酒場ララとギルド
「ああ……!ギルドと言うのはですね……」
スズナの説明によると、
「ギルド」とは、この世界特有の、モンスターを倒したり、貴族などのVIPを護衛したりしてお金を稼ぐ、魔法や剣術などの戦闘に特化した物達に、仕事を斡旋したり、仲間を紹介したりする施設の事を言うらしい。
「ちなみにそうやって生活している人達のことを「冒険者」って言うんですよー!」
スズナが最後にそう付け加えた。
(冒険者!地球では全く聞いたことのない職業……!)
「おや!琴子様!冒険者に興味がおありですか!?」
「むむっ!?なぜ解ったのだ!」
「いやいや、先程服を見ておられた時と同じくらい目を輝かせておられましたから!!簡単でしたよ!」
どうやらまた、知らず知らずの内に顔に出てたらしい。
「しかしそれも取り敢えずご飯を食べてからです!行きましょう!」
「うむ!」
琴子とスズナは、酒場ララに入った。
琴子とスズナが酒場に入ったのと同じ時。
「何でも屋魔王城」に、1通の手紙が届いた。
「おやぁ~。なんだろねぇ?」
店番をしていたアビスが気だるげに立ち上がり、店の外に付けられたポストから手紙を取り出す。
「こんな時間に手紙とは珍しいねぇ……。」
魔王城に届く手紙は基本的にイタズラか、魔王を殺して金を貰おうとする命知らずな冒険者からの殺害予告だ。
(今の魔王様なら案外そこら辺の優男でもポッキリ逝かせられそうだけど……)
まともな内容であることを祈りながら、アビスは手紙が入っていた袋を破り、手紙を開く。
そこには……
「……今日2回目だよ……。眠気が吹き飛んだのは……。ベルゼブブ様にでも伝えてこようかねぇ」
そう言ってアビスは手紙をたたみ、店の中に入っていった。
冒険者に男性が多いからだろうか、酒場のメニューは基本的に味付けの濃そうな肉料理、野菜をメインにした料理はあるにはあるが、メニュー表の隅っこに小さく追いやられていた。
「んっふー!!これ美味しいですよ琴子様ぁ!」
そんな肉料理を、男性冒険者顔負けのスピードでスズナは食していた。
「ん……んむ……。出来れば私のも食べてくれ……」
琴子はスズッイ、と目の前に残った大量の肉料理をスズナに差し出した。
「こぁーー!!!琴子様!貴女は神ですか!いや魔王何ですけど!!」
「あ……そうか……ありがとう」
(おいもっと食えよ!ちっとも満腹になんねぇぞ!!)
料理が運ばれた時から、おまけでついてきたパンをモソモソと食べている琴子に、魔王が文句を言った。
「だって……ここの料理、とても味付けが濃くて量が多くて……とても食べ切れません……。」
(あ!?そんなん気持ちで乗り越えろ!!そんなんだからてめぇは小さいんだよ!!)
「ぬぁ!気にしてることを……!」
モサモサモサと琴子のパンを食べるスピードが上がる。
「くぁー!!ご馳走さまでしたぁ!!……琴子様はそれだけで本当に良いのですか!?」
結果的に琴子が食べたのはおまけのパン2枚だった。
「大丈夫です!少食なので……」
(こりゃ、一生ちいせぇな!!ロリババァで売ってけ!!)
ロリババァと言う言葉もよくわからなかったが、売っていくってなに?
「さて、それじゃあ琴子様が気にしていたギルドを見てみましょうか!」
「おお、楽しみだなぁ」
「ギルドはそこのドアの先にあるみたいですよ」
スズナに手を引かれ、酒場の隅にあるドアから、琴子はギルドエリアに入っていった。
「ガルガギア討伐が発生中です!!」
「パグモン討伐受けませんかー!?危険が少なくて初心者の方にもお勧めでーす!!」
「「死者の肝」の調達依頼があります!!報酬上がってますよ!!」
ギルドの職員達が、大声でギルドエリアにいる冒険者達に依頼を紹介している。
ギルドエリアには、酒場エリアとはまた違った活気のある熱気が漂っていた。
やはり男性が多い。ガタイがよく、鎧を着た者もいれば、布で作られ、魔力を増幅する刺繍がなされたローブを着た魔法使いまでいる。
「さって魔王さま……。冒険者はここで依頼を受けて、仕事をしているのですが……、琴子様も受けてみます?」
「ううん……。確かに魅力的なのだが……。私達2人では危険ではないか?」
「いえいえ!私はこう見えて魔王さまの所で幹部まで成り上がったんですよ!自分で言うのもなんですがそこら辺の男が100人同時にかかってきても、全員の鼻にマカロニ突っ込んでやる事すら出来る程度には実力はあります!」
琴子の不安を消すように、スズナが明るく言った。
「凄く分かりにくい例えです!ですが凄さは伝わりました・・!よし!依頼を受けてきます!」
琴子が依頼を受けるカウンターに向かおうとし、完全にスズナが「この町を案内する」と言う目的を忘れていた時、
「魔王さま……、お楽しみの所すいませんが……今すぐ、魔王城に帰ってきて下さい……!」
ブゥン!と言う、虫が羽ばたいた時に聞こえる音と共に、ベルゼブブが琴子の前に現れた……。
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