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沈黙者の唄  作者: 小林 豊
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空は高く澄み渡っている。

御所の裏手の山山は柔らかに青めて、慎ましやかな命が胎動している。春と夏が出逢い交わる、優しくて、それでいてどこか不安定な気配だ。


元元此処にいる者達は感傷的で憂さを好むたちだ。今年はそれに拍車がかかって、御所全体を大災害をいつ来るかいつ来るかと恐れ俟ち詫びる焦りや好奇心に満ちた空気が取り巻いていた。


睛にぼんやりと翠を映し、ほんの少し前まで、山は薄紅ではなかったか──と、玉藻は弓を引き絞りながらふと思った。いけない。ひとつまばたく。両ので真っ直ぐに的を見詰める。


ひょう、と空気を裂いて、見事矢は的に突き刺さった。中央の黒丸の外、白丸の部分だ。せなに静かな驚嘆の息遣いが向けられる。玉藻は的を見据えた儘、ゆっくりと吐息しつつ筋肉を弛ませた。それでも背筋は伸びた儘だ。身体の緊張をほぐしつつもまだ幼さの残る顔に精神の緊張を張り付け佇む姿は、玉藻という青年の真面目さを雄弁に語っている。が、その張り詰めた表情は、背後から聞こえてきた拍手の音に振り返ったことで薄れる。


「流石は玉藻殿。」

「夏草。」


そして音の主を認めると、緊張はなりを潜め眼元に微笑みがうかんだ。其処に立っていたのは玉藻と同じくらいの年恰好の青年だった。実際歳は丸一年と変わらない。が、彼の祖母から譲り受けたらしい癖のある髪と大きく円い眼が、彼を実年齢よりも幼く見せがちで、それが密かな悩みぐさになっていることを玉藻は知っていた。夏草は揶揄うような口許とは裏腹に、純粋な敬愛の念を眼差しに宿して玉藻に笑いかけていた。


「嗚呼、本当に玉藻殿の弓の腕は素晴らしい。」

「本当だ。まったく、興で勝負しようにも、端から決着がついているようなものだ。」


部外者である夏草がその場の張った空気をものともせず聲を掛けてきたことが、人間の緊張も解いたようだった。玉藻の弓引きを一部始終傍で見て圧倒されていた青年達も、ようやく言葉でもって称賛する。


「そんな、買いかぶりすぎですよ。」


玉藻は眉を八の字にして、困ったような笑っているような表情を学友に向けた。二人は再びぐっと息が詰まる。何か、己には到底敵わないものを幾つも同時に見せ付けられ、打ちのめされた心地だった。そんな二人を一瞥し、夏草が口を開いた。


「さて、玉藻殿。お楽しみのところ申し訳ないが、國書頭こくしょがしらがお呼びだ。」

「父上が。相わかった。」

「ということで、すまないがこいつはここで失礼する。」

「すみません、石橋殿、青柳殿。また青竹院しょうちくいんにて。」


玉藻の半歩先を行く夏草は、真っ直ぐ行けば國書寮へと続く筈の道を左へ曲がった。そしてそれに気付いた玉藻も指摘するでも正しい道へ行くでもなく黙って付いていった。夏草は王宮のぐるりを囲う築地ついじの西門を潜り、王宮の西の通りへ出た。その通りを北へ向かって二人並んで歩く。当然の事ながら道中、國書頭こと玉藻の父の姿は無かったし、元元逢う心算つもりも無い。


「まったく、卑しい奴らだな。魂胆が見え見えだ。」


砂利が擦れる音がする。言葉は先ほどの二人へ向けられたものであるのに、夏草の呆れ顔は眼の前の玉藻に向けられていた。玉藻は苦笑する。玉藻としては、夏草がそうであるほどには周囲の人間が自分に近付いてくることを厭うてはいないのだ。夏草のこの態度は、彼の潔癖感や、自らをたのむ処が他人ひとよりも少少厚い性格から来るものなのだろう。小さい頃から仲のよかった従弟の性格を玉藻はそう評する。


この玉藻という青年は見たところ唯の柔和そうな青年だが、実は王家の血を引いている。そして夏草もまた然りである。が、二人とも王位継承権は持っていない。というのも三代前の王の政策が故であると二人は周囲の年長者から教えられてきたのだが、三代前の王に直接逢った経験が二人にはあるべくもない。二人に言って聴かせる大人達も、王が健全な心持ちで笏を持っていた頃にも、それどころか安らかに呼吸していた頃にも、まだこの世に生を受けていなかった者が多い。要は、彼らもそうと教えられた事をさも自分が実際に経験してきたように話していたに過ぎない。ならばいまを生きる者、就中なかんずくは若い者にとって、三代前の王など外物に寄らなければ知る由もない歴史上の偉人である。


三代前の王とは現王から見て曾祖父にあたる人である。彼が自身の父から冠を譲られた時、國は苦しい状況にあった、と、そう玉藻に話したのは現國書頭の父である。國の歴史を筆記し残していく務めを担う國書寮の長として、語る口振りが愛しい子どもに対して昔話を聞かせる時のそれよりも、弟子を教育する時のようなそれであるのは仕方のない事かもしれなかった。


困難の原因は化外けがいの民の制圧である。王の支配を快しとしない者達が公儀くうぎ転覆を目論み蜂起したのだ。烏合の衆かと思われた反乱軍の中には、あろう事か王の名の許に都から地方へ派遣された者がいた。すなわち王の配下の者が叛旗を翻したのだ。都から下りてその土地を治める役人というのは、この世にまします王の意志を地方にまで行き渡らせる、まさしく王の玉梓たまずさである。そして役人の家系の子息は王を支えるに足る才智を身に付けるべく成人まで文武の教養を身に付ける。田舎者共が、そのような経歴を持つ人物を首領の座に据えなかったと考える方が不自然であった。不届き者共は当てずっぽうな暴漢集団ではなくある程度の秩序を持った軍であったのだ。そして公に刃を向けるということは生半可な覚悟での行為でない。奴らなりの堅固な正義と壮大な理想を旗に書き大大的に掲げていた。「防衛」「護衛」が己の生命を懸ける理由である公儀軍とは気概という点で余程勝っていた。故に謀叛の鎮圧は公儀側には思いの外苦戦を強いられた。その戦いぶりに、謀叛計画が一朝一夕に練られたものではないことも悟られた。


後に首謀者の名前を冠して菅乃根すがのねの叛乱と喚ばれるこの戰でようやく公儀側が勝利を収めた時、公儀軍も逆賊も多くの人材を土に還していた。これは公儀にとって大きな痛手であった。首領一族は官位剥奪の上領地も没収されたが、生命を懸けて公儀を護った者達への報酬はそれ以外に殆ど無かったのだ。当然ながら不満が募る。当時の王は慈悲深く、毎日のように聞かれる歎訴の聲をその繊細な心が受け止め切れなくなったのか、謀叛鎮圧から間も無く崩御された。


かくして新王は先王の難しい遺産を相続せざるを得なくなった。彼が、三代前の王である。一体どうしたものかと考えあぐねた王は一つの策を実行する。それが子孫の臣籍降下であった。


要は、王位継承権を保有する者の数を減らせば、彼らを養育するためにかかる費用も減らせるだろうとの考えであった。当時の王から見て、初の男孫より後の子孫は臣籍に下り、以降の王位継承についても男孫の長男を王位継承者とすべしとの法を制定した。形式としては生まれ持った権利を王の許へ返還するというものであった。これにて財政難は完全に快復したというわけではなかったが、それでも王が玉座に座った頃よりは改善したものだ。


そしてこの王宮法規に則り王位継承権を王に還したのが、玉藻と夏草の直接の祖父にあたる人物である。二人の祖父は、件の法を定めた王の三人目の男孫である。すなわち三代前の王とは玉藻と夏草から見ると祖父の祖父、つまりは高祖父にあたる。


玉藻の父曰く、祖父と同じく臣籍に下った大伯父は若い時分に亡くなったらしい。当然ながら父は存命中の大伯父に逢った事は無く、その情報は祖父から聞かされたものだろう。上の兄二人とは少し歳の離れた末成うらなりであった祖父は兄に、特に境遇の近さもあってか二人目の兄によく可愛がられて育ち、祖父もその立場を甘んじて享受していたようだ。故に最も身近な存在とも言える兄の、成人を俟たない早世は祖父に少なからず影響を与えたようだった。祖父は自身に起きた事を文字に残すようになる。


周囲の大人達はそんな彼を感傷的な子どもと捉えたらしかった。その推測は間違ってはいない。が、十分でもない。祖父は人の世の出来事に関心を抱いたのだ。


高祖父は末の孫である祖父を可愛がった。無論上の二人も然りだったのだが、一番上は将来の王であるという意識が先行したのか、その愛情には師弟への鞭が多分に含まれずにはいられない。その点下の二人はそのような事情抜きに触れられたらしかった。そして真ん中は夭折ときたものだから、高祖父の、祖父への可愛がりは拍車がかかる。高祖父はよく、祖父や大伯父を自身の住まう紅梅殿に呼んでは、おおよそ真とは思われない神話や昔話を聞かせたものだった。真面目な大伯父は義務感から熱心に聴いたが、祖父は純粋な関心から耳を傾けていた。


そんな祖父は、青竹院で学ぶようになる頃には、既に興味のある事柄を自ら書物に依って知ろうとする子どもであったらしい。どうやら、祖父が生まれる以前にあった戦爭について高祖父に尋ねた時、自分で調べ考えるよう勧められたようだった。進んで戦爭に関する書物を読んでは其処へ兄と自身を投影させた祖父は、早熟な歴史家であった。記録するという行いの意義を早期に見出し、心から恃んだのだ。座学の成績は群を抜いて甚だ芳しく、祖父は成人すると國史纂修を担う國書寮に出仕するようになった。そして、やがて後ろ盾も捗捗はかばかしく國史への造詣も深い彼が國書寮の長官になったことも自然の成り行きであった。


祖父がその筆を置いた後は、彼の長男である玉藻の父が後任を引き継いだ。そして行く行くはその息子である玉藻にその役目が回ってくる事になっている。玉藻の世が世なら國の第一位になっていたかもしれない確かな血筋に加え、既に拓けているように思われる将来の展望故に、彼に阿諛追従あゆついしょうする者がいないわけではない。が、玉藻は自身の立場に慢心する程傲慢ではなく、また執着する程貪欲でもなく、寧ろそれを自己の責務と心から捉えるくらいには実直な青年に育った。周囲の人間と友好な関係を築きたいと望むし、相手も自分との関わりにおいて同様の事を求めるのであれば玉藻はそれを拒否しない。ちょっとした弓引きの勝負の誘いに乗るのはその為だと言ったら、敬愛する祖父を同じくする青年は苦い顔をした。


「玉藻は純粋な友人付き合いだと思っていても相手はそうは思ってないんだ。」


二人は御所の北の細流せせらぎに辿り着いていた。清かな流れは紫味を帯びた岩岩に幾度も割られてはまた幾度も合流する。向こう岸はすぐに山だ。清浄さと厳しさとが調和して周囲のもの全てを包んでいる。この川が國の神話に登場する事を自然と頷かせる。二人はみどりに輝く水面みなもを見下ろす岩に並んで腰掛けている。


「そうかな。」

「そうさ、決まってる。」

青い陽射しが色素の薄い夏草の髪をより軽やかに見せる。


まるで世話焼き女房だ、と玉藻は思う。現國書頭である父が将来その役目を終えた時、玉藻が跡を継ぐことになる。そして同じように、夏草は将来その補佐役になる予定だ。玉藻も夏草もその未来を受け容れている。夏草が玉藻に対して口煩い部分があるのは、まさかきたる時の予行演習でもあるまい。


「それにしても、玉藻は玉藻でたちが悪い。」

「どういう事だ。」

「嫌味がない所が、相手を傷付けるんだよ。」


そう言って夏草は珍しくも憐れびのような表情をした。

「天然も其処まで行くと傲慢と思われるぞ。」


これは流石に心外だと思った。玉藻は少し眉を顰めて、

「俺の何処が傲慢なんだよ。」

「誰も玉藻が傲慢だとは言ってない。傲慢に『思われる』と言ったんだ。傲慢な奴だと誤解されてしまうとね。」


そう言われても玉藻には非難される理由がわからないのだから直しようがない。けれどもいまそのように言えば、夏草がそれこそ鬼嫁よろしく、まだわからないのかこの鈍物がと言わんばかりに説教をかましてくるであろう事は自然と推測されたので玉藻は言葉を飲み込んだ。可愛らしく見える従弟の我の強さを玉藻は知っている。玉藻の無言を反省ととった夏草は組んでいた腕を解いた。


「兎に角だ。先刻さっきの石橋殿と青柳殿は元元は地方役人の出だった筈だ。あまり関わるな。」

「出身は何処だっていいじゃあないか。」

「魂胆が気に入らないと言ってるんだ。努力もそこそこに上の者にへつらう処が嫌なんだ。」

「そういう処、本当に叔父さんに似てるな。」


夏草の実父は現在、彼の実兄である玉藻の父の補佐に当たっている人物だ。が、それは色色な意味で適切でない。彼は幼い頃から被ってきたらしい不利益の理由を、自らの「弟」という立場に帰している。上昇志向が強く、それ自体も美徳として、自らを頼る部分が大きい彼には念じ得ないらしかった。自分の努力と力とを何よりもあてにしている部分は兎も角として、その如くでない者を忌み嫌い嘲笑する態度は反感を買ってしまう、と困ったように言ったのは、兄である玉藻の父だった。


「父上の事はいまはいいだろう。」

玉藻はどちらかと言えば褒めた心算だったのだが、夏草はむっとする。


「玉藻こそ、そういう飄飄とした処が伯父様にそっくりだ。考えてもみろよ。怒ったり嫌味を言ったりしてるのに何でもない風にあしらわれたら却って腹が立つだろう。」


叔父の話題を出した途端にこれだ。また叔父と言い爭いをしたのかもしれない。玉藻は今年の睦月に逢ったきりの叔父の、峻峭な顔立ちに眼光が厳しく炯炯としている風貌を思いうかべる。尤も、「逢った」というのは玉藻の心に添いすぎる表現かもしれない。叔父は憎悪する実兄の息子たる玉藻の事も同様に嫌っているらしかった。新年の祝賀での親戚の集まりでも同じ場にいはしたが、会話と呼べる会話はしていない。挨拶はしたが、それだけだ。人の好き好きなど自分の言動では簡単に変えられるものではないと考える玉藻ではあったが、それでも一方的に、しかも自身にはあずかり知らぬ内に徹底的に嫌われる事態は、可能ならば無い方が良いと思うのだった。


祝賀での叔父の態度は何時にも増して酷かった。叔父の愚痴っぽい性格に慣れているであろう玉藻の父や夏草も辟易したくらいだった。祝賀の四日前の事、元旦に行われた卜占が理由である。


新年の吉凶を占うその儀式で、今年は世紀の大凶年と結果が出たのだ。それだけでも新年早早一大事だが、主たる問題はその後だ。


「あ、」


従兄への恨み辛みを語っていた夏草がかすかな悲鳴を上げた。何、と問うよりも先に玉藻もその理由を知る。水面には穏やかな波紋が幾つかできている。二人は滴の落ちてきた方へ視線をやった。


「晴れてるじゃあないか。」

「狐の嫁入りか。」


言っている内に雨粒は軽快な調べを奏で出す。あっという間に雨足はまさりゆき、初夏のそれ程高くない気温の清清しさは、足早に膚寒さへと転化していく。二人はひとまず降りかかる雨を凌ごうと、川から一番近い、御所の北門に寄る事にした。


北門はさして大きくない門だ。御所の真南の門は流石に正門とあって朱塗りの三間一戸の楼門だが、此処は四脚門よつあしもんだ。しかし戴いた切妻屋根が大きくせり出し、数人をその懐に抱え込むくらいの余裕はある。着物の袂を翳して駆けてきた二人に警固役の若い下人は会釈はしたが、すぐに気怠げに壁に寄りかかった。


「参ったな。降るとは思ってなかった。」


人膚に温まった水が項に触れるのが気持ち悪いのか、夏草は襟足をさすりながら呟いた。濡れたくちびるが先程よりも若干血色悪くなっている。


「嗚呼。けれどこの調子ならすぐ止むさ。そもそも、雨雲が無いんだから。」


ひさし越しに見上げる空は明るい。勾配のある屋根を滑り伝った滴が、廂の先で結び垂れる。視界の端では、はたはたという軽やかな音を伴って、門の傍に植わった柘榴ざくろの葉が揺れ煌めいている。


玉藻の言葉を聞き、夏草は口許に冷ややかな笑みを刷いた。その視線は王の住まう紅梅殿の方向を向いている。


「これは吉兆だな。」

「何。」


その口調は叔父によく似ている。皮肉や嫌味を言う時の叔父の口調に。直感的に碌でもない意味だと察した玉藻の聲にも、無意識に非難の調子が籠められた。


「得体の知れない牝狐は去るって報せだ。」

「夏草、」


年明けの卜占は、祭祀を務める神祇省じんぎしょうの務めである。今年の卜占を行った神祇頭じんぎがしらは、蒼醒めた顔で一言、竹の花が咲く、言ったという。その様子にただならぬものを感じ取った王が怖怖とどういう意味かと問うと、震え震え今年から来年にかけて空前絶後の忌年であると語ったらしい。巨大な禍事まがごとが王宮全体に襲いかかろうとしている。王家はいままさに過渡期にあり、出方次第では迫り来る困難を跳ね返す事にもなろうが、また反対に屈する結果にもなろう。いまできる対処の一つとして、王宮へ新鮮な風を吹かせなさい、と、神祇頭は王に告げたらしい。


先王と先代の神祇頭は昵懇だったらしく、その影響で、彼らの息子達である現神祇頭は現王と幼い頃からの友人同士であり、腹心の部下である。王は親友であり且つ信頼する部下の提案を受け容れ神祇頭の娘を後宮へ迎える事を決定してしまったから、御所は年明けから上を下への大騒ぎになった。当然、周囲の眼には、神祇頭が二つの立場を利用して自らの地位を更に磐石にせんとしているようにしか映らない。無論玉藻の叔父であり夏草の父である人物のその双つの冷たい光にも同様に映ったのだ。


急転直下の王子の結婚には、叔父程に苛烈にとはいかなくとも、新年の祝賀に集結した一族一同苦情を洩らさずにはおれなかった。先代の神祇頭は本来神に仕える者、出自は庶民だ。どのような経緯いきさつで彼が先王と懇ろになったのかを知る者はその場にはいなかったが、王家の血を引く誉れ高い自覚を持つ者達にとって、眼障りである事甚だしい。大いに不平を零す叔父を宥めつつ、皆その言い分には大方同意であった。玉藻と夏草にしてみても、自分達より早くに突然結婚の決まった親族を素直に祝福できない。


玉藻は次期王であり、大伯父の孫、すなわち自身の再従弟はとこである王子の婚礼を思い出している。王は結婚から暫く子宝に恵まれなかったようで、王にとっての従弟である、夏草の父よりも子どもを持ったのが遅かった。王子は品のよい正装が不釣り合いにも思える程に、まだまだ少年という言葉が相応しかった。そして、確かに彼の隣に坐っていた葛葉くずのは姫は美しかった。が、自身の歓迎されざるを膚で耳で犇犇ひしひしと感じているであろう彼女の表情は、奥ゆかしい手弱女たおやめのものとは言いがたかった。そのきつく吊り上がった眼が祝儀しゅくぎに参加した者達の態度を更に硬化させた。向かい風に歎いていれば、家と彼女個人とを切り離して、父の政略の為に嫁がされた彼女に寄り添おうとする者も現れたろうが、彼女はその路をなみしたのだ。


彼女の真意は知れない。彼女を人付き合いを知らぬ痴者おこものと評する者もおり、抵抗の意思の表明だと言う者もいる。そのどちらが正しいのか、或いはどちらも正しいのか、若しくはどちらも間違っているのかわからない。が、ひとつ確かな事は、彼女や彼女の一族を取り巻く大勢の印象は、余程の事が無い限り好転しなさそうだという事だ。


「葛葉様は、神祇頭の妾の娘らしい。しかも神祇頭が神社かむやしろで修行していた頃のね。」

「別に妾の子なんて珍しくないだろう。」

いや、それが、神祇頭は神社にやって来た女に一目惚れして、神の御加護があるからと唆したらしい。神祇頭はすっかり女に惚れ込んだそうだが、しかし矢張出自のしっかりした本妻には敵わなくて、せめて娘だけでもと葛葉様を託して行方を眩ませたんだ。それで好いた女の忘れ形見は可愛くて仕様ないんで、どうにかいい男の許へ遣りたいと考えての策が今回の件らしい。」


胡散臭い事この上ない。心証悪しき者に対して嫉妬も混じり、意図的にしろ無意識にしろ少しの悪意も向けられればいかにも生まれてきそうな噂の内容だ。余りにもくだらないので玉藻は笑えばよいのか貶せばよいのかわかりかねた。夏草もよもや噂を信じているのではないようで、その証に語調も表情もうら明るい。傍らの夏草の向こうの下男は、壁に背中を預けて何でもない風を装っていながら、眼に小さな光が宿っていて、意識はこちらに向いているのが明らかだった。雨降りの一時的な手持ち無沙汰を癒すには、他人の荒唐無稽な身の上話はさぞ好奇心が擽られるのだろう。


「葛葉様には、弟君がいなかったか。弟君は腹違いって事か。」

「私が何か。」

返事は思いがけず背後から聞こえた。二人は驚いて振り返る。


青年が腕を組み佇んでいる。彼もにわかの天泣に降られたと見えて、黑髪に細かな水玉みなたまが散っていて黄や藍に光っている。口角は上がっていて形ばかりは笑顔だが、二人を見据える睛に暖かさは無い。


「雨宿りがてら他人ひとの陰口ですか。感心しないなぁ。」


青年──神祇頭の子息たる瑞垣みずがきは玉藻と夏草を睨んだ。


「今晩の警邏けいら当番の相方と聞きました玉藻殿の姿をお見かけしたから、先に挨拶を、と思ったのですが、」


嫌われているようで残念です、と言いつつ細い眉を大袈裟に下げてみせる。遠い親戚と言えば確かにその通りだが、國史書一族と神祇一族との関係に血の繋がりは無い。玉藻と夏草にしてみれば瑞垣は再従弟の配偶者の弟だ。しかし、祖父が王位を返上して國史書一族となった以上は、二人は最早王族ではない。王家の婚姻によって生じた瑞垣との関係を表現するには、「知り合い」若しくは「他人」が相応しいと二人は思っている。故に、王子の義弟たる瑞垣との関係が極めて希薄であっても不思議はない。事実、玉藻も夏草も、瑞垣と言葉を交わした経験は殆ど無いに等しい。


玉藻はきまり悪そうな顔をしたが、夏草は元元好かない人間のその芝居じみた仕草が鼻についたのか半歩前へ出る。玉藻は従弟の感情に任せやすい性格を思い出しまずいと思ったが時既に遅し。彼はもう口を開いている。ついでに言えば、彼は自身の父に似て自らが敵と認めた者に対して慈悲が無い。


「これは瑞垣殿。いたとは気付きませんでした。流石、人の意表を衝くのが上手い。」


険のある言い方に瑞垣は不愉快さを隠そうともしない。遭遇した場面故に当然と言えば当然だが、瑞垣にも二人に寄り添う気は無いらしい。


北門には柔らかな雨の音が聞こえてきた。瑞垣は北を背にしていた。身体の正面から受ける優しい陽が纏った滴を煌めかす。


玉藻は一人この状況をどうしたものかと、夏草と瑞垣を交互に見遣った。偶然視界の端に入った警固の男は、眼の前で繰り広げられる冷たい戦いに、いかにも傍ら痛そうにもじもじしている。


玉藻は直感的に思う。おそらく、夏草と瑞垣は似通った部分があるのだと。ならば同時に、そのような人物同士を一所に置いて憎しみ合わせる事ほど愚かな選択も無いという事も自然と悟られる。玉藻は一歩進みで、右手めてでそっと夏草を制した。


「すみません、瑞垣殿。國史書纂修の為に、王家のご婚姻を記録する必要があるのです。それ故に葛葉様と、弟君である瑞垣殿の事を話し合っていたんです。ご気分害されたら申し訳ない。」


瑞垣は夏草を睨んでいたが視線を玉藻に寄越した。黑雲母のような睛が真っ直ぐに玉藻の睛を見据えている。半ば閉じられた仄紫色の薄い唇が奇妙に妖しく見えて、玉藻はどきりとする。


「瑞垣殿、すみません。」


自分を無表情に見詰めた儘何言なにごとも発しない瑞垣に不満の念を感じ取って、玉藻はもう一度謝辞を述べた。それにも矢張瑞垣は無言の視線ばかりを返してくる。が、一瞬その光が翳る。


玉藻は夏草を一瞥した。そして、自分を嫌悪の睛で見る青年越しに、門の外を眺めた。玉藻は雨雲持たずの雨がいつの間にか真黑い雨雲を連れて来て、夜迄も掻き垂れ続ける事を仄かに望んだ。しかし現実はそう上手くはいかない。はじめからさ程強くなかった雨は、いまはもう止みかけている。


──憂鬱だ。

晩の事を思い、小さく吐息してしまった。瑞垣が眉を顰める。


「……そうですか。それはそれは、國書寮の事情も知らずすまなかった。」

寄り添う言葉だが、語尾には軽蔑が滲んでいた。


瑞垣が二人の横をぎるその瞬間、土埃の臭いと、その向こうに幽かな白檀びゃくだんの香りを感じ取った。玉藻はそれにつられて瑞垣を振り返ってしまう。そうして、伏しがちに流された黑色とかち合った。静かだが、凪いでいない。またしても玉藻の胸で温かいような冷たいような血がさっと流れた。先に睛を逸らしたのは瑞垣だった。前へ向き直ると、何も言わずに切妻の庇護から脱け出していった。


途端、音を殺した深い吐息の気配が玉藻の意識をそちらへ向かせた。見遣れば、門番の男が背中を壁に預けやや項垂れている。要らぬ気を遣わせていたらしい。すまぬと聲を掛けようとしたが、


「本当に人を化かすみたいな奴だな。」


忌まわしげに吐き出された文句で引っ込んでしまう。夏草は直情的であると同時に後先を考えない。すすんで人付き合いをしている様子の無い彼のこの気質は、専ら一番親ちかしい友人でもある従兄に対して発揮されるものであるようだった。玉藻は苦笑を念じ得なかった。


外を見てみるが、既に瑞垣の姿は無かった。そして、雨は上がっていた。踏み固められた土を泥濘ぬかるみにする事も無しに去っていった。一瞬間大粒の滴にもなりはしたが、元元、青葉を撫ぜるように降っていた雨だった。そんな雨に、それも降り止む間近に濡れる事を避けて駆けて行ったのだろうか。


日没から一刻程して昇りはじめた立待月を合図に向かった正門で、玉藻は瑞垣と落ち合った。警邏の任を放る事は無かろうと予想はしていたが、随分と待ち惚けを喰らうかもしれぬと覚悟していた玉藻には、瑞垣が先に待っていたのは意外であった。腕を組んで閉じた扉にやや寄り掛かっていた瑞垣は、仄白い月灯りの下に玉藻の姿を認めるとさっさと歩き出した。玉藻は砂利を忙しなく擦れさせて瑞垣に並んだ。玉藻が隣にいる事に気付かない筈は無い。要は、「何もしない」という言動で以て、容れざるを雄弁に語っているのであった。


「瑞垣殿、昼間はすみませんでした。」


望月からそれ程欠けていない立待を頼みに、二人とも灯を持ってこなかった。夜闇よやみに顔の輪郭が青っぽく浮いている。


彼奴あいつ……夏草は私の従弟なんですが、口が悪い処があって……。けど、根は悪い奴じゃあないんです。本当に失礼しました。」


瑞垣は漸く玉藻を見た。しかし語頭に小さく鼻を鳴らし、


「なるほど、自分はとがは無くて、悪いのは全部従弟って事か。そうやって優等生になってるわけか。」


かくの物言いに、口先でなく真実に申し訳ないと思っていた玉藻は寄り添う気持ちを一気に削がれた。それに玉藻は優等生という表現も快くなかった。


王宮に出仕する官人子息達の教育機関たる青竹院は、嘗て賢者が弟子達を竹林に集めて行った談義を嚆矢としている。王宮一帯の山山は竹がよく茂っている。青竹院の始まりとされる竹林が王宮の北の小川を隔てた山中のものだという説があるが、かくも竹林が多いと何とも断言できないらしい。現在青竹院と言えば大抵王宮の北西に存在する施設を指す。其処では歴史、神話の座学は勿論、護身、護衛を目的として武具の扱いの基礎も学ばれる。今晩玉藻と瑞垣が二人で歩く事になったのも、青竹院での指示故である。


大元を辿れば、王の意向である。今年の頭の卜占で凶事が襲いかかろうとしている、と来たものだから、王が恐れて、夜間の見廻りを要求したのだ。そして一人よりは二人の方がよかろうとの事で、月に四度見廻る事になったのだ。警邏が導入されてから四月程になるが、別段変わった事は無い。唯、暗闇というのは自ずと不安を煽るものらしく、北門に女が蹲っていたから聲を掛けようとしたがいつの間にか忽然と消えていただの、黑い影が人型になって築地をすり抜けただのと言う者はいた。が、前者は平素から肝が小さい事で揶揄されがちな文房寮長官の三男坊だったし、後者は普段からそんな事をよく言っている喪儀寮の子どもだった。


そのような学友達と長い時間ではないが交わる事が玉藻にもある。そうして、多くの学友達が自分に対して向ける眼に、玉藻はむず痒さを感じている。


玉藻自身は優等生になりたいと思った事はない。良い國を作る良い役人にはなりたいと思う。が、努力していない心算は無いが、努力していると胸を張る事もできはしない。或るものになりたいと望む意志や気概が人をそれにするのだとしたら、自分より遥かに、そう呼ばれるに相応しい人物は大勢いる。例えば、夏草がそうだ。それを思うと、叔父が夏草と玉藻との関係を、自身とその兄とのそれと同様に見て玉藻を毛嫌いするのも仕方がない気もする。


結局の処玉藻に付いて回る評判は、純粋に玉藻の事を見ていないと玉藻は思うのだ。何も本当の自分を見てほしいなどと浅縹あさはなだ色の世迷言をかすのではない。唯、王家の血を引いているから、次期國書頭であるから、自分は肯定されているに過ぎないと思うのだ。皆は神体を持抱えぬ社を拝んでいるのではないか。その内面と周りとの齟齬が呑み込めない。


「他人を貶めておいて、自分は分別あるんです、って澄ましてるんだよな。嫌な奴だな、」


玉藻は眉を顰めていたと思った。これ程にはっきりと敵意を向けられたのは初めてだ。


あの場面に出会でくわした瑞垣が夏草を嫌うのは納得できる。しかし、瑞垣の口振りからすると、彼の嫌悪の矛先は夏草だけでなく玉藻にも向かっているのは明らかだ。上手く繕った心算でいたが方便は見透かされていたらしい。これはばつが悪い。非は完全に玉藻の側にあった。そして此処まで徹底的に拒絶されるのであれば、どうにもなりはすまい。玉藻は却って気持ちを平らげた。


「あの餓鬼犬みたいなのは、夏草っていうのか。あんた、主人ならきちんと躾けておいた方がいいぞ。」

「……瑞垣殿、非礼をはたらいた事は謝ります。けど、私達を侮辱する免罪の札にはなりませんよ。」

「ふん。家の力を借りて俺を潰しにかかるか?」


二人の足が止まる。玉藻は無意識に、瑞垣の前に立ちはだかる格好になっていた。


この町の夜は早い。陽が落ちるのと同時に、人人はその日の活動のあらかたを終える。今晩は比較的月があかい夜だったが、玉藻と瑞垣以外に通りに出ている者はいなかった。


ぼうと照らされた瑞垣の顔が綻んでいるのを認めた。瑞垣は温厚な玉藻を怒らせる事ができて楽しいのだ。瑞垣の意図を察した玉藻は何も言えなくなった。寂しげな虫のが聞こえる。


「一族は兎も角として、俺一人くらいあんたの後ろ盾なら簡単に退けられるんじゃあないか。」


相手の調子に乗らされまいと、玉藻は心を落ち着けた。此方を態と怒らせにかかってくる人間相手に素直に反応してやった処で自分に何の益も無い事を知っている。否、益が無い処か、感情を昂らされた挙句やり場の無い苛立ちを抱える事になるし、体力を消耗するばかりだと知っているのだ。


「そんな事ありません。寧ろ、貴方のお父君の方が立派でいらっしゃる。瑞垣殿を蔑ろにするなんてできはしません。」

瑞垣は聲とも呼吸ともつかず、咽の奥でふぅん、と低く唸った。


玉藻の発言は本心だった。自分の一族は確かに現王家の傍流で、いまは國書寮の役職をほぼ一任されている。だが、二代に渡り王から絶大な信頼を得、且つ寮を束ねる省の長官という立場にある人物を父に持つ瑞垣の方が、実質余程影響力があるのではないか。


玉藻は向き直って歩き出した。今度は瑞垣が玉藻の後を歩く形になる。

「父上の卜占の所為で夜中見廻りに出なきゃならなくなって、あんたもさぞ面倒だろうね。」


どうしてこの男は自分の言葉の全てを非難と捉えるのだろうか。嗚呼、屹度きっと、それは自分が何か悪いのではなく、瑞垣が玉藻に対して反感を持っているからなのだと思う。


「……私と組になるのが嫌なら、院にかけ合ってみてもいいです。今夜は我慢していただくしかありませんが、これから何かある時には、私や夏草とは組になりますまい。」

「けど、幾ら院であんたを避けたって、神祇と國書じゃあどうにもならないだろう。」


鋭い指摘だ。神話も國の正史として伝えられている以上、國書寮と神祇省、すなわち将来の玉藻と瑞垣は全くの無関係でいる事もできなさそうであった。成人の儀式を終えればそう時間を俟たずに実現される未来だろう。生来ああいう気質の叔父は兎も角としても、現國書頭である父は神祇頭の存在を心強く感じている。お互いに補い合う部分があるのも然りだが、矢張神祇頭が國の重鎮であるその揺るがない事実が大きい。ならば、それは玉藻ではなく瑞垣の問題なのではあるまいか。


「瑞垣殿さえよろしければ、私は貴方と友好に付き合っていきたいと思っております。」

「ふぅん。俺の側に付くかい?」


一瞬、どういう意味かと思った。気付けば、出発地点である南門から御所を半周していた。昼間最悪な遭遇を果たした北門はもうすぐ近くだ。此方は鬼門の方角に当たる為か、心なしか闇が周囲よりも深く感じる。そう言えば、御所から見て北東へ行き、川を越えてしばらくすると葬送地があると聞いている。


「年明けの王子と姉上との結婚のくだんで、顰蹙は買ったからね。王家が父上の事を信頼なさってくれてるから面と向かった攻撃みたいなもんは無いが、多くの奴らは神祇家に否定的だ。」


それは事実だ。玉藻の叔父がその筆頭ではないか。しかし親と姉の行為で、言わばとばっちりで多くの白い眼に晒されている筈の瑞垣は、別段どうとも感じていないような口調であった。寧ろ、虚勢ではない真の自信と冷笑が窺えた。


瑞垣はずいと玉藻に顔を寄せた。

「俺と仲良しこよししてたら、神祇に賛同したと思われるかもな。」

それを期待しているかのような口振りだ。


「昼間だったら誰かに目撃されたかもしれないな。月のみぞ、か。」

「それで私の立場が悪くなるとでも。」

「微妙にはなるだろうね。あんたみたいな生まれも素行もいい奴って、打たれ弱かったりするもんだし。」

「それで瑞垣殿に益があるのですか。」

「あるさ、愉快だ、それだけさ。」


葛葉は妾の子云云の浮言が相当気に喰わなかったらしい。嫌な奴は一体何方かと思ったが、心中に湧いたその気持ちはまさか言葉にはしない。憤りと呆れが混ざり、玉藻は答えなかった。瑞垣も言うだけ言って脣を結んだ。意図して黙ったというより言葉を出し切ったのだった。


再び二人は南門の前にいる。門の片隅で、頬を膨らませた桔梗の蕾が青白い。

異常は無かった。

日常的とは言いがたい出来事は玉藻にはあったが、それは王が恐れるような類のものではなかった。ならば今晩の警邏も充分に良い仕舞を迎えたという事なのだ。


「では、瑞垣殿、今晩はお疲れ様でした。良い夜を。」

「じゃあな。」


早早に踵を返した玉藻の胸に、意外な念が泛んだ。挨拶が返ってくるとは露にも思わなんだから。思わず振り向いてみたが、彼の足許はほぼ闇と一体となろうとしていた。昼間夏草が彼を形容して言った言葉が不意に思い出されてどきりとした。砂利を踏み締める音は規則的に聞こえた。しかし、すぐにふつりと途切れた。


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