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お前は、ヒロインではなくビッチです!  作者: もっけさん
エルブンガルド魔法学園 中等部
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エバンス兄妹の受難6

 アリーシャと役割を交代して、コレットが度々休むようになったとヘリオトロープの会のメンバーから聞いた。

 鬼の霍乱か? それとも嵐の前の静けさか? と思っていたが、どちらも違ったようだ。

 アリーシャが爆発して、アルベルトに対しリリアン式で受け答えしている。

 普段は控えめで大人しいアリーシャが、アルベルトが粗相をすれば容赦なくハリセンでシバキ倒している。

 誓約書がある以上は、アリーシャの行動を不敬や暴行と主張することが出来ない辺りざまぁと思ってしまう。

 腹パンくらいは許されるんじゃないかと以前問いかけたら、流石にそこまでする勇気はないとのこと。

 あれだけハリセンで殴り飛ばしておいて、どの口が言うんだとは怖くて言えなかった。

 あの主にして、この侍女あり。

 こちらは、コレットが他の男と浮気している現場を色んな角度から写真を取っていた。

 相手から死角になり、尚且つ顔がバッチリ写るスポットを探すのに苦労した。

「これだけ証拠があれば、大丈夫だろう」

 テーブルに広げた写真は、キス写真や男の手を取って胸に押し当てている写真ばかり。

 スカートに手を入れられている写真も中にはあった。

「しかし、あんなビッチに欲情できるもんなのかねぇ」

 男としての生理現象は理解しているが、ガリオンの好みは年上で胸の大きな美女が好みだ。

 間違っての正反対のコレットに靡くことはない。

 物分かりの良いリリアンなんかは、性教育と称して高級娼館へ放り込んでくれたものだ。

 そこで良い思いが出来たかと勘ぐる奴がいたが、とんでもない地獄が待っていた。

 娼館で働くお姉さま方から、性病の話から妊娠・出産・流産の話、挙句の果てには客への悪口大会にまで発展した。

 性欲を発散させる方法も教わったが、前者の強烈な話しか残っておらず、性交のリクスが大き過ぎることを骨の髄まで植え付けられた気がする。

 リリアンは性教育と称して何度か娼館に放り込む気満々だったようだが、早々にギブアップしてしまったのは良い思い出だ。

 後は、この証拠材料をどう活用するかだ。

 リリアンの判断に委ねられるわけだが、コレットの退場は秒読みだろう。

 そんなことを思っていたら、アリーシャが疲れた顔で帰って来た。

「兄さん、何やってるの?」

「浮気写真の確認」

 そう言いながら、テーブルに広げられた写真を見せると彼女の顔から表情が無くなった。

「……気持ち悪い」

「まあ、それが妥当な反応だろうな。リリアンは、喜ぶと思うけど」

「リリーなら喜ぶでしょうね」

 ガリオンの言葉に、アリーシャは写真から目を逸らし大きな溜息を吐いた。

「後、これも届いたぜ」

 茶色い小包を見せると、アリーシャはパァァアと顔を明るくした。

「チャイルド様とレイス様宛の手紙かしら?」

「それだけじゃないと思うが、取り合えず開けてみようぜ」

 ペーパーナイフを取り出して開封すると、エマ・レイスとキャロル・チャイルドに宛てた手紙とは別に四角い黒い箱が入っていた。

 見た目はチェキもどきをスリムにした感じなのだが、用途が全く分からない。

 同梱されたメモ紙を見つけて開くと、使用用途が書かれてあった。

「撮影機一号君ねぇ。音声だけでなく、映像も撮れるのか。あいつ、領を治めに行ったんじゃなかったのかよ……」

「ナリスでは、音声のない映写機があるそうよ。それを真似て作ったんじゃないかしら。睡眠時間を削って」

 二人して呆れ顔で撮影機一号君を見下ろしていた。

「この手紙は、どうやって渡す?」

「一応、対立している派閥だけどリリーが友人と公言しているから普通に渡せば良いんじゃないかしら?」

「いや、そうしたら馬鹿ベルトへの手紙がない方がおかしいだろう」

 ガリオンのツッコミに、アリーシャは「あ…」と小さな声を漏らし唸っている。

 小包をひっくり返して探したが、アルベルト宛の手紙は同梱していなかった。

「リリー、何で馬鹿宛の手紙も入れてくれなかったのよ。これで渡す手間と労力が、爆上がりじゃないの」

「未発売の廃棄商品でも渡しておけば良いだろう。手紙より現物支給の方が、馬鹿ベルトの喰い付きは良いはずだ」

 ガリオンがそう提案すると、アリーシャは泣き言を一旦止めて頭の中で損得の計算をし始めた。

「……うん。そうだね。廃棄品ならコストも掛からないし、問題無いわよね」

「後、お前がぶっ壊した学校の備品の請求が凄い額になってんぞ」

 リリアンが学園に居た時は机一つで済んでいたが、教育係をアリーシャに変更してから学校の備品を壊しまくっている。

 全額合わせると軽く中金貨三枚は下らない。

「これ、経費で落とせないかしら……」

「リリアンの判断次第だろう。まあ、この請求は最終的に馬鹿ベルトの製造元へ請求されるんじゃないか? 慰謝料に上乗せされて」

 二人は顔を見合わせ、自分たちに実害が被らなければ良いかということで落ち着いた。

「流石に、ガリオンが渡すのは体裁的に不味いでしょう」

「そうだよな。一日だけ戻すか?」

「どんな内容の手紙か教えて貰ってから行動した方が良いんじゃない?」

「それもそうだが、リリアンが言うと思うか?」

「……思わないけど、聞くだけ聞いてみたら? タダだし」

 どっちが聞くかで争って、結局その日は決着がつかずに翌日に持越しとなった。

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