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かまいたちの夜

サウンドノベルというジャンルを確立したチュンソフト。その名作と尋ねられれば、かまいたちの夜、街、428と私の好きなゲームが並ぶ。


上記の三作品はどれもオススメである。かまいたちの夜に関してはシリーズ化されたがやはり初代が抜群の面白さである。


小学六年生になると、今度はスーパーファミコンが台頭してきた。これまたクラスの友人たちがこぞって「俺、スーファミ買ったで」と自慢してきたのである。


もちろん、ゆうくんはすでにスーファミを手に入れていた。学校の放課後にはすでに野球部の練習に通っていたので、土日で休みの日はゆうくんの家でスーパーマリオやボンバザルなどに熱中していた。


そうすると、またもやこの思いが私の中に駆け巡る。



「この興奮を家で味わいたい」



しかし、私はファミコンですらやっとの思いで買ってもらったのに、スーパーファミコンなど夢である。母に「スーファミ買って」と尋ねてもやはりあの台詞の登場である。


「よそはよそ!うちはうち!」


もちろん、そんなことではへこたれない私。


しかも、この時にはもう一人強い味方がいたのだ。




何を隠そう、父である。




ファミコンを買ってからというもの、ドラクエにハマりまくり、そこからFFや貝獣物語など面白そうなRPGに片っ端から手を付けていた。



父に言った台詞がこれだ。



「ドラクエ5がスーファミで出るらしいよ」



これね。もう翼君のドライブシュート、ケンシロウの北斗百烈拳と同じくらいの破壊力ね。




それでも父は耐えた。



「でもなあ、まだドラクエ4途中やしなあ」



業を煮やした私。ここで、もう一人の協力者の登場である。


そう、弟である。



弟とは一つ違いの年子で、この頃になると喧嘩をすることもほとんどなく、良好な関係を築いていた。



そこで弟とある作戦を立案したのだ。



時は12月上旬。夜8時決行となった。


居間でお茶を飲んでいた両親。そこに二人で向かう。


そして「大事な話があります」と切り出した私。



弟と二人で正座をすると、両親は「なんだ、なんだ」という風に私たちを見つめていた。



もうおわかりであろう。


私たちの最終兵器。それは





DO・GE・ZA。


そう土下座である。



私は昔から土下座に抵抗がない人間である。


もしピンチに陥り、「土下座しろ」と言われても即座に土下座できる人間なのだ。



ここで両親に向けて土下座をし、



「お願いします!スーファミを買ってください!」




両親はどう思っただろう。自分の息子が、しかも今度は弟まで一緒に土下座をし、スーファミを買ってくれと頼んでいる。


子どもにスーファミを買ってほしいと土下座をさせた→それでも買わない→冷たい親だ、となるのを恐れたのかどうかは分からないが、私たちの思いは実を結んだ。



今度はサプライズではなく、買ってほしいソフトが分からないため、一緒にスーファミを買いに行くことになった。


この日は、遠足より、修学旅行よりも楽しみで前日の夜はほぼ眠れなかった。


ファミコンショップに行くと、父にこう言った。



「かまいたちの夜がほしい」



確か、弟はスーパーマリオか何かを買ってもらったと思うのだが、そこまで記憶にはない。ただ、自分の中でどうしてもかまいたちの夜がやりたかったのである。



小さい時から謎解きが好きだった私はのめり込んだ。


と、同時に怖かった。



だって、ペンションでみんな殺されていって、いずれはクリスティの「そして誰もいなくなった」みたいになるんだもの。


しかも、彼女候補にストックでいきなり刺されるとかもう恐怖。


「女って怖ええ」と友人たちと共感したのは良い思い出である。



しかも、このかまいたちの夜。ミステリー編だけでなく、オカルト編、スパイ編などさまざまなストーリーを楽しめた。すべてがハイレベルな小説になっていて、どれだけやりこんでも飽きなかったのである。


さらにはピンクの栞。これには苦労した。公式ファンブックを買ってきてようやく出したものの、その時には買って半年ほど経っていたと思う。



そして、問題の金の栞である。


今でこそ出現条件が明らかになっているが当時は条件そのものが不明。金の栞の存在だけが独り歩きし、都市伝説に近い存在となっていた。


ネットもない時代に、情報収集などほとんどできず、周りが別のゲームにのめり込んでいる間、私はひたすらかまいたちの夜をプレーしていた。真理に殺された回数は数千回に上るだろう。



それでも金の栞は出現しなかった。



ようやくその姿を拝めたのは、PS版が発売され、フローチャート式になってからである。


ネタバレになるので詳しくは触れないが、その金の栞編は思った以上に短かった。


この短いストーリーのために俺は、何千回も繰り返し血まみれになっていたのかと考えたが、それでも怒りというより、「楽しかったなあ」という感情しか沸いてこなかったのである。



苦労した思い出が多いかまいたちの夜だが、私をミステリーの世界に引きずり込んだのはまぎれもなくこの作品である。


筆者である我孫子武丸氏の小説だけでなく、綾辻行人氏、有栖川有栖氏、歌野晶午氏ら多くのミステリ作家と私を引き合わせてくれた。


そういう意味では思い出深い作品の一つである。




次回予告



前回アナザーマインドやるって言ったじゃない!

瞳、可愛すぎ!

俺いくつの設定やねん!


次回 アナザーマインド



ご期待ください。

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