ニラニウス学園-5
「いてて……。まぁ、暗くて陰険な研究室だけど、全然自由に見て行ってくれていいよ。……危険な物とかも大有りだけど」
「お前今ちっちゃい声で何て言った?」
クルスが頭に出来た大きなこぶを擦りながら言う。
「お前危険な物がどれか教えろ。琴子の前から撤去させる。とりあえず一番の危険物のお前からだな。そーれい」
「何でまず俺を研究室から締め出すんだよ!あっ、やめろ持ち上げるな俺を!教えるから!危険物教えるから!」
「あ?この部屋にお前以上の危険物あんのかよ?」
「あるよ!ほらあそこ見て!あの箱!ボックス!あの箱を開けると中から大量の毒を持った二メートル強の大きさを持つムカデ、「ジャイアントピード」が無限にわき続けるんだよ!」
「お前何でそんなもん持ってんだよ!つーか琴子がその箱に手ぇ掛けてんだけど!おおい止めろぉぉ!!その箱開けんなぁ!!」
「ぐべぇ!」
ミギワが持ち上げていたクルスを床に叩き落とし、琴子を止めようと手を伸ばす。
「え?」
だが無情にも、ミギワの手が届くよりも速く、琴子が箱を開けてしまった。
ズニュル。
と、箱の中から不気味な音が鳴る。
そして次の瞬間、箱の中から細長く大量の黒い節で出来た巨大なムカデが飛び出してきた。
体の節の一つ一つから細い足が生えており、中々気持ち悪い。
「うおおおお!!やべぇ!ミギワ!速く箱の蓋締めろ!」
「いやいやムカデが凄すぎて近付けないんだけど!ツーカー琴子がやべぇ!あんだけ近くにいたから食われてんじゃねぇのか!?」
「あながちあり得る!」
「あり得ちゃダメだろがよ!くそ!部屋が壊れても文句言うなよ!「雷撃」ぃ!!」
ミギワの右手が鋭く発光、バチッ、バチッと弾けながらムカデに突撃する。
(うおお!!そうだ、あいつの得意魔法「雷魔法」だった!やべぇ!想像以上に被害が出るかもぉ!!)
「ギガガガガ!!!!」
ミギワから発せられた雷が箱から体を出していたムカデ達に命中。ムカデ達は壊れた器械のような声を発して黒焦げになる。
「ミギワァ!攻撃の手ぇ緩めんな!常に攻撃してないと際限なく出てくるぞ!」
「マジでお前危険な物持ってるな!」
そう言っている間にも、箱の中からまた新しいムカデが現れる。
「くそが!「双雷撃」!!」
ミギワが両手から電撃を放つ。
「「「ギギィィ!!」」」
両手から放たれた電撃は、確実に先程よりも多くのムカデを倒す。
(……?そういや、こんだけムカデがたくさん現れているのに琴子の悲鳴が聞こえないな……。さすがにもう食べられたとかは無いだろうから……。もしや……)
「琴子ぉ!聞こえるか!もしできたらその開けた箱を閉じてくれ!!」
「はぁ!?おいミギワ、そんな事出来るわけねぇだろ!こんな大量のムカデのど真ん中で無事なはずが……」
パタン
「……?ムカデが止まった……?まさか」
「あ・・あの、すいません。ちょっと驚いちゃって……」
琴子の手が箱の蓋を閉めていた。
「うおい!!マジかマジか!!どうして無事なんだい!!?」
クルスが興奮したように大声で言う。
「いや……私にもわかりません……。気付いたらムカデが私を避けていて……」
(俺の魔力にムカデどもの本能が危険だとでも言ったんじゃねぇか?知らねーけどよ)
ラーヴァの言った理由がおそらく合っているのだろうが、そんな事を言っても信じてもらえないだろう。
「まぁ、何にせよ無事で良かった。クルスも取り敢えずこんな危険なもの持ってるんじゃねぇ」
「それはまじですまんかったって!まぁ、もう危険な物置いてないからさ!」
「それでは……これはなんですか?」
琴子が近くの棚に置いてあった、琴子と同じ位の大きさのビンを取り出す。なかには青色の液体が入っており、そこにはなにか小さな人間のような物が、腹の中の胎児のように頭を下にして浸けられていた。
「おお琴子ちゃん。それは俺がここに入学して間もない頃に作った「クルス式ゾンビプロトタイプ」だよ。最初にしては上手く出来たと思ったんだけど……。それ精神が崩壊しててね、そのビンから出しちゃうと目につくもの何でも食べちゃうんだわ。だからそのビンの蓋開けないでね~」
パキュ
「あ……」
琴子の顔がドンドン青ざめていく。
「は……はは、まぁ、仕方ない仕方ない……。俺達死んだなこれ」
「貴様ふざけんなよぉぉ!!!」
この日、クルス、琴子、ミギワは、ビンの中から解き放たれた「クルス式ゾンビプロトタイプ」から、中々来ない琴子を探しに来たスパーキーが研究室に来るまで逃げ回ったのだった……。
(もう失敗作を思い出として部屋に取っておくのは止めにします。)ニラニウス学園某生徒談。
読んでいただきありがとうございます!