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一応札師ですよ?  作者: 氷理
昔の話を
2/21

序章:少年





グォォォォ…………

何かの遠吠えのようなものが聞こえたような気がした。


バリバリバリバリッ

凄まじい音とともに激しい地震が起こり、少年は倒れてきた壁を見ながら意識を失った。



目が覚めた時、夜空が目に入った。

何時の間にか天井に大きな穴が開いていて、そこから夜空が見えていたのだ。

周囲は瓦礫に囲まれていて何も見えないし、何も聞こえない。

きっと何も聞こえないから危険はないと判断して、そこからどうにか這い出して屋根の建材から頭が出た時、

「あら? 生き残りがいたの?」

どこからか女の声がした。

「子ども、かしら?」

サッと声の方を見ると、月明かりで見えたのは真っ赤な唇の女。蒼いロングドレスと白い手袋をしている、多分まだ若い女。そしてきっと忘れられないであろう美貌。


グォォォォォ…………

またあの声が聞こえる。

「な、何……?」

彼女が声の方に向き少年もその方向へ視線を向けると、その先には巨大なクモのような気持ちの悪いモノが蠢いていた。

「魔物、あれは魔物よ」

何時の間に取り出したのか、月の光を反射して輝く白刃の日本刀を手にしていた。

そして彼女は魔物へ飛ぶ。


ギャアアアアアアアア…………

青白い閃光が魔物を貫くと、世にもおぞましい断末魔を残して消えて行った。


再び静寂が訪れ、周囲を見渡す余裕が出来た時には瓦礫の平地が広がっていた。

人の気配がない。

「誰も生きていないわ。他の街へ行きなさい」

優しいアルトの声が立ち尽くす少年にかけられる。

少年が振り返ると彼女は既に背を向けて歩き出していた。

少年はその姿を呆然と見ていることしかできなかった。





朝になって救助隊がやってくるまで、少年はそのまま座り込み動くことが出来なかった。






やがて、少年はハンターを志す。

生きがいを求めて。

魔物を屠り、家族を殺した存在を消すために。

そして自分のような家族を失うものを出さないために。




ハンターになってから、時々あの時助けてくれた彼女の噂を耳にした。

いつか、彼女にお礼を言えるだろうか?


魔物討伐協会には登録されていないと言う、謎のハンター『蒼の淑女』に。







そして3年後、少年はモブなハンターになっていた。




この少年はモブであり、主人公ではありません。

ただ、時々モブとして出現します。

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