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palepink  作者: Kei.
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第1章─age20

読んでいただきありがとうございます。

初めて執筆するので拙い文章ですが、付き合っていただければ幸いです。

 「もう30か…。このチークもう似合わないな。」

ハルは子供のお昼寝中、ドレッサーを整理しながら、たくさんあるチークの中から淡いピンクを見つけてゴミ箱に入れた。子供が生まれてから香水もつけるのをやめた。ロクシタンのローズが大好きで、よくつけてたな。

もう残り少ないボトルを懐かしみ、シュッと手首に振りかけてみた。ふわっと甘く華やかなローズの香りに癒される。

華やかなトップノートの香りとは真逆に、ラストノートには切なさが胸に広がり、心に押し込んでいた名前が呼び覚まされた。

「レイ。私いま幸せだよ。レイは幸せ?」




―ハルside-age20

「ハル〰️起きなさい!行くよ!成人式!着物なんていらないから!待ってるよ!」

朝から幼馴染みの可奈が、ハイテンションで電話してきた。

耳が痛い。勤労学生してる私と、女子大生の可奈とは休みの重みが違う。眠い眠い眠い。成人式とかどうでもいい。

もう酒もたばこもやってる。着物ないし会いたい人もとくにいないし。

「大丈夫!ハルはそのまんまでかわいいから!じゃ、10時ね〰️」

    ツーツー…。

切れた…。ハイわかりました行きますよ…。

心の中でつぶやいた。


夜働いて、昼は専門学校に行く毎日。土日関係なく仕事。休みは寝たい。上司の厚意で成人式に休みをくれたけど、どうでもよかった。


「もしもし?おはよう。成人式行ってくるね。夜会える?」

付き合って3年になる同い年の舜に電話した。バックから賑やかな声がした。

「ちょ…やめろって‥ハル、ごめん今日同窓会あるんだ。気をつけて行けよ!」

舜は友達ともう行ってるのか。友達多いもんね。

「わかった。またね」

「ハル可愛いからちょっと心配」

「なに言ってんの(笑)友達多い舜の方が心配だよ。私はぼっちだし。着物着たかわいい子いっぱいいるんじゃない?」

舜のバックからヒューヒュー!って冷やかしの声が沸いた。

恥ずかしくなって慌てて切った。


さあ、行きますか。

高校卒業してから始めたメイクは2年目に入りかなり上手になった。お気に入りのペールピンクのチーク、ピンクのグロス、まつげはいつもよりも少し長く。メイクで変わる自分の顔にいつも少しだけ驚く。

なんとなく緊張して、ドアをいつもより少しだけ慎重に閉めた。

「行ってきます」


 成人式典ってたしか昼からだよね…。

会場の公民館前には、まだ10時過ぎたところなのにたくさんの晴れ着に身を包んだ可愛らしい女の子と、ビシッとスーツで決めた男の子でいっぱいだった。私服の女の子は4割くらいかな。

結構いたから、安心した。

「ハル〰️!かわいいよ!ワンピース新しいよね!さすが私のハル〰️」

赤い晴れ着を着た可奈がゆっくり近づいてきた。成人式を迎えられる喜びと、艶々したクリアレッドの唇で彼女のキュートさがさらに際立って思わず、

「可奈ちゃんかわいすぎ…。惚れたよ。私たち結婚しようか(笑)」

なんて口に出した。

「ハル〰️ありがとー!しよしよ!」

ぎゅーっと抱き合った。可奈は小学校の頃からの親友で、彼女とはなんでも話せた。


結局式典には参加せず、久しぶりに会う同級生たちとたくさん写真を撮った。

「ハル!可奈!久しぶりーー!かわいくなったね!写真撮ろ!」

まるでそれが合言葉のように、懐かしみながら写真を撮った。

 正直なところ、私は自分に自信がなかった。地味な中学時代であまり人の記憶に残ってないと思ってたから、自分から声をかけることを躊躇していた。

自分の思った以上に、たくさんの子に声をかけてもらい、私も緊張がほぐれた。


(あれ、高城じゃね?すげーかわいくなってない?)

(やば、超タイプ)

(写真撮りたいけどどうやって声かける?)

私の名字が聞こえた気がした。どきん。高校卒業してから遅咲きで男運が上がってきた私は、男に免疫があまりなかった。声の主がわからないけど近くにいる誰かかと思い、なんとなく場を離れようとした。


「岡中3年9組ーー!集合!」

男子の叫ぶ声が聞こえ、次々集まっていくのが見えた。

あ、私じゃん。どうしようかな。私地味だったし。行かないつもりで見てたら

「あ、ハルいるじゃん!待って待ってハルも入れてー!」

学級委員だったミノリと目が合っちゃって、恥ずかしくてペールピンクの頬がサーモンピンクに染まり顔を隠しながら小走りに近寄った。


「ここあいてるよ、高城こっち来い」


あ、この声…。森谷レイだったのか。さっきの男の声だ。クラスで背が一番高くてどこか大人っぽくて。あんまりしゃべったことなかったけど、透き通るほど肌がきれいで、色素が薄く髪や瞳が茶色がかっていたのが印象的だった。

私は森谷レイの前に立った。彼は185センチ、私は152センチ。

「お前こんなにちっさかったのか。」

頭をポンポン触る大きな彼の手に、舜に触れられたときとは違った胸の高鳴りを感じた。

35人いたクラスメイトのうち、30人が集まり写真を撮った。


「可奈待たせてごめんね」

可奈は、同級生のミナとカズハと昔話に盛り上がっていた。

「全然だよ。みんなきれいになってたね〰️」

可奈が微笑んだ。

ミナがニコニコしながら私に抱きついてきた。

「ハル元気そうだねー。会えてうれしい!」

「ミナも。キレイになったね!」

ふふっと微笑んで、私の耳元でミナがささやいた。

「あのね、森谷がハルのこと隠し撮りしてたよ。ずっとハルのそばにいたの気づいてた?さっきの集合写真も、森谷の提案。ハルがかわいいって男子たちですっごい盛り上がってたけど、森谷がとくに騒いでたよ。相当タイプみたいだね。気を付けなよ〰️」

やっぱり。あの声は森谷だったと確信した。


お昼過ぎて、可奈、ミナ、カズハとファミレスに行った。

今夜同窓会するみたい。どうしようかな…。まだほんのり残ってる胸の高鳴りが消えない。なんだろ、きゅん、とはちがう、ぎゅっとしたような…。


同窓会には行かなかった。

寮に帰って、中学の卒アルを見返した。

卒アルの私、黒髪ショートで地味だな。ミナはあんまり変わってないなー。最上列端、森谷。一人だけ飛び抜けて背が高い。大人っぽい。また、とくんとくん。私の鼓動が早くなった。


思わず舜に電話した。

「ハル?どした?」

舜カノコールー!!って冷やかされてる声。あ、しまった。

「ごめん、同窓会だったね。ちょっと電話したくなっちゃった。またね」

切ろうとすると、

「またあとで電話するよ。早く会いたいな」

舜の声は甘くて心地良い。結局眠たくなってそのまま寝てしまった。



時が経ち、私と舜は23歳で結婚した。

あのときの胸の高鳴りはきっと気のせいだったんだ。もう忘れていた。

そして26になった。

今日は、中学の同窓会だ。




―レイside-age20


 「レイ、やべー。着物マジック!」

成人式で晴れ着姿の女の子に興奮してるこいつは永久(とわ)。着物ねー、すげーな女って。化粧して、髪型変えたらちょっとおとなしそうな子でもキラキラ光る。

プルプル…。

真実からメールが来た。

(こっちも成人式来たよ。一緒に行きたかったな。早く一緒に住みたいよ…てか、会いたい!)

付き合って半年。真実は肉食系なのか俺の心の中にズカズカ入ってくる。遠距離でちょうど良い距離感を保っている。

俺まだハタチだし、こんなのと一緒に住んだらもう人生詰むな。心の中で毒を吐きつつダダダッと偽りを打つ。

(俺も成人式。真実に会いたくなってきた。来月まで待てないよ)


携帯をポケットに押し込みふぅ…ため息がでた。



「ハルちゃん!元気?学校頑張ってるみたいだね!」

相変わらず時田リオのでっけー声。

ハル…。高城ハルナだっけ。ちびっこくて目立たなくて…。たしか髪ショートだったよな。どいつだ?

 相変わらずちびっこくてわかんねーな。

顔を上げたとき、ふわっとなんか良い香りがした。甘い花の匂い?なんだこの良い匂い。下を見ると俺の目の前に背を向けて立ってるロングヘアの子がいた。

ハルって呼ばれてる…。こいつが高城!?

痩せて垢抜けてる。光でライトブラウンの髪に光の輪が出来て揺らめく。甘い香りと少し甲高い声。俺の周りの女みたく目の回り黒くしてないのに、不思議と潤んだ目と、薄いピンクの頬。

目が離せなかった。

触りたくなった。無性に。

「あれ、高城じゃね?すげーかわいくなってない?」

永久がニヤニヤしだした。そばにいたシンが即座に

「やば。超タイプ」

と答えた。俺はとっさの言葉が出なかった。

「写真撮りたいけどどうやって声かける?」

永久が言い出した。こいつはいつも俺を使おうとする。自分では動かない。

「俺が撮ってやる。」

俺はポケットからカメラを出し高城の横顔を連写した。前にいたちっさいあいつは、いつの間にか少し遠くにいたからちゃんと撮れたかわからない。永久のカメラで撮らなかったのは、無意識に誰にも渡したくないと直感的に感じたから。

「サンキュー!絶対くれよ写真!」

―やらねーよ。と言いたいところだけど、

「おう!てかさ、クラス写真撮ったら高城と一緒に撮れるんじゃね?」

「ナイス!よーし。」

「岡中3年9組!集合ー!」

永久が叫んだ。集まる集まる。こんなにいたんだな。高城はどこだ?着物の女は髪にボリュームがあって小さなあいつを見失う。

「あ、ハルいるじゃん!待って待ってハルも入れてー!」

ミノリ良いぞ。高城は、少し恥ずかしそうに走ってきた。頬がピンク色に染まっていた。

思わず声がでた。

「ここあいてるよ、高城。こっち来い」

いや、俺そんなにしゃべったことなかったよな。ハズイぞ。

ちょこんと俺の前に立った高城は俺の肩より少し低く、小さかった。

「お前こんなにちっさかったのか」

思わずポンポンと頭を触ってしまった。

右手の指先が小さく震えた。心臓がバクバク。俺、どうしたんだろ。

「もう、いじらないでよ」

口元を押さえて振り向いた顔は自然と上目遣いになり、俺をさらにドキドキさせた。右手の薬指に光るシルバーリングが俺の心をぐしゃぐしゃにしてきた。


(俺は惚れたのか?)

今までの女とタイプ違いすぎるだろ。俺の周りの女は目の回り黒くてピチピチした服着た女ばかり。こんなふんわりした女はいない。


写真撮影自体はよく覚えていない。でも、自分のカメラはちゃっかり差し出していた。キャプチャー見ると、俺の赤らんだ顔の下で微笑む高城。

かわいい。ほしい。あいつは誰に守られてるんだ?光る指輪。


 同窓会には高城は来なかった。俺の気持ちを悟られたのか。

ミナに声をかけられた。

「あんたハルばっかり見てたよね。かわいくなったでしょ。」

すかさず永久が割り込んでくる。

「あいつ密かに中学時代も人気あったよ。誰も勇気なくて告らなかったけど。でもかわいくなったよなー!今日一番可愛かったランキング1位じゃね?!」

俺も頷いた。そして浴びるように飲んだ。なんか無性に酔いたくなった。

「ハルの連絡先あげようか?」

ミナがニヤニヤしながら、俺の耳元でささやいた。

こいつなんかたくらんでるのか?メモに手をのばしかけたところで俺は眠り込んでしまった。


次の日から日常に戻った。

毎日来る真実からのメールを適当に交わしながら大学に通う。真実が会いたいと言えば片道3時間かけて行くし、抱けと言われれば抱いた。端から見ればまめな男かもしれないが、俺にはそれが楽だった。半年が過ぎ、俺は真実に別れを告げた。真実は目を真っ黒にしながら泣いた。

財布に隠した高城の横顔をながめる。少しぶれてるけどピンクの頬が微笑んでる。

捨てられなかった。


俺は胸に秘めた熱を隠しながら、出会いと別れを繰り返した。

そして26になった。

明日は中学の同窓会だ。



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