ニラニウス学園-4
ニラニウス学園第二校舎、カタカナの「コ」の字の縦の棒に当たる部分。
全五十階からなるその校舎の二十八階部分。
第一校舎の一階とは全く違う、ひんやりとした壁。細い廊下には大量の扉が付いており、おそらく一つ一つが研究室なのだろう。
そんな場所に、琴子は転移した。
(えらい地味な所だな。……つまらなそうだな)
「確かに……ちょっと暗いね」
少しびくびくしながら琴子は廊下を進む。
「見学とか…させてもらえるのかな……?」
(知らねーよ。取り敢えずノックして入らないとはじまんねーだろ)
「そ、それもそうだね」
ラーヴァの言葉を受け、琴子は近くに合った扉の前で立ち止まる。
そしてノックしようと、手を扉に近付けた時、
「オゴォォォォ!!!」
扉が内側から勢い良く開き、中から足の筋肉がやたら発達した小型の恐竜のような生物が飛び出してきた。
「!?!?」
「ヤベェ!生きが良すぎた!!」
それに続いて白衣を着た男性が飛び出してきた。
「!?!?」
「ああくそ!戻れ戻れ!!」
廊下を物凄いスピードで走り去った恐竜を追いかけ、男性もヨタヨタとそれを追いかけていった。
数分後……。
「オゴッオゴッ……」
「痛たたた……」
恐竜と男性は、長身で少し筋肉質な新しい男性にヘッドロックされながら戻ってきた。
「はぁ……全く、近くに人がいたらどうするつもりだったんだこら」
「わーた。分かりやした、だからこのヘッドロックを外して……って、人いるじゃん!俺の研究室の前!」
「は!?おまふざけんな!!」
そう長身の男性は叫ぶと、一目散に琴子に駆け寄ってきた。
「っと……怪我は無いみたいだな……良かった。……すまない!あそこのバカのせいで危険な目に会わせてしまった!」
パン!と両手を合わせ、大きな体を小さく丸めて、男性は琴子に頭を下げた。
「い、いえ!そんな事は……すいません……」
(なんでお前も謝ってんだよ!本当に危険になればお前の魔力暴発させればあんなやつ逃げて行ってたよ)
(私魔力暴発させれるの……?)
(無理やな)
(……)
「ほ・・ホントにすまねぇ……。俺がちゃんと管理してれば……」
ずるずると廊下を這いずりながら、もう一人の白衣姿の男性もそう言う。
「それで……君はここに何のようで?見たところ高等部の生徒じゃないみたいだけど……。」
「あ……今は見学で……」
「ああ、学園長特有の自由時間か。あの人案内とか苦手だからな」
「ん?それでここに来てるってこたぁ・・研究室の中が見たいのか?」
白衣の男性が琴子に下からそう尋ねた。
「あ、はい……」
「マジか!よっしゃ!見てけ見てけ!」
「お前……なんでそんな自分の研究室自信満々に見せれんだよ。お前の研究室学園内で何て呼ばれてるか知ってる?」
「え?なに?」
「墓地、学園の恥、「ピー!ピー!」」
「モザイクかかったけど何て言ったの?怖い怖い!!……ん、ま、まぁ入れ!墓地じゃないから!」
「あ……大丈夫ですよ?」
「らっせい!しゃあ!!クルスの研究室へようこそ!」
廊下も明るく無かったが、クルス(白衣の男性の名前)の研究室はさらに暗かった。
「お前、電気付けろよ」
「あ?なぜかこの部屋だけ電気が送られてきてねぇんだよ」
「お前……それもうこの研究やめろってことなんじゃねぇの?」
先程までクルスをヘッドロックしていた長身の男性、ミギワが呆れたように言う。ちなみにミギワは白衣ではなく、迷彩柄のTシャツを着ている。体つきがいいので、軍隊か何かに所属している人のようにも見える。
「さて琴子ちゃん。俺のしている研究が知りたいかい?」
「は、はい。」
「そう言うと思っておりましたっと!それでは発表します…俺のしている研究はぁ……!「安定して存在できるゾンビを作る魔法」を開発することでーす!!」
「そんな明るいテンションで言う事でもないな」
(ゾンビ作ってたら墓地って呼ばれてもしゃーねーだろ)
ミギワとラーヴァの冷静な突っ込みが入る。
「うっせーな!ま、まぁ、そんな怖い事はやってねーよ。ゾンビにするって言っても、一定時間元の肉体を再生させて、そこに魂をぶっ混む。それだけだ。まぁ、それが難しいんだけど……」
クルスは、はは……と少し自虐的に笑った。
「取り敢えず目標は人間のゾンビを完成させることなんだ。けどそれが難しくてな。近々動物の死体が大量に入る予定があったんだけど……それが急に無くなってな。研究が途中止めになっちまったんだ。」
「死体を仕入れるって……お前、良く許可されたな」
「ああ、ギリギリアウトだった」
「そうか……ってん?それだめじゃね?」
「うん、それのペナルティで電気止められたんだもん。多分」
「お前……」
ミギワは右の拳をゴツン!とクルスの頭に叩き込んだ。
読んでいただきありがとうございます!