表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お前は、ヒロインではなくビッチです!  作者: もっけさん
オブシディアン領で労働中
178/182

エリザベート・バーバリーの苦悩2

 王宮の家庭教師は、一体何をやっているのだ!

 アルベルトの態度・言葉遣いは、王族として考えられないくらいに酷いものだった。

 リリアンが、早々にアルベルトに見切りをつけた理由も納得できる。

 民の模範となる王族が、このようなザマでは権威も地に落ちたも同然だ。

 入学まで残された時間は少ない。

 何と言う無茶振りか。

 あの愚王と寵姫の子から生まれた子は、やはり愚かな部分を存分に引き継いでいたようだ。

「一体、王宮で何を学ばれてきたのかしら……。王族は、民の模範となる存在ですよ。言葉遣いも、態度も全くなっておりません。学園に入学される前に、最低限のマナーを身に付けて頂きます。宜しいですね?」

「家庭教師は、十分出来ていると言っていた。今更マナーを習う必要はない」

 フンッと嫌そうに顔を顰めるアルベルトの手を扇子でピシャリと叩く。

「王室の家庭教師も質が随分と落ちたようですね。まあ、あの陛下(かた)を見れば納得せざるを得ませんが。ここで過ごす以上、わたくしが殿下のマナー講師です。異論は認めません。分かりましたね?」

 アルベルトを見下ろしながら高圧的に言い放つと、それでも反論しようとする彼の口をリリアンが頬を張り飛ばして止めた。

「婚約者が失礼なことを申しました。この度は、お忙しいなか遠路はるばるお越し頂きありがとう御座います。放任主義なご両親からの愛情を受けて健やかに育ったため、聊か常識というものが抜け落ちているので御座います。流石に、このような有様では外に出すのは問題が出るかと思いまして、恥を忍んでマナーを一から学んで頂くために信頼のおける貴女を呼びました。入学までに時間があまり残されておりませんので、ビシバシ鍛えて下さいませ」

 頬を張られて床に座ったまま呆然とするアルベルトなど眼中にないリリアンは、サクサクと今後の予定を決めている。

 アルベルトだけでは逃亡の恐れがあるため、不本意ながら復習も兼ねてリリアンや彼女の従僕たちも講義に参加して貰った。

 案の定、不意打ちでリリアンは直ぐにボロを出した。

 少し離れていただけでこの体たらく。

 鍛え直しも視野に入れつつ、アルベルトを容赦なく扱く傍ら、リリアンの復習を抜き打ちテストしては、ダメ出しをする。

 アルベルトが、アングロサクソン領に一時滞在している間に、私の扇子のコレクションが両手を超える量が廃棄処分するはめになった。

 それでも、何とか最低限の礼儀とマナーを習得出来た事だけが奇跡だと思う。

 アルベルト達が王都に戻るのを機に、私も講師としての契約も終了となり、これで顔を合わせなくて済むだろうと安堵していたのに。

 アングロサクソン家から届いた手紙の中身を見て、二度ある事は三度あるという諺を思い出した。

 学園でアルベルトが身分の低い令嬢と不貞行為を働いているという噂が耳に入った時は、卒倒しそうになった。

あの馬鹿娘(リリアン)は、一体何をしていたのよぉぉお!」

 マナー以前にアルベルトに倫理観を教えるのが先決だったか、と頭を抱えて数日部屋にありったけの罵詈雑言を並べ立てて呪詛を吐いたのは記憶に新しい。

 これは、もう一度アルベルトのマナー講師として招集される可能性があるだろうと予測し、私は仕事をセーブして様子を見ていた。

 案の定と言うべきか、リリアンの父に国王代理の権限を使って、学園のマナー講師兼アルベルトのお目付け役を任命されてしまった。

 命令である以上、断るわけにはいかないので、渋々引き受けた。

 そして、1年ほどの再会に絶望した。

 アルベルトは元に戻っているどころか、更に退化していた。

「リリアンは、何をやっていたの!!」

 お目付け役がいない状態に発狂しそうになる私に、リリアンの侍女が無言でスッと手紙を手渡してきた。 

 私は、物凄く見たくない欲求にかられつつも、意を決して手紙を開ける。

 中に書かれていたのは、アルベルトの再教育の依頼だった。

 顔と見えない場所への体罰はしても構わないというお墨付きに、断るよりも堪った鬱憤を晴らす道具として有効活用させて貰うことにした。

 結局のところ、アルベルトのお守りを押し付けられたことは大変遺憾だが、何かあったら責任はリリアンに取って貰おう。

 私は、アルベルトを一人前の貴公子に育てるべく、頑張って教育を施した。

 なのに、アルベルトの仕草や知識は、まさに女子でする会話ばかりだ。

「私が居ない間に、一体彼に何があったの……」

 女性化しつつあるアルベルトに、私はこめかみに浮かぶ青筋を揉み解しながら大きな溜息を吐いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ