不死の儀一
男めがけて爆炎がとめどなく降り注ぐ。轟音とともに地面がはじけ飛ぶが、男は左手に刀を持ったまま爆炎を避けていた。笑いながら。
「転生だかなんか知らんが、あんな化け物幕末におらんかったぞ!どこの日本人が刀から炎なんか出すんじゃい!」
「こちらの世界に幕末から転生する際に、特殊能力を付与されて来る者がいます! 彼はそういう者の一人です!」
銀色に近い金髪の女が男に状況説明した。
「へえ、何から何までおもろい世界やなあ。しかしどっかで見た顔やな、名前なんていうねん」
男は心底楽しそうに笑いながら、爆炎をかいくぐり浅葱色の羽織を着た男めがけて、瞬時に間合いを詰め、抜刀した。
名刀同士の刃がかち合い、爆音の中にも甲高い鍔迫り合いの音が鳴り響いた。
「新選組一番組組長、沖田総司」
切れ長の目に、死人のように白い肌の男がぼそりと自らの名を呟いた。
「ああ!新選組の奴か!京都で会ったなぁ!病気したって聞いたけど元気そうやんか!こっち来て治ったんか?よかったなぁ!」
「お前は姫路藩の樋夏儀一だな」
「よく知ってんなぁ! 京都では一回くらいしか戦わんかったやろ。なんかごちゃごちゃなって引き分けてもたし」
爆炎が儀一と沖田の間に雷のように降り注いだ。
「あぶな!」
儀一はとっさに間合いを広げ爆炎をよけた。
「知ってるさ、知らないやつなどいるものか。京都でどの体制にも属さず、ただひたすら戦い続け最強の称号を欲しいままにした男」
「不死の儀一」