ニラニウス学園-12
ニラニウス学園、一階廊下。
「ねぇねぇ!?一体どうやったの!?」
「ひーん!!わかりませんー!!」
琴子は魔法の実技授業が終わってからも、魔法を見たクロムウェルに終われていた。
(あの女まじでヤバイな……!いつまで追いかけてくるつもりだ……!)
「どうにかして一旦彼女から離れないと、次の授業の準備も出来そうにないよ!!」
「三井さぁーん!!待ってよぉぉぉ!!!」
「きゃぁぁぁあ!!」
(あいつ……!頭に角が生えやがった!!魔物の部分が出てやがる!!)
クロムウェルの頭には、側面に巻き付く様にして太い角が生えていた。
「ぜぇ…もうそろそろ……体力が限界……」
(お前……くそっ!このままじゃつかまっちまう!!)
授業が終わってから休むことなく走り続けていた琴子の体力が、ついに切れ初め、琴子の走るスピードがだんだんと落ちていく。
「ふふふ……観念するのよ三井さん……」
「目が……、目が完全にいっちゃってるよぉ……」
クロムウェルが両手を上げ、ジリジリと琴子に近付いていく。
「それじゃあ……秘密を教えてもらおうかしらぁ!!」
「ひぃぃぃ!!」
クロムウェルは両手を上げたまま、強くはないと言えど人間には勝る魔族の脚力で、琴子に飛びかかった。
(琴子!!このままだと俺達は何かとても不味い事になる!!何か大事なものを失いそうだ!)
「そうは言ってもどうすれば…」
(何かリクエイトしてウェルをはじけ!!)
「何か…何かって……「リクエイト」!!」
琴子はラーヴァの指示に戸惑いながらも、リクエイトを唱えた。
(よし!!何を作ったんだ!?)
「えっと……」
琴子は手に持ったリクエイトした物を持ち上げた。
「魔王の部屋にあった……ローブ」
(終わったぁぁぁぁ!!!!)
「きしゃぁぁぁあ!!!」
「きやっ!」
琴子は作り出したローブを、言語が崩壊したクロムウェルにバサッ!と投げ付けた。
「ぎゃ!!」
クロムウェルはローブにすっぽりと包まれ、辺りが見えなくなり、じたばた手を動かしている。
「きしゃ!?」
そしてどうやら片足が床についていたローブを踏んだらしい。クロムウェルは頭からひっくり返って転倒した。
(お……おお!!流石俺のローブ!いい仕事しやがる!!琴子、今のうちに逃げるぞ!!)
「うん……ってどこに!?」
(取り敢えずクルスの研究室に転がり込むぞ!!あの階なら部屋もたくさんあってすぐには見つかるまい!)
「わ、わかった!」
琴子はクルスの研究室のある第二校舎の二十八階に行くべく、転移石に向かって走り出した。
「ざぁぁぁぁ!!!(琴子)」
「おわぁぉぁぉぉ!!!(クルス)」
「あ!?何だぁ!?(ミギワ)」
勢い良く開いたドアから琴子が急に飛び込んで来たため、物凄い叫び声を上げたクルス。
「ぁぁああ……って何だ、琴子か、びっくりさせやがって…。」
「お前はびっくりし過ぎだろ。琴子よりお前の声に驚いたわ」
飛び込んで来たのが琴子だとわかった為、クルスとミギワはだんだんと落ち着き始める。
「んで……どうしたんだ?こんな時間に……。次の授業はもう始まるぞ?」
ミギワが琴子を見て、不思議そうに言う。
「そうなんですけど……実はかくかくしかじかで……」
琴子は二人にここまでの経緯を説明した。
「成る程、そういう事だったのか……。災難だったな。しかしそうか、初等部にもそんな危険な奴がいるのか。……どう思うクルス」
「何でそこで俺に降るんだよ」
「……?危険人物の事は同じ危険人物に聞くのが一番良いだろう。ほら、琴子を助けるために何か助言をしてやってくれ」
「お前真顔で言いやがって……。……?じゃねーよ!琴子こいつも十分不良だからな。こいつに聞け」
「はっ!誰が俺のことを不良だと!?実技座学共にトップの成績を走り続け、雷魔法を使いこなす俺の事を誰が不良だと……」
「俺と付き合い、次の授業を当然の如く俺の研究室でサボろうとしているやつを見て人はどう思う。」
「……」
「ああ!ミギワさんが部屋の隅で体育座りをして動かなくなってしまいました!」
「俺の事を危険人物扱いした報いだ!ハハハ!!……んで琴子ちゃん。やべーやつから逃げてるんだってな。それじゃあ、これを使え」
クルスは近くの机の引き出しをおもむろに開け、中から小さな、透明なガラスで出来たビンを一個取りだした。中には緑色のスライムのような液体が入っている。それをポイッと投げて、琴子に渡した。
「そいつをその「やべーやつ」に投げつけろ。そうすれば多分今日は逃げ切れるはずだ。」
「わかりました!!ありがとうございます!!」
「おーい。頑張ってこい。」
クルスに見送られ、琴子は研究室を後にした。
「……さって、俺も研究頑張らなきゃな…。くそっ、注文してた死体が届いてれば、こんな遅くならなかったのに……」
クルスは少し焦ったように呟き、自分の研究に戻った。
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