というもので御座いますわ。立食パーティーなので、手軽に手を汚さず食べれるものをご用意致しました。どれも一口で召し上がれるようになっておりますの」
「お前の家は、フォークとナイフも使わないのか? マナーがなってないな」
こいつ、ぶっ飛ばしてやろうかしら。
文句をつけないと気が済まないのか、口を開けば暴言の数々に私のこめかみに怒りマークが沢山浮かんでいる。
「アルベルト殿下のように異国の料理は受け入れがたい部分もあるかもしれませんが、それを口に出すことはご自身の品位を下げますわ。他国の文化を尊重し、学ぶことも大切ですよ」
外交の時に他国のことを何一つ知らないと恥をかくのはお前だぞと暗に忠告するが、
「ハッ、野蛮なことには変わりないだろう」
と一掃されてしまった。
「そう仰るのなら食べなければ宜しいのですわ。王妃様、アンダーソン侯爵夫人から最近サッパリとした食べ物をお好みになられると伺っております。こちらの白身魚のカルパッチョホワイトヴァルサミコの香草ジュレ添えがおススメですの」
スプーンに盛られた一口サイズのカルパッチョを皿ごと手渡すと、彼女は私を品定めするように見た後、口を付けた。
手を口に当てて、カルパッチョを口に含みもぐもぐと食べる彼女を見ているとカッと目を大きく見開き口を開いた。
「なんて新鮮な魚なの。泥臭くもなく淡泊な味わいなのに、酸味の利いたソースが魚によく合うわ。これなら幾らでも食べれそう」
「それは宜しゅう御座います。最近、食欲が無いとアンダーソン侯爵夫人から伺っておりまして心配してましたの。匂いのきつい食事もお辛いと伺ってますので、王妃様のお体に合わせて匂いが気にならないように改良しました。サンドイッチなども御座いますので、食べれそうなものをお食べになって下さいませ」
「まあ、気を遣わせてしまったわね」
「いえ、私が無理にお誘いしたので配慮するのは当然のことかと」
ニコニコと笑みを浮かべながら王妃上げ殿下と陛下下げを堂々としてやった。
不敬と言われようとも結構!
糞王子の生産者は要らんのだよ。
「リリアンのネックレスも綺麗ね。どこで買ったのかしら?」
「これは、我が家のお抱え細工師に依頼して作って頂いたものです。バレッタと同じ石から作られておりますの。王妃様には、ガーネットよりもエメラルドがお似合いになるかと思います。石やデザイン画がいくつか御座いますので気に入った物を作らせますわ」
「それは楽しみだわ」
王子達を放置して、キャッキャウフフと女子トークをしていたら母も参戦して完全に女子トークである。
野郎どものことは知らん。
父が適当にあしらうだろう。




