フィンセの大通り
取り敢えず10部分位まではある程度のペースで投稿行きたいと思います。
「さてと!琴子様!どこか行ってみたい場所はございますか!?」
スズナが、何処からか貰ってきたフィンセの地図を琴子に見せながら言った。
「ううむ……まずはこの「服屋ベルニカ」と言うところに行ってみたい」
「おっ!最初に服屋とは!琴子様は服が好きなんですか?」
「う……うむ!ここに来る直前まで服の本を読んでいたのだ」
「おお!それは凄い!私は服にはそこまでこだわりませんからねぇ……。アビスとかはああ見えて非番の日に外に出るときは中々オシャレしてますが」
「いや、別にスズナさんが行きたくないのなら、良いのですが…」
「いえいえ!そんな事をありませんよ!私もちょうど良いので、新しい服を何着か買わして貰いますよ!!」
(ちっ!服屋かよー。めんどくせぇなぁ。女の買い物は長いからなぁ)
スズナは琴子の意見に同意してくれたが、魔王は明らかにテンションが落ちていた。
スズナがかなり人通りのあった大通りを、するすると風のように移動してくれたお陰で、かなりのスピードで服屋についた。
「お……おおお…!!」
(琴子様……目の色が俄然明るくなられた……。本当に、服がお好きなのですね……)
服屋に並ぶ色鮮やかな大量の服を見て目を輝かせる琴子を見て、スズナは服屋に来て良かった、と心から思ったのだった。
フィンセ大通りの北側に店を構える「服屋ベルニカ」は、男性物から、女性物、布で作られた普段着から、上級の「モンスター」から作られたドレスまで、ありとあらゆる服を取り揃えていた。
1つの空間にそこまで様々なジャンルの服を突っ込んだら、店の雰囲気が色々とカオスな事になりそうな物だが、店主の腕前か、はたまた偶然なのか、雰囲気は誰でも入りやすい、人々に親しまれた店と言う感じの、とても良いものだった。
「おおお!!」
辺り1面、見たことのない服に囲まれ、琴子はふるふると震え、
「これは……!これも凄い!!……何これ!触ったら大きさが変わったぁ!!」
と、はしゃぎながら、服を物色し始めた。
おおよそその姿は、魔王には決して見えないものだった…。
「おお!これなどはどうだ!!スズナさん!」
琴子がスズナに見せたのは、胸にドクロマークの刺繍がされた黒地のクロップド・Tシャツだった。
「おお……!!これは良い!!流石です琴子さま!!」
(おーい……。もう2時間はたってんぜ……。いい加減移動しよーや。)
女性の買い物は長いと言うが、さすがに長すぎだった。
見たことのない服にテンションが異常に上がった琴子のせいもあるが、予想外にスズナもノリノリだったのが、ここまで時間を引き伸ばしていた。
(もう昼だぜ?……いい加減飯食いに行こうや……)
魔王がぐったりとした様子で言った。
「……うう、確かにそうです。すいません、長く居すぎました。……そう言えば、もうお昼です」
魔王の言葉が琴子に届き、琴子が動きを止め、そう言った。
「確かに……お腹が空きました!!ご飯でも食べに行きましょうか!!」
スズナも自分のお腹が空いていたのに気付いたらしい。
「この店の近くにご飯が食べれる店はありますか?」
「えっと……ああ、あります。「酒場ララ」……この町でも有名な所ですよ!」
スズナはポケットから取り出した地図を確認して、近くに店が会ったのが意外だったのか、嬉しそうにそう言った。
「酒場ララ」
木造で屋根があまり高くなく、横に広い建物の周りには、様々な格好をした者達が集まっていた。
緑色と赤の布の服を着た二人の若者、ちょうど昼休憩なのか、ワイワイと話ながら集団で店に入る30代程の男たち。たくさんの傷が付いた鎧を来た男など、1日中見ていても飽きないのでは無いのだろうかと思う程だ。
「へぇー!どうやら「ギルド」と併設された場所の様ですね!」
「ギルド……?」
スズナの発した聞き慣れない単語に、琴子は首をかしげた。