ニラニウス学園-10
ニラニウス学園での授業が始まった。
(そういや俺らって留学生扱いなんだよな……。ってことはそれなりに魔法やら武術が使えないといけないんじゃないか?)
(!?今!?今ですか!?今そんな重要なこと……。まずい!まずいですよ!私まともに使えるのは基本的な魔法だけですよ!)
琴子はニラニウス学園に来るまでにラーヴァから基本的な魔法の使い方は大体叩き込まれたが、流石に時間が足りず、あまり強力な魔法や、応用的な物は一切覚えられていない。
(まぁ、この学園で教えられる程度の魔法は俺が大体分かるしな。いざとなれば教えてやれる。)
(おお!解決ではないか!!)
(まぁ、そこまで複雑じゃないしな、魔法ってもんは。イメージと魔力操作を上手く出来ればOKだ。)
(へぇ……)
そういえば、リクエイトを教えてくれた時もイメージが大切だと言っていたっけ……。と琴子は思い出した。
(ま、何にせよ真面目に授業は聞いとけよ。もう始まってんだぞ)
(そ、そうだね……。何か時々魔王っぽくないこと言うよね。)
(そうか?別に普通だとおもうが……)
琴子とラーヴァの会話は一度そこで終わり、琴子は授業に集中した。
不思議な事に、初めて参加した魔法の授業の内容も、何故かスラスラと琴子の頭の中に入ってきた。まるで一日前にその範囲を予習しておいたように。
「な、なんか凄い理解出来るよ……!何で……?」
琴子は驚いた顔でラーヴァに尋ねた。
(まぁ、体を共有してるから俺の持ってた知識が発揮されたんじゃないのか?)
「感謝……感謝だよ……!」
(お前……いくら感謝してるからって急に一人で合掌するのは止めた方がいいぞ。端から見たらおかしい奴だ)
「ご……ごめん」
(で?次の授業は何なんだ?)
「次は……野外教習所で魔法の実戦訓練らしいよ」
(あー良いね。座学よりなんぼか面白そうだ)
ラーヴァのテンションが少し上がった所で、琴子は教習所に向かった。
琴子は転移石を使って一階まで降り、そのまま外に出てしばらく歩くと、アーチェリー等で使う丸い的のような物が、一定の間隔を開けて、プカプカと風船のように浮かんでいる。そんな場所にたどり着いた。
既に同じクラスの生徒達は全員着いており、琴子が一番最後だった。
「よーし、じゃあ三井さんも来た事だし、今日の実戦授業の内容を説明するぞー。皆ここに来た時点で薄々わかったかも知れないが…、今日は魔法のコントロールの訓練だ。使う魔法は何でも良いから、とにかく魔法をあの浮かんでいる的に当てる!自分の使う魔法をちゃんと正確にコントロールするのがキモだな!」
アオメが生徒達見ながら、大きな声で言う。
「あ、後言い忘れていたが、訓練に入る前にこの指輪を指に着けてくれ。この指輪には的と五メートルより近く接近すると、音がなる仕組みだ。この指輪から音が鳴らないように、的に近付き過ぎないようにして頑張ってくれ!」
「「「はーーい!!」」」
アオメが生徒一人一人に指輪を渡し、生徒達はそれぞれ友達と喋りながら、訓練に入る。
「それじゃあ、私も頑張ろうかな。……コントロールにはそんなに自信ないけど……」
琴子も指輪を渡され、少し遅れて他の生徒達に続き訓練に入ろうとする。
そんな琴子に後ろから声がかかった。
「ねぇ、三井さん……だっけ?良かったら私と一緒にこれやらない?」
「?」
琴子が声に気付き振り向くと、そこには琴子より少し慎重が高い、少し茶髪が混じった赤髪を肩辺りまで伸ばした、キリッとした女子が立っていた。
「えっと……すいません、まだ名前を覚えてなくて……。あなたは?」
「私の名前はクロムウェルよ!クロムでもウェルでも自由に呼びなさい!」
「じゃあクロムさんで……」
(俺ウェル派)
「それにしてもクロムさんは何で…私と一緒に訓練を?別に一人でも出来るのに……」
「全く……、寂しい奴ね。「別に一人でも……」なんて友達のいない奴が使う言葉よ!?」
(それは決めつけだろ)
「それに二人でやった方が楽しいじゃない!!」
「そうなんですか……」
「後もうひとつ言うと……私と組んでくれる人がいなかったからよ!!」
「(あなた(お前)友達いないんかーい!!)」
琴子とラーヴァの言葉がキレイに重なった。
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