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palepink  作者: Kei.
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第2章─age26(6)

 いつもの日常が戻る。


─ハルおはよう。

─おはよ。寒いね。

─今日は仕事?

─うん。遅番だからまだ出ないけどね。レイは?

─オレはいつ通り仕事。そういや、行くの?飲み会

─行くよ。レイは?

─オレは行かない。

(えっ?)

─なんで?

─用事あるから行ってもすぐ出ないと行けなくて。ごめん。

─そっか。仕方ないね。


なんだ、来ないのか。


 換気扇の下でタバコに火をつける。朝起きてまだ何も口に入れてないせいか、くらっとした。

レイの前では吸わない。レイが吸わないから、レイと会うと分かってる日は朝から吸わなかった。

「タバコやめないとな…」

半分吸ったところで火を消して、歯磨きをした。


遅番は忙しい。

緊急入院が続き、家に着くと22時を過ぎていた。

携帯を見ると、今朝以来レイからのメールがなかった。

─おつかれさま。今日は残業だったよ。レイはもう寝たのかな?

メールを送ってそのままお風呂に入った。

(返信来るかな…。もう寝たかな?)

気になりながら、ゆっくりボディマッサージをして浮腫みを落としていた。

お風呂から上がって、メールを確認。


「寝ちゃったのか。」


返信はなかった。

  

時々返信が来ない日がある。

でも聞けなかった。

レイからみた自分の立ち位置がわからなかったから。


プルルル…

電話が鳴り響いた。

「ハル?元気か?」

舜だった。舜の声は甘くてやさしい。

「今日遅番でね、ちょっと残業になっちゃったからさっき帰ってきてお風呂出たとこ。どうしたの?」

「今行っていい?渡したいものあるから。すぐ帰る」

「いいよ。」


15分後。


ピンポーン


「ごめんな。急に来て。」

仕事帰りの舜は少し痩せたように見えた。

「いいよ。あがる?」

「あ、うん。」

ハルの部屋は殺風景だ。ネイビーのベッドカバーのベッド、白の小さなテーブル、白いドレッサー。部屋を飾るものはなにもない。

ハルは温かいコーヒーをふたつ、テーブルに置いてベッドに座った。


「ありがとう」

「どうしたの?」

「考えたんだ。もう、これ出そうと思って。」

ビジネスバッグから封筒を取り出した。

中を取り出すと、署名された離婚届だった。

「別居してハルが戻ってきてくれるために頑張ろうと思った。でも、別居して婚姻関係を続けていてもハルを縛るだけで、俺たちになにもメリットがないんじゃないかって思ったんだ。俺は、またハルに戻ってきてもらいたいし、ハルの事が好きでたまらない。それは変わらない。白紙に戻って、俺の事また考えてくれる日が来たら戻ってきてほしいし、他に良い奴が現れたらそれを応援できるようになりたいとも思う。」

そう言った舜は涙ぐんでいた。


ハルも涙が溢れて止まらなくなった。

「…ありがとう…。」

そう言うのが精一杯だった。

自分の事をここまで想ってくれる人は、この先現れないかもしれない。素直にそう思った。

 涙を流すハルを抱きしめ、

「ハルを泣かさない強い男になって、今度は俺からプロポーズしたい。その頃にはハルに良い奴がいるかもしれないけど、そのときは諦める。」

そう言って、優しくキスをした。


 舜が帰った次の日、離婚届を提出した。

「これで終わったんだ…」

脱力感となんとなく晴れない心。なにもやる気が起こらなくなりハルはしばらくレイと連絡を取るのをやめた。なんとなく。


 2週間経ち、プチ同窓会。

メンバーはシン、たっちゃんことタツヤ、可奈、あや姉ことアヤノ、ハルの5人だった。

「みなさんと会えてうれしーですっ!さあ、乾杯しまーす!」

宴会部長のシンが仕切る。シンは昔からムードメーカーで、笑いが絶えない。

「再会とハルちゃんのバツイチ記念に…」

「ひとつ余計だから(笑)」可奈が笑いながら突っ込む。

ハルも笑いながら「声デカイよ!」と突っ込む。

「かんぱいっ!」

みんなでグラスを合わせる。

「たっちゃん今なにしてんの?」あや姉が聞く。

「実家で設計士として働いてる」たっちゃんの実家は地元ハウスメーカー。2級建築士をしている。

シンはピッチが早く、店員が通るとすぐ呼び止め

「生よろしくー」

ともう何杯飲んだかわからないくらい飲んでいる。たっちゃんが唐突にシンに尋ねた。

「そういや、今日なんでレイ来れないんだ?」


シンはハルの顔をちらっと見て、

「なんか出張が入ったらしいよ」

とはぐらかすように言った。

(そうなんだ。そういや理由何も言ってなかったな…)

ハルは酎ハイをぐいっと飲んだ。

「シンそういや彼女どした?」

可奈がほんのり桜色に色づいた頬を押さえながらシンに聞く。

「他に男がいたんだってよ。二股。」

すかさずたっちゃんが割り込んで話す。

「傷をえぐるなよー!まぁ、もういいんだ。どーでもいい。次次!」

泣き真似をしながら本当に泣き出したシンにみんななぐさめながらお腹を抱えて笑った。


帰り道、ハルとシンは同じ方向だったからタクシーを乗り合わせることにした。

シンはかなり酔っていて目が虚ろになり、

「ねむ…気持ち悪…。」

と険しい顔をしていた。

ミネラルウォーターを買ってシンに渡すと、シンは一気に飲み干し「サンキュー」とピースをしてきた。

帰りのタクシーで、シンはレイのことを途切れ途切れに語りだした。

「あいつさ…」

「今日来なかったのは出張じゃない…高城と他の男がしゃべってるのみたくなかったんだってさ…」

「成人式で…俺が初めに高城かわいいって言ってさ、やっと連絡先まで聞いたのにあいつが持っていっちまうなんてさ…俺かわいそー…」


そう言ってシンは眠り始めた。

眠り始めたシンの頭がハルの肩に乗りかかった。そのうちシンの家に到着した。

「着いたよ!起きて起きて!」

揺さぶり起こすと、ビックリした顔で飛び起き

「うわっ!俺すげー酔っぱらってた?ありがとな。またな!」

と言って帰って行った。


 部屋についたハルは、換気扇のスイッチを入れタバコに火をつけた。

ふぅ…と換気扇に向かって煙を吐く。

(わたしって煙みたい…どこに向かっていくんだろ)

火を消して、そのままベッドにもぐりこんだ。酔いでまどろむ意識に任せて眠った。


─翌日。


目が覚めるとお昼前だった。

(しんどい…頭いた…)

ハルはお酒に弱い。大して飲んでなくても次の日必ず二日酔いになる。胃薬を飲み、シャワーをした。


シャワーから出てすっきりすると、ふとレイに会いたくなった。

もう2週間連絡を取っていなかった。

ゆっくり、スマホのキーパッドをたたいた。


─レイ、あのね、離婚届出したよ。

10分後。

─ハル、生きてたか。よかった。

レイは2週間連絡が取れなかったことには何も触れなかった。

─生きてるよ。レイに会いたくなった。

1時間返信がなく、ハルはもうダメか…と思いため息をついた。

夕方…

 ピピッ

─今から行く。ハルに会いに。


レイから返信が来た。


すっぴんで髪も巻いてない。あわてて軽くメイクをし、部屋着から着替え、ほんの少し手首にローズの香水をつけ、両手首をこすりあわせ耳の後ろに馴染ませた。


ピンポーン

(早い!)

レイが来た。

「すっぴん?いつもと違うね」いたずらに笑う。

茶色がかった瞳を見つめ、ハルの頬が色づいた。

「すっぴんじゃないよ…すっぴんなんて見せらんないよ。」

恥ずかしそうに笑って部屋に入ろうとするハルを、レイは後ろから抱きしめた。

「連絡取れなくてさみしかった…」

ハルの耳元で言い、耳元から漂うローズのかおりを思いきり吸い込んだ。

「この匂いたまらん…。何の香水つけてんの?」

「ロクシタンのローズ。昔ね、」

ハルは舜にプレゼントされた話を言いかけ、はっとして

「友達に誕生日プレゼントでもらったんだ」

嘘をついた。

「そうか。」

そう言ってハルにキスをしようとしたのを、ハルはレイの唇に指を押し付けブロックしその指を自分の唇に当てレイを見つめた。

「間接キス。」

そう言っていたずらに笑った。

「なんだそれ。かわいい」

そう言って微笑み、今度は唇に触れ、優しく深いキスをした。

レイのTシャツからシャボンの香りがする。ぎゅっと抱きついて深く香りをかいだとき、かすかにいつもと違う香りを感じた。

(気のせいか)

「今日はいい?ずっと我慢してたけど、もう限界」

「うん…」

そのままベッドで結ばれた。



「ハル、知ってた?」

「なに?」

「お前3歳のとき、南保育園じゃなかった?」

「そうだけど…すぐ転園したよ」

「オレ同じ保育園にいたんだよ。同じ組。今度写真見てみろ。かわいいオレが写ってるから」

「ええっ!」

(えっと…背の高い髪の毛が栗色の子がいたな。ハーフみたいな子…)

「もしかしてキノコヘアのハーフみたいな子?」

「きのこは余計だ。」

「そんなときから知ってたんだ(笑)」

なるべくしてなったのか、運命的なものだったのか。

偶然が重なりあってこうなったのか。

ずっと小さな頃から運命は回っていたのかと思うと、結ばれた事に神秘的なものを感じた。

レイの肌がすべすべして気持ちいい。

腕枕が心地良い。

肌に触れるレイの手が温かい。


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