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お前は、ヒロインではなくビッチです!  作者: もっけさん
エルブンガルド魔法学園 中等部
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書類整理に追われて身動きが取れません

 領主代行として着任して、早々に行ったのはリストラ。

 膿は早いうちに出すのが良いと判断して、面接という名の尋問(人による)を全員行い終わるのに丸三日も掛かった。

 奴隷として売られてきた者達の販売ルートを辿ると、いくつかの奴隷商の名前が挙がっており、残念なことにどれも面識のある者ばかりだった。

 聖女業を行っている為、多額の寄付をしに来た者と五分ほどの会談が設けられる。

 一般的に、聖女が表に出る事はないからだ。

 その時に笑顔が胡散臭いと思っていたが、値踏みしていたのかもしれない。

 ナリスを経由して買い戻しをしている為、時期を見て不正奴隷売買の一斉検挙が必要になってくる。

 教会の孤児院に養子縁組を申し出る者は、須くお断りするように通達済みだ。

 もし、その上で養子縁組を組んだ者や手続きを済ませた者に対し、人身売買の不正取引と見做すと通達しているが、果たしてどれだけ効果があるか不明だ。

 まずは、この国の奴隷問題を解決してから他の国の孤児院問題を解決しないことには、抜本的な解決は出来ないだろう。

「人手は減ったけれど、館内の仕事は回っているかしら?」

 フェディーラが用意した書類に目を通しながらフリックに問いかけると、

「必要な部屋は掃除させております。公募した方が宜しいかと思います」

と有り難い感想を頂いた。

 そんな事だろうと思ったよ。

 1/3がリストラ対象って、この屋敷の従業員は色々とヤバイと思ったもの。

 因みにリストラした人間は、叩けば埃がわんさか出そうなので警邏隊に引き渡しておいた。

 奴隷だろうが、貴族だろうが、罪を犯せば法の裁きを喰らう。

 奴隷は犯罪者奴隷へに身を落とし、それ以外の奴等も良くて罰金、悪くて犯罪者奴隷になるのだから自業自得と言っても良いだろう。

「公募は掛けるとして、教育の方はどうなっているのかしら?」

 出来れば事務作業が出来る人間が欲しい。

 今の私に欲しいのは、『睡眠の確保』が最大の課題である。

「奴隷たちのモチベーションが停滞していますね。四則演算については、この一月で出来るようになった者が何人かおります。読み書きに関しては、まだまだと言ったところでしょうか?」

「どのレベルの読み書きなら出来るの?」

「絵本並みです」

 実務で使えるほどではないか。

 じっくり腰を据えて勉強できる環境があれば良いのだが、そうは言ってられない事情があるので、可哀そうだが急ピッチで知識を詰め込まれている。

「奴隷だから給与が発生することがないのよね」

「そうですね」

「じゃあ、予習・復習を兼ねた宿題をしたら銀貨一枚。これは、正解・不正解関係なくよ。小テストで八割超えた者は、銀貨一枚。中間・期末考査で平均点を取った者は、大銀貨一枚。八十点以上なら大銀貨二枚。満点なら大銀貨三枚支給するとお触れを出しなさい。基本的に街で買い物したとしてもボッタクリに遭うだけだから、可哀そうだけど四則演算が暗算で出来るようになるまでは、ヘリオト商会の出張店で買い物を疑似体験して貰うことにするわ。幸い、離れが空いているから使えるように手配して。こっちは、ヘリオト商会の人間を手配するわ」

 私がそう言うと、

「すでに両方手配を済ませております。本日中には到着します」

と頼もしい言葉が返って来た。

 父からフリックを借り受けて良かった。

「奴隷の買い戻しに関しては、他国も絡んでいるから難しいところよね……」

 奴隷の売買だけで考えれば、別によくあることだ。

 しかし、奴隷にも人権はある。

 主人の都合で良いように扱ってはいけない暗黙のルールがあり、双方を縛るための魔法も魔道具も用意されている。

 オブシディアン家の奴隷は、一方的な制約で主にとって良いように改ざんされた内容になっていた。

 本当にあいつらは、最期まで害悪でしかなかったな!

「精霊達に奴隷の不正な買い付けが無かったか調べさせているし、証拠も押さえるようにお願いはしているけれど、これを証拠として認めるか心配になるわ」

 ナリスから入ってくる旧式モデルの映写機を分解して、新型の映写機を作ってみた。

 音声は良いが画質が悪い。

 誰かという判別はつくくらいの低品質だ。

「商品のクオリティを高めるのは今後の課題として、フリックはどう思う?」

「問題ないと思いますよ。ナリスでは、音声まで付いていなかったのでしょう? 上出来だと思います。昔、お嬢様が仰っていた声紋認証というのを術式に組み込めば良いのではないでしょうか」

「そういう考えもあったか。フリック、そのアイディアを金貨一枚で売らない?」

「お嬢様、アイディア料は不要です」

 時々鋭いアイディアを出してくるアルベルトは、きっちりとアイディア料を取るのだが、目の前の彼は要らないと言ってのけるスマートさに惚れてしまいそうになる。

「メアリーが居なかったら、私がお嫁さん候補に立候補していたのになぁ」

「私に幼女趣味はありませんので、他をあたって下さい。ああ、でも今は一応は殿下の婚約者なのですから不用意な発言はお控え願います」

 ブスッと太い杭で釘を刺されてしまった。

 冗談だったのに、つまらん。

「ヘリオト商会から誰が派遣されてくるのか楽しみだわ」

 今シーズン流行らせたい服もあることだし、その打ち合わせとかも行いたい。

 ずっと机に縛り付けられていたので、商会の者が来たと言われた時には自ら出迎えにいって驚きの再会を果たす。

 ベアトリズが、ソロバンと帳簿を片手に満面の笑みを浮かべて挨拶をしてきた。

 元々育ちが良かったこともあり、少し躾ければ上位貴族に通用する作法を身に付けている。

「リリアン様、お久しぶりで御座います。ヘリオト商会より派遣されましたベアトリズ・スーと申します。以後、お見知りおきを」

 ワンピースの裾を掴んでカエルスクワットしているベアトリズに、私は度肝を抜かれた。

 あの、我儘なダメっ子娘が……こんなにも短期間で成長したのね。

 感傷に浸っていると、ベアトリズから納品書の束と請求書の束を押し付けられた。

「フリック様より依頼された分で御座います。請求書につきましては、月末までに現金でお支払いお願いします」

 ベアトリズが、しっかり商人をしているよ。

 複雑な思いを抱えながら、私は彼女との再会に少しだけ喜んだ。

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