ニラニウス学園-11
「だっ、だってしょうがないじゃない!!何故か私が授業を頑張れば頑張るほど他の皆が私から距離を置いていくんですもの!!」
クロムウェルは叫びながら早口でそう言った。
(あー……、回りとの温度差が違いすぎて他のやつらから距離置かれてるパターンか…。)
「で……でも、授業を頑張るのは良いことですよね?」
「そうよ!そうなのよ!!なのにうちのクラスの奴等は……」
(まぁ、頑張ってる奴にはそれ相応の実力がつくからな。いずれクラスの奴等にも感謝されたり尊敬されたりするだろ)
「私が魔族で、少し他より魔力が多いからって嫉妬しちゃって……」
(……多分魔力云々の話じゃないな。自分を魔族と言い張る痛いやつだと思われてるんだろ)
「それで……え?本当に魔族なの……?」
「本当よ!!両親共に魔族の純正よ!」
(本当だぞ。あいつに流れている魔力のそれは、完全に魔族のもんだ。ただ魔族にしては魔力の量もあまりないし、魔力の「濃度」も薄い。多分それで学園に入れたんだろう。)
(へぇ……)
(つまり魔族の中では落ちこぼれって事だな)
(そんなハッキリ言わなくても……)
(別に良いんだよ。魔力が少なくても本人の努力次第で強くなれる。現に俺がそうだ)
(ええ!?そうなんですか!?生まれながらにして魔王!じゃ無いんですか!?)
(そう言う奴もいるが俺はそうじゃない。一般家庭に生まれ、自力で魔王の座まで這い上がった物語受けしやすい主人公タイプだ)
(自分で言うんだ……)
「さっ……さぁ!!早速訓練に入りましょう!!」
「うん、そうだね。話している間に大分出遅れちゃったし……」
「なっ……なに!?私が話しかけて来たから出遅れたとでも言うの!?」
「別にそういう訳じゃないけど…」
「ま……また私はやってしまったのね……。ああ、こうしてまた私から人が離れていく…」
クロムウェルはガクッと膝をつき、ヨヨヨ…と泣き始めてしまった。
(なんだ……?こいつ、めんどくせーな。)
ラーヴァの容赦のない感想だった。
琴子とクロムウェルの前には、一定の間隔を置いて丸い五つの的がプカプカと浮いている。
「ふふ……、見なさい!私の実力!!「火球」!!」
クロムウェルの右手の上に、ポン!とバスケットボール程の大きさの、メラメラと燃える赤い火の玉が現れる。
「これだけじゃないわ!!」
クロムウェルが左手を火の玉の上にのせる。
すると右手の上の火の玉から、新しい火の玉が数珠繋ぎに四つ現れた。
「さぁて……行くわよ!!」
クロムウェルが五つの火の玉を一斉に発射する。
発射された火の玉は、全て正確に的を捕らえ、五つの的を撃ち落とした。
(ほう……、中々やるじゃねぇか。複数の火球を正確に的に当てた。きっちり魔法のコントロールが出来てる証拠だ。琴子にゃ無理だな)
「むぐぅ……」
ラーヴァがクロムウェルの魔法を見て、感心したように言った。
「良し!中々良い出来ね!それじゃあ琴子さん!あなたの番よ!」
「わかった……(うう……あんなこと出来ないよ……)」
(ま、琴子にゃ出来て二つまでだな。取り敢えずやってみろ)
「「火球」!!」
琴子がクロムと同じ様に、右手の上に火の玉を作り出す。
「それで…的は…あった!」
琴子が辺りを見回すと、左側に的が一つ浮いているのを発見した。
「行けぇ!」
琴子は体を左に向け、右手を前に出し火の玉を打ち出す。
ヒュゥ!!
「え?」
次の瞬間、浮かんでいた的は撃ち落とされていた。
「え……琴子さん?今火の玉が見えなかったんだけど……?」
クロムウェルが唖然とした顔で琴子に言う。
「私にも……分からない!……」(魔王城で練習した時はこんなことならなかったのにどうして!?)
(あー……いい忘れてたわ。お前に魔法の練習させてた所には、ボルグが危険の無いように魔法の威力や速さを押さえる結界が張られててな。あーしまった。これにも俺の魔力の影響が出るんか……)
(え?え?どういうことぉぉ!?)
「琴子さん!もう一回!!もう一回見せて!!」
「ちょっ!クロムさん近い……」
クロムウェルが琴子の顔の間近に自分の顔を近付け、先の魔法をもう一度見たいと懇願していた。鼻息が凄く荒い。
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