今後の方針
アルベルトとその側近、および学園長の処分を全校生徒の前で決めて実行させて頂きました。
まあ、ハゲにしたところでカツラを被せればモデル業に影響はないので大丈夫。
その日の内に領地に戻る予定だったのだが、色んな人に引き止められたので急遽学園にプチ滞在することになりました。
協力者への労いと感謝、そして謝罪行脚をするのに半日も掛かってしまった。
本日の授業は、私のせいでまるっと潰れたことに対しては何のお咎めも無かったのが不幸中の幸いか。
「本当に本気で疲れたわ。たった数ヶ月で元に戻るより悪化しているって、どこから突っ込めば良いのか分からない……」
「それな……」
「否定は出来ない現実が憎い」
私の愚痴にガリオンは賛同し、アリーシャは苦虫を噛み潰した顔をしている。
「目に見えた物理的な制裁は終わったけど、実質的な問題が山積みなのよね……」
学園側に対する責任問題の追及と、ピューレ家に対する訴訟問題。
集団訴訟費用だけでも結構な金額になっている。
それとは別に、アルベルトの醜聞に対する火消し作業。
現時点で婚約破棄ものなのだが、それが出来ないのが悔しいやら腹立つやらで考えただけでも奴の顔を見たら殴りそうだ。
「それで、これからどうするんだ?」
「学園側の責任とアルベルトの愚行の追求は、お父様に丸投げしたわ。お父様のことだから、良い感じに収めてくれるでしょう。領地の方が、わたくしとしては問題が山積みで正直逃げたい」
色んな不正がボロボロと出てきているので、その対処に追われている。
正直、アルベルト如きに関わる時間すら惜しいのだ。
「旦那様が、嬉々として王妃様を追い詰める姿が目に浮かぶぜ」
「言えてる。学園側も、学園長を筆頭に学園長の派閥の人間は全員なんらかの処分が下りそう」
ガリオンとアリーシャは、死んだ魚のような目でどこか遠い目をしている。
当たらずとも遠からずの結果になるだろう。
「あなた達二人だけでは、馬鹿ベルトの抑止力にはならなかったわね。こればかりは、私の采配ミスだわ。次は、こうならないように手を打つから。今回の件で特別賞与を出してあげる。引き続きあの馬鹿を見張ってて頂戴」
ふぅと大きな溜息を一つ吐き、二人を労うと複雑な顔をされた。
「賞与は嬉しいけど、馬鹿のお守りは勘弁したい」
「私もです。リリーがいないと、馬鹿は大馬鹿に退化しますよ!」
酷い言われようだが、本当のことだから訂正も出来やしない。
「今回の一件で身に染みたわ。だから、最終兵器を用意します」
「最終兵器って何?」
「物理的に首と胴体が飛ぶとかじゃないですよね?」
戦々恐々とこちらを見てくるエバンス兄妹に、私はニッコリと笑みを浮かべて言った。
「アンダーソン侯爵夫人を召喚するだけでしてよ」
本当は気が進まないが、アンダーソン侯爵夫人を召喚すれば馬鹿も下手なことは出来ないだろう。
あの人は、王族だろうと容赦なく手が出るからな。
一個人の要請だと断ることは目に見えているので、パパン経由で学校のマナー講師として着任して貰おう。
アンダーソン侯爵夫人の名前に、二人は複雑な顔で納得している様子。
「確かに、あの人なら馬鹿を止められますね」
「容赦ないですし」
「馬鹿には、丁度良い抑止力にはなるでしょう。領地の方が、落ち着けば戻れますから暫くの辛抱ですよ。教育的指導は、今まで通り続行して構いません。馬鹿でストレス発散して下さいな」
最後の言葉は冗談交じりに言うと、二人からとってもいい笑顔が返ってきた。
ああ、彼らも相当ストレスが溜まっているのだろう。
「わたくしは、学園の体制が整ったら直ぐに戻りますわ。その間に、今回の不手際で迷惑をかけた方々と色々お話を詰めなくてはなりません。わたくし不在時でも、代理として二人がきちんと担えるようにして下さいね」
私の笑顔の圧に、二人は冷や汗を流しながら小さく「はい」と返事を返してきた。
アンダーソン侯爵夫人が来るのだから、多少の負担は軽くなったのにと思わなくはないが、今後この二人の成長に期待したいところである。
コレットについては、有能執事が何とかしてくれるだろう。
上手く捕まえて、色々とゲロって貰わないとね!