ニラニウス学園-7
琴子が自分の部屋に入り、明日の準備をしてから眠った、その夜。
「うっし!活動開始ぃ!」
ラーヴァが目を覚ます。
「さってと……ムガイ」
「はっ!」
ズザッ!と、どこから琴子の部屋に入ったのか、何もない空間に突如ムガイが現れた。ムガイは何故か部屋に置いてきぼりあったのだろうこの学園の制服を着ている。新品でシワ一つない青い上着に、赤色のネクタイ。
「ムガイ、お前昼間の自由時間は何してたんだ?」
唐突にラーヴァが話を切り出す。ラーヴァが自分の意思で行動出来るのは琴子が寝ている間、約九時間。無駄な事はあまりしていられない。
「この学園内の施設を一通り回りました。パンフレットに表記されていた物は一応全て回ったつもりですが」
「……ということは俺達がいた研究室の近くにも来ていたということか?」
「ええ、一応行ってみたのですが思ったより部屋が多く……。一つ一つ見ていては時間が足りなくなると思い、違う階に行きました。」
「……わかった。それで、何か発見したことはあるか?」
「はい、魔王様に見せていただいた魔力を感知しました」
「!、本当か!?どこでだ?」
「…大量の研究室がある、第二校舎の二八階です。しかしあまりにもこれ見よがしにあったため……何か罠があるかも知れません」
「そんな近くにあったのか……。くそ、琴子に魔力感知を教えておかないといけないかもな……」
「……それと魔王様、私の間違いかも知れないのですが……」
「なんだ?」
「その魔力に……見覚えがあります。」
「なに……?どいつのもんだ?」
「……北の魔王の部下……「ネイビス」の物かと……」
「あ!?北の魔王の野郎が絡んで来てやがるってのか!?」
「もし私の感知が間違っていなければ恐らく……。」
「北の魔王がか……。ってなると、白竜を差し向けたのも北の魔王かよ……。っても何のためにだ?まさか俺を殺すためか?白竜ごときで俺が…」
「……魔王様、恐れながら今の魔王様の体は……」
「……あ!くそ!!そういや俺の体琴子なんだった……。」
「北の魔王は昔からかなりの「戦闘狂」……。今回そのターゲットが魔王様に……」
「あ!?ふざけんなよ!何でこんなタイミングで……」
ラーヴァはチッ、と小さく舌打ちをして、顔をしかめる。
「しかし……これで今回のスズトからの依頼…ほぼ終わっちまったんじゃねぇのか?」
魔力の出所も判明、目的も大体わかってしまった。
「どうします…?私は別にこのまま魔王城に帰ってもいいですが」
「……いや、恐らく俺がこの学園に来たと言うのは北の魔王のやつにも伝わるはずだ……。」
「魔力をこの学園に残していたのは、私達をここへ誘導するためだったと?」
「まぁ、そこまで意図があったかどうかは怪しいがな……。何にしても北の魔王の野郎には今は絶好のチャンスだ。この俺がほとんど無防備でいるんだからな。ぜってぇ今のうちに一回は攻めてくるはずだ……。返り討ちにしてやるぜ。ニラニウスにも(勝手に)協力してもらってな……。」
ラーヴァがニタァと笑う。少女の顔なのでまだ可愛らしさがあるが、邪悪な笑みだ。
「……わかりました。」
「おう、もう下がっていいぞ」
「では」
ムガイが現れた時と同じように、音もなく消える。
そして再び部屋にはラーヴァだけになり、部屋の中に静かな静寂が訪れる。
(……ムガイにはああ言ったが……、何でこの学園に北の魔王の魔力があるんだ?白竜の体の中の魔力は徹底的に隠していたのに、ここでは丸出し……。この二つの魔力は関係ないのか……?白竜を差し向けたのは……俺達が出てくるのを見越しての行動だったってのか?。……やっぱり何か違う気がするな……。もう少し、この学園にいるしか無さそうだ。……何にせよ本当に北の魔王が俺を目標にしたならここに来るはずだ。この学園には腕の良いやつもたくさんいる。防衛地点としては申し分ない……。)
「取り敢えず……ムガイが魔力を発見した二十八階に行行ってみるか……」
ラーヴァは部屋のドアを開け、第二校舎の二十八階に向かった。
急激な展開。
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