第3節︰辺境村の豊穣祭(未完成)
その後、ユウ達が村の中に入るとそこには沢山の村人達がユウの帰りを待っていたと言わんばかりにユウの周りを囲う。
その際の沢山の歓声にたじろぎつつもユウは村人の人口の多さと活気に驚いていた。王都から遠く離れた地でもこんなに栄えた村があるとは思わなかったのである。
ユウは今まで王都の警備や魔物の多い危険区域の等の看守任務しか受けたことがなかったため、外の世界の広さを知らなかったのだ。
一段落して落ち着いた後、昼ご飯にフィネルの手作り料理をご馳走になった。
フィネルの料理は王都でいつも食べてるものと違い、手の込んだ郷土料理ばかりでどれも美味しく、ユウは胃袋を完全に掴まれたのだった。夜ご飯も作るので楽しみにしておいて、との事なのでユウはその時まで村人達と談笑をしたり、子供達に稽古ごっこのようなもので遊んだりと楽しい時間を過ごした。
そんなこんなでユウ達はすっかり村の和やかな雰囲気に溶け込んでいた。
そして夜になり、フィネル達が言っていた祭りの時間となった。
内容としてはこのタイニール村で奉られている豊穣の女神とやらが奉られている祠に向かって日頃の感謝と今後の豊作を願い、踊りをするというものだった。
村人のお姉さん、お兄さんが露出度の高い衣服で踊る中をユウはフィネルが作った料理を食べながら見ていた時、踊っている村人と同じ衣装を着たフィネルが飲み物を二つ持ってユウの隣に座った。良かったらどうぞと手渡され、ユウとフィネルは杯を交わす。
「乾杯」
コツンと木製のコップの子気味良い音が響く。
中身を見るとりんごジュースのようで、ユウはそれを一口飲んで驚く。今まで飲んできたりんごジュースよりも遥かに美味しく比べ物にならなかった。
「すごく美味しいよ、これ!なんだか林檎より林檎って感じだ!」
ユウの反応をフィネル見て嬉しそう笑う。この村で採れた林檎を絞った村の名物のジュースで甘さならどこにも負けないと自慢げに話した。
「お祭、楽しめてますか?今日はお礼を兼ねてのお祭りなので、皆さん張り切って踊っているんですよ」
フィネルの言葉にユウは勿論と答えた。村の人はみんな優しく迎えてくれて、ご飯も美味しくてこの村に来て本当に良かったと思えたのだ。
「今日は本当にありがとう。今回が初めての遠い場所での任務で実は少し不安だったんだ」
「でも、任務を終えて、ここの村の人達と巡り会えて、本当に良かった」
「それは良かったです」
「それと、フィネルの料理凄く美味しかった。毎日食べたいくらいだよ」
「ま、毎日って……!その、それってもしかして、その……」
「ん、どうしたんだフィネル?顔が赤いぞ」
「い、いえ、なんでもないでひゅ!」
「それならいいんだけど……」
「天然のたらしで、朴念仁って救いようがないと思わないかしら。ねぇミリィ?」
「そうだねー。お姉ちゃんも優しくされてコロっと落ちちゃったもんねー」
「はぁあ!?お、落ちてないわよ!適当な事言ってんじゃないわよ!」
「きゃー♪」
「待ちなさい!今日という今日は許さないわ!」
「ユウさん、旅って楽しいですか?」
「どうしたんだ、藪から棒に」
「私、この村の外に出たことがないんです。だから、外がどうなってるのか知りたくて」
「」
「」
「そうなんですか……」
「私、外の世界が見たいんです」
「父と母は冒険家で色んなことを知ってて、昔私によく話してくれました」
「ただ、もう思い出せなくて。子供の時、毎日寝る前にせがんで聞いてたは覚えてるんだけどなぁ」
「そうか、この村も人魔大戦の被害に……」
「はい。丁度ここで私が生まれて、滞在していた時にこの村の人を庇って……」
「」
「あ、えと、ごめんなさい!勝手に感傷的になっちゃってました」
「なんだか、ユウさんがお父さんに似ててつい言葉に出しちゃいました」